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序章-第4社 真相と予言

「え、ちょっ、私が命を狙われてるって……ど、どういうこと?」


 エルから告げられた言葉に思わず戸惑う秋葉。頭が一瞬真っ白になり、ぽっかり身体に穴が空いたような感覚を覚える。


 と、エルは秋葉の目の前を左右に飛びながら話し始めた。

 

「今日、下校中に祟魔と遭遇して襲われただろう? それが何よりの証拠だよ」

 

 きっぱりとそう告げられるも、情緒が追いつかない。

 

「い、いや、でも急に言われても信じられないというか、理解が追いつかないというか……。確かにいつもは襲って来ないのに、今日は襲ってくるの変だなぁとか思ってたけどさ……」

 

 秋葉は目をあちこちに逸らしながら、困惑した表情で話す。


 実際、襲われこそはしたが、そんな命まで狙われているとは思ってもみなかった。


 基本的にエルは普段からおちゃらけてはいるものの、こう言ったときに嘘はつかない。多分、命を狙われているというのは本当のことなのだろう。


 だが、そう簡単に呑み込めるという話でもない。

 

「まぁ、いつもは陰ながらボクと熾蓮(しれん)が守ってるからね。気づかないのも当然かな」

「……はぁあ!? ちょっ、それどういうこと!? いや、エルは百歩譲って分かるよ? 私の保護者みたいなもんだし、神獣だしね。けど、なんでそこに熾蓮が出てくるのさ!?」


 小学生の頃からの幼馴染である熾蓮が関わっていると知り、動揺から一変、秋葉はぐいっとエルに詰め寄る。


「お、落ち着きなよ……」


 宥めるように目を丸くしたエルが両手を前に出した。

 

「落ち着いてられるかぁ! ちゃんと話せ! このマスコットォ!」

「は、話すから、頬っぺた引っ張るのやめてぇ……」

 

 秋葉はエルの頬っぺをこれでもかというほど指で引っ張って問い詰める。白状する気になったエルは、涙目で秋葉に抗議。


 秋葉が両手を話すと赤くなった頬っぺたを手で擦るエル。少しして赤みが引いたところでエルは話を再開する。

 

「それじゃあ訊くけど、熾蓮が中学校に入ってから今までほとんど毎日君のこと送ってたのは?」

「家が全くの逆方向なのに何でなのかなって思ってはいたけど、ま、まさか……」

 

 エルの問いに答えて、その意味が分かった秋葉は顔を引き攣らせる。

 

「そう、そのまさかだよ。まぁ嵐山からここまでは神社の敷地内だからボクがすぐに駆け付けられる範囲だし、熾蓮は嵐山に入るまでだけどね。加えて、学校でも一緒にいること多いでしょ?」

「う、うん。……え、まさかそれも?」

「正解~」

「マジかァ……」

 

 今までの行動のほとんどが自分自身のためと知り、撃沈する秋葉。確かに思い返してみれば、エルの言う通りだ。


 休み時間はほとんど一緒で、帰り道も一緒に帰ることが多い。秋葉が怪我をしたと知れば、すぐに気づくことが多く、多少過保護だなとは思ってはいたものの、まさかそういう理由だとは想像もしなかった。

 

 自分の鈍感さに呆れて長いため息を吐いていると、1つの疑問が頭をよぎった。

 

「けど、なんでそもそも熾蓮が?」

「あいつが愛宕(あたご)神社の神職なのは知ってるよね?」

「う、うん」

「じゃあ忍者だってことは?」

「いや、初耳なんだけど!?」

 

 まさかの事実に目を見開いて、大声を上げる秋葉。驚く彼女に同情しながらも、エルは話を続ける。

 

「愛宕神社には御守衆(みかみしゅう)っていう忍者集団があってね。熾蓮はそこから密命を受けてこの3年間、秋葉を守っていたのさ」

「ぬお~、知らなかったァ……」

 

 確かに熾蓮は昔から人一倍、これでもかというほどに運動神経が良いし、状況把握や判断にも優れている。だが、彼の正体が忍者だとは思いもしなかった。

 

 頭を抱えながら、エルから説明されたことを頭の中で整理する。と、一番重要なことを訊き忘れていることに気づく。

 

「んー、私が命を狙われてるってことはよーく分かった。でも、狙われてる理由ってなんなの?」

「……話すと少し長くなるけどそれでもいいかい?」

「う、うん」

 

 エルに訊かれ、頷く秋葉。エルは軽く息を吸ってから話し始める。

 

「事の起こりは3年前のちょうどこの時期。『数年の後、この国は災厄に見舞われる』という予言が代報者及び天界に出回った。けど、その予言には続きがあって一部の限られた人しか知らないんだけど、それによると『その災厄を防ぐ鍵となるのは北桜家の少女』だと言われている。

 たかが予言だろうと思うかもしれないけど、過去に予言されたことはこれまで一度も外れたことは無い。なんせ予言したのは未来視を持つ神だからね」

 

 エルはここまで話したところで、一度言葉を切り、再度口を開いた。

 

「そして現状、北桜家の血を引いているのは秋葉ただ1人。当然、例の予言は祟魔たちの間にも広がった。簡単な話、君が祟魔に狙われているのは、その災厄を引き起こす祟魔たちにとって君の存在が邪魔になるからさ」

「な、なるほどね……」


 つまりその予言で言われている災厄は今後数年間のうちに必ず起こり、災厄を防ぐには北桜家の血を継いだ秋葉が鍵となる。

 

 秋葉は災厄を起こす側の祟魔にとっては非常に邪魔な存在であり、今すぐにでも消し去らなければならない。

 

 それに気づいた御守衆とエルはこの3年間秋葉に気づかれないように密かに守っていたということだ。


 事の重大さと情報量の多さに頭の中が混乱するが、とにかく厄災において、自分の存在が重要になり、自分の命が狙われていることは理解した。


「で、それが入学することと何の意味があるの?」

「大神学園は代報者がわんさかいる分、正直この神社なんかよりも圧倒的に守りが硬い。加えて、大神学園は全寮制。そこに入学すれば、祟魔の手出しできる余地はほとんどないし、代報者になればそれなりの防衛手段は身に着けられる。

 任務時の報酬もそこらのバイトよりかは数倍多く出るだろう。自分の命を守れると同時にお金稼ぎまでできる。悪い話ではないでしょ?」

「むっ。た、確かに……」


 命を狙われている以上、必ずまたどこかでさっきのようなことが起こる。神社を離れることにはなるが、自分の身を守ることの方が優先だ。


 それに今までからも秋葉が学校に行くときは、エルに神社を任せていたからそこの心配はほとんど必要ないだろう。


 代報者になれば自分の身を守れる手段を手に入れられるだろうし、家業を継ぐことにもなる。加えて、任務の報酬が良いとなれば、財政難で万年金欠状態の神社も多少は好転するだろう。

 

「どうする? 秋葉」


 エルに問われた秋葉は少し間を空けてから口を開く。

 

「金銭的にも自分の身の安全的にも家業を継げるっていうのも勿論なんだけど、何より事情を知ったからには守られるだけっていうのは癪だし、せめて自分の身を守れるくらいには強くなりたい」


 そう話す秋葉の目には強い意志が宿っていた。

 

「――入学するよ。大神学園に」

「うん、そうこなくっちゃね」

 

 秋葉の答えを聞いたエルは、満足そうに笑みを浮かべる。意思が変わらないうちに早く進路希望用紙へ記入しようと、秋葉は制鞄の中から紙を取り出すのだった。

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