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元徴用工の謎  作者: やまのしか
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元徴用工の謎⑦

未払金の供託経過


未払い金が供託された経過について見ていく。


日本の敗戦によって日本は占領され、連行されてきた朝鮮人は帰国を求めて戦いをはじめた。

「朝鮮人聯盟」が結成されて企業に対しての交渉も繰り広げられた。


常磐、石狩、足尾、岩手などでの運動については資料や研究があり、その経過を知ることができる。


これらの動きについては、

長澤秀「戦時下常磐炭田における朝鮮人鉱夫の労働と闘い」、

桑原真人『近代北海道史研究序説』、

古庄正「足尾銅山・朝鮮人強制連行と戦後処理」、

同「日本製鉄株式会社の朝鮮人強制連行と戦後処理」などに詳しい。


朝鮮人聯盟の活動がさかんになるとGHQ・日本政府はその運動を規制するようになる。

朝鮮人聯盟の賠償要求に対し、日本建設工業統制組合は「華鮮労務者対策委員会」を作り、

政府に自らへの国家補償を要求し、1946年4月には約4595万円を獲得していった。

「石炭統制会」なども同様な要求を出し補償を獲得する。

日本製鉄も朝鮮人労務者の「管理費」として5000万円を得た。

日本政府は朝鮮人の運動に対抗し、未払い金については供託をすすめた。

連行企業が政府によって救済され、朝鮮人聯盟への支払いは拒否された。

被害者である連行労働者への「未払い金」や「賠償金」の支払いは放棄されていくことになった。


「経済協力 韓国105」に収録されてる「労働省調査 朝鮮人に対する賃金未払債務調」には、

その間の「通牒」や「政令」が収録されている。

これらの文書をふまえ、岩手を中心に朝鮮人の行動を分析した著書、

古庄正「日本製鉄株式会社の朝鮮人強制連行と戦後処理」を参考に、

供託に向かう動きを追ってみよう。


GHQは1945年11月28日に日本政府に対する覚書「職業政策に関する件」を出した。

そこには、労務者への差別禁止、引き揚げない者への同等の権利、復員軍人への差別撤廃、処置を司令部に報告することなどが記されていた。

これは民主化の指示である。

これを受けて、

1945年12月9日に厚生省が、勤発第116号「就業並ニ労務管理ニ関する件通牒」を出している。


1946年1月10日の厚生省令第2号「昭和20年勅令第542号に基く労務者の就職及従業に関する件」では、国籍による差別の禁止、違反への罰金などを規定した。


1946年1月17日には、厚生次官が厚生省発勤第2号「昭和21年1月10日厚生省令第2号事務取扱に関する件依頼通牒」を出して、日本人と同等の権利、差別的取り扱いの絶無などを指示した。


しかし、ここでいう差別的取扱いの禁止は、朝鮮人に有利な形での待遇をしないという形で利用され、朝鮮人側の賠償要求を否定する口実とされた。


1946年2月26日には内務省公安課長の「朝鮮人団体の不当要求に随伴する不法行為取締方に関する件」が出された。


それは朝鮮人の運動を不法行為とみなし、その排除に向けて検挙・取締を強化するというものだった。


その後、政府は朝鮮人聯盟などに対し「不当要求」の中止を求め、取り締まりを通告するようになった。


1946年3月11日には、厚生省労政局給与課長が庁府県内務部長・教育民生部長・地方商工局石炭部長宛に、給発第15号「終戦に伴う朝鮮人労務者解雇手当に関する件」を出した。


そこでは、GHQの許可なく朝鮮人聯盟の「任意規定」で通告が行われ、

交渉が進められていることに対して、

1945年11月20日の給発第106号足尾の争議の調停の件通牒も参照しての調査を依頼している。


この文書には1946年に入っての四日市での朝鮮人聯盟の通告書が事例として紹介されている。


このような動きのなかで日本製鉄本社は1946年4月24日に朝鮮人聯盟への要求処理の方針を指示した。


それは朝鮮人聯盟の賠償要求を不当とし、未払い金の委託団体とはみなさないというものだった。



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