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第3章-第2社 祓式推測

 自分の祓式が分からないと申告したら、周囲の空気が凍り付いてしまった。


「ちょ、ちょっと待て。それどういうことや?」

「だから、そのままですよ。自分の祓式が分からないんです」

 

 気を取り直して問いかけてくる織部に、全く同じ答えを返す。


 すると、まさかの状況に頭を悩ませていた織部は手元の測定記入用紙に目を向けた後、少し離れた先にいた熾蓮と薫を見る。

 

「ひとまず話は、あの2人の祓式測定終わらせてからでええか?」

「えぇ、勿論です」


 というわけで、祓式測定が再開。


 まずは熾蓮から。秋葉が後ろの方で見守る中、熾蓮は手のひらに炎を出現させ、的に向かって放射。あっという間に的が焼き切れ、消し炭と化した。

 

 そして最後に薫。熾蓮と入れ替わりで白いラインの上に立つと、織部から合図が出た。と、薫の足に電撃が発生。地面を蹴り上げて的へ接近し、雷を纏った拳で3つの的を破壊していく。

 

 こうして秋葉以外の祓式が終了。一旦、前倒しで休憩を挟むことになった。


 全員の記録が終わり、織部は秋葉の元へやってくる。秋葉が自分の祓式が分からない知った悠も気になるようで、傍にやってきた。

 

 と、織部が質問を繰り出してくる。

 

「秋葉。お前、7歳の時に統制局(とうせいきょく)の祓式測定検査行ったか?」

「え、何ですかそれ?」

 

 秋葉が問い返すと、一瞬、頭を抱えた織部は手元の秋葉の資料をこちらへ向けてくる。名前や生年月日、今までの来歴の書かれている中、祓式の欄を見てみると、そこには不明と書かれていた。

 

「代報者の素質がある子供は、必ず7歳の時に受けなあかんはずやねんけど……」

 

 織部は顎に手を当てながら、そう呟く。


 祓式統制局(ふしきとうせいきょく)とはその名の通り、祓式の情報を管理し、その所有者を監視する組織の事で、毎年7歳になった子供は統制局が主催する祓式検査を受けなければならないのだ。

 

(7歳……?)

 

 織部の7歳という単語に引っかかりを覚え、秋葉は首を傾げる。試しに7歳の時にあった出来事を思い返してみることに。

 

 考えること数分。秋葉は何かに思い当たったようで、織部へ目を向けた。

 

「多分ですけどその時、私の両親が亡くなって、その葬儀でバタバタしてたんで……。それにどうやら私、憑かれやすい体質らしくて、8歳になるまでは神社の境内から出るなって言われてたので、それもあって受けれてないのかも」


 北桜家に生まれたものは元来、憑かれやすい体質で、まだ祖母が生きていた頃に聞いた話だと、歴代北桜家の中でも秋葉は特に憑かれやすいらしい。


 それ故に祟魔がうろつく境内外に出ることができず、7年間はずっと境内の中にいたのだ。

 

「あー、そういやそうやったな」

「……え? 織部先生、なんで私のこと知ってるんですか?」


 思い出したように頷く織部に、何の接点もないはずなのにどうして知っているのだろうと、秋葉は尋ねる。

 

 すると、織部は秋葉の目を見てこう言った。

 

「実は、まだお前の両親が存命の頃に、2人に世話になったことがあってな。そん時にチラッと秋葉のことについて聞いとったんよ」

「えぇ!? そうなんですか!?」


 秋葉が訊けば、織部は首を縦に振った。まさかの事実に呆然とした表情を浮かべる。隣で話を聞いていた悠もびっくりしているようで、口がポカンと開いていた。

 

「けど、8歳になるまで家に出られなかったんじゃ、勉強とかどうしてたの?」

 

 そう気を取り直した悠が尋ねてくる。

 

「私がまだ生まれる前に、おばあちゃんがここの教師やってたから、勉強とか神社のこと教えて貰ってたんだ」

「え、秋葉のおばあちゃん、ここの先生だったの!?」

「うん」

 

 秋葉は、悠の問いに頷きを見せる。


 と言っても、秋葉自体、祖母がここの学園の先生だったことを知ったのは西園寺学園長の言葉を聞いてからだ。ふと先生としての祖母がまあ厳しかったことを思い出して、身震いする。

 

「宮司に関しても、書置きのノートを見ながらやったり、熾蓮のおじいさんが愛宕(あたご)神社の宮司だから、それで教えて貰ったりしてね」

 

 付け加えるようにして話す秋葉。思い返せば今までの人生、色んな人に助けられているのだなと秋葉はしみじみとした思いを感じる。現に本当に独りだったら、ここまでやってこれてはないだろう。

 

「にしても、検査受けてへんとなると、俺らで祓式が何なんか突き止めなあかんな」

「けど、どうするんです?」

 

 織部が話せば、秋葉は眉を顰めながら尋ねる。


 祓式を突き止めると一言で言っても、どうすれば分かるのか秋葉には思いつかない。織部先生なら何か方法を知っているのだろうかと思っていると、目線を下にして考えていた悠が口を開いた。

 

「エルなら分かるんじゃない? ほら一応、北桜神社の神様でしょ?」

「あぁ、その手があったな。すまんけど、呼び出してくれへんか?」

「分かりました」


 織部に頼まれた秋葉は、神社にいるであろうエルへこっちに来るよう念話を飛ばす。


 すると、1分もしないうちに宙に光が現れ、そこからマスコット姿のエルが出てきた。


「呼ばれて出てきてじゃじゃじゃじゃーん! 急に呼び出して、どうしたのさ?」


 ノリノリで出て来たかと思えば、エルはみんなにそう問いかける。

 

「秋葉の祓式が分からんから、突き止めよう思てな。お前ならなんか知っとるやろ」

「そういうことかい。それなら簡単な話だよ」

 

 織部が事情を話すと、エルは笑みを浮かべながら言葉を続ける。

 

「ズバリ! 秋葉の祓式は『憑依』さ」

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