意味を量る
「偽りの噂で隣国の老王に嫁がされた悪役令嬢は、復讐の機会を逃さない」の三十一話に、次のような誤字報告をいただきました。
(現状)「意味を量りかねて」
(報告)「意味を測りかねて」
が、申し訳ありません。報告の意図がよくわかりませんでした。
だって、どっちでも間違いじゃないからです。
広辞苑で「はかる」を引くと、二項目に次のように書かれています。
『《図・計・測・量》物事を推し考える。』
つまり、《》内に挙げられている漢字はどれを使っても間違いではないということです。ただし、広辞苑のこの説明は、古文に基づいたものも含まれています。「図る」だけは、現代文の用法としてはあまり適切ではないように思います。実際、大辞林の見出しは「計る・測る・量る」となっていて「図る」は入っていませんし。
いずれにせよ国語辞典によれば、「計る」「測る」「量る」はどれを使っても間違いではありません。
実を言うと、自分でも書くにあたってどの漢字を使うか迷い、いろいろ調べました。その結果、大辞林の次の解説に沿うことにしたわけです。
『「量る」は〝重さや容積を調べる。推測する〟の意。「枡でお米を量る」 「目方を量る」 「体重を量る」 「頃合いを量る」 「真意を量りかねる」』
ぶっちゃけ、個人的な感覚としては「量る」と「測る」は、こういう文脈ではほぼ互換だと思ってます。でも、できれば、より「普通」なほうを使いたかったので、青空文庫での用例も調べてみました。
だけど「はかる」だけだと語句が短すぎ、しかも他の語と結びついて使われることも多い語なので、ちょっと検索が難しい。それで、同じ意味合いで、かつ言い換えの効く「推しはかる」で検索しました。その結果、「推し測る」と「推し計る」はいずれも八件、「推し量る」は四十六件の用例がありました。
いずれの表記も間違いではないし実際に使われてはいるものの、少なくとも明治から昭和初期にかけての文豪の間では「量る」が最もよく使われていた、ということです。
そんなわけで、自分の書く文章では「意味や意図をはかる」という文脈では「量る」「推し量る」を採用しています。せっかくいただいた誤字報告ですが、適用を見送りますのであしからずご了承ください。