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元徴用工の謎  作者: やまのしか
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元徴用工の謎①

2023年、元徴用工問題において、朴振パク・チン外交部長官は、日本政府の謝罪について、

1998年に金大中キム・デジュン大統領と小渕総理大臣が発表した「韓日共同宣言」に明記された

「痛切な反省と心からのお詫び」を引用すれば、謝罪として受け入れると言った。


このこと事態は大変喜ばしいことだ、しかし問題は、どういう風に岸田首相がその謝罪を表現すればいいのかハッキリしない事であった。


もし日本側が「謝罪は小渕さんの精神を踏襲します」と語るのみでよいのなら、このパク・チン外交部長の声明は、日韓関係における韓国側の大きな譲歩といえるのだが、もし、新たな読み直しが、求められているのなら、それは大きな譲歩どころか小さな譲歩ともいえない、只の言葉遊びである。


パク・チン長官は「日本は過去にも何度も歴史問題について反省と謝罪を宣言している」と述べて、日本政府に対し、この精神を継承することを、表明すればよいのだと、述べた。


ゆえに今回、岸田首相は、謝罪文の新たな読み直しは、せずに日韓首脳会談は無事終わった。

しかし、当然韓国内の左派は納得しておらず、尚この謝罪問題は日韓の間で燻り続けていると思わずにはいられなかった。


1998年10月8日に発表された小渕-金大中・日韓共同宣言・第2項には、こう記してある。


日本が過去の一時期、韓国国民に対し、植民地支配により、多大の損害と、苦痛を与えたという、歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びをする・・・と。


今回、元徴用工問題において、日本側は原告側の求償権の放棄を条件に、日本企業による財団への自発的な寄付を容認する方針だった。

しかし、残念ながら原告側の求償権の放棄は、なされなかった。

ゆえに、日本企業による、自発的な寄付も結局、行われなかった。


このような結果を見てみると、日韓問題における今回の解決は、一時的な解決らしきものと、思わずにはいられない。


元徴用工問題を根本的に解決するには、まだまだ両国一般国民が、解決だと認識できる説明を、欠けたピースを発掘することによってなされなければならないだろう。

逆に、その事は、まだまだ隠蔽された真実はあると感じざるを得ないということだ。


不足している真実のピース、世に知られていない一欠片の真実を、もっと掘り起こして、明るみに出さなければ、日本側も韓国同様、納得した上で和解する事はできないであろう。


そう改めて思った、ここ最近の動きであった。


そこで「世に知られていない真実の欠片」というのは、どういうものかを考えてみたいと思う。


日本政府は1965年の日韓請求権協定で、元徴用工問題は解決済みとの立場であるのは周知の事実であるが、私の調べたところでは、日本企業の未払金は、まだ大部分が、東京法務局に供託してあるようだ。

いったい韓国政府は、この供託金の償還を済ませてるのであろうか?

尹大統領は「韓国政府が国民の請求権を一括代理して受け取った」とテレビで述べているが、果たしてそれは、供託金の償還も含まれての事だと理解していいのだろうか?


正確に、今回の尹大統領が3月21日にテレビで言った声明を書き起こすと・・・


「1965年の日韓基本条約と日韓請求権協定は、韓国政府が国民の個人請求権を、一括代理して、日本の支援金を受け取るとされています。

このような基調のもと、歴代政府は強制徴用被害者の痛みを癒し、合理的な補償が成し遂げられるよう努力してきました。

1974年特別法を制定して83,519件に対して日本から受けた請求権資金3億ドルの9.7%に相当する92億ウォンを、2007年再び特別法を制定して78,000人余りに対して約6,500億ウォンをそれぞれ政府が財政で補償しました・・・・・」


供託されている在日朝鮮人の資産額は、労働省関係だけで1,732万円、人数にして15万人、大蔵省の調査では1億1千万円ほどあるそうだ。

(強制動員真実究明ネットワーク提供「経済協力 韓国105」http://www.pacohama.sakura.ne.jp/kyosei/09kyotaku.html参照)


上記の尹大統領のいった78,000人あまりへの支払いで、北朝鮮への償還分を除いて、全ての供託金は完済されたと判断してよいのだろうか?

日本政府は戦後の日韓交渉の重要な資料をいまだ未公開としており「国立公文書館つくば分室」には、日韓交渉未公開資料が100冊以上も保管してある。


元徴用工(日本企業によって集められた朝鮮半島出身の労働者)、彼らの多くは最初は募集工でも「現員徴用」という形で途中から徴用に切り替わった。

そして日本政府は1939年から毎年、日本人も含めた動員計画を立て閣議決定をしていた。

(以下Wikipediaの日本統治時代の朝鮮人徴用参照)


日本の行政機構は動員実務を担って外部団体に業務委託していたが、これは国による強制動員と言えるのか否か?

そして朝鮮半島に対する「動員形態」は次のように変遷したが、これは、どこからが強制なのか?

そこのところにまだまだ闇がある。


▪軍要員動員・兵力動員・志願制→徴兵制

▪労務動員・募集・「個別渡航」→「集団渡航」→「官斡旋」

▪労務動員・徴用・「軍関係労務への徴用」→「一般徴用」

▪道内動員(朝鮮半島内部への動員)「道内官斡旋」・「勤報隊」・「募集」


朝鮮半島内部への動員がのべ約344万7千人、

「内地」(日本本土)・「その他」(樺太・千島・南洋諸島等)への動員がのべ約53万8000人、


韓国で訴訟進行中の対象日本の企業は、三菱重工業、不二越、IHIなど、被告企業は計115社(2022年6月)で、原告数は延べ1000人強。


多くの日本人は、どうせ慰安婦のように水増しされた数字だろうと思ってるようだが、逆にかなり少なすぎる。


この元徴用工の裁判、現在も30数件が係属中で、9件は大法院(最高裁)の審理中であり、大法院で日本企業の賠償判決が確定したのは計3件(2018年10月確定の日本製鉄訴訟1件と同年11月確定の三菱重工業訴訟2件)しかない。

344万人に対して1,000人とは、数字がめちゃくちゃである。

さて、この徴用工への補償について少し見ていこう。

日韓両政府は1965年の日韓請求権協定で「解決済み」としてきましたが、似たパターンのドイツが2000年「記憶・責任・未来財団」を設立し、戦時強制労働者に対して賠償を始めた。

韓国人戦時労働者も、国際的情勢から、補償がされる可能性が出てきた。

ここに、国際法の解釈における、ドイツと日本の大きな隔たり、ここにもまた闇がある。


ドイツのケースでは、国家賠償ではなく、人道的見地による自発的補償として、2001年から2007年までに、東欧はじめ世界のおよそ100か国の約166万人以上の人々に、合計44億ユーロ(2007年当時で約7040億円)が支払われた。


日韓における元徴用工問題では、上のドイツと同じような財団方式での解決を図ってはいるが、全然寄付が集まってはいない。

ドイツと同じ、人権侵害、強制労働に対しての補償なのではあるが何が違うのか?

使用者である邦人企業が「強制労働」の事実を認めていないのが問題なのか?

それとも、他にも問題点があるのか?

ポルシェと三菱の違いとは何か?

日本の裁判所では「強制労働」と事実認定がされ、中国人労働者に対しては、企業側もそれを認め、謝罪と和解金を支払っている。

中国人戦時労働者にだけ強制労働を認め、韓国人や日本人には認めていない姿がダブルスタンダードだと私には写ってしまう。

しかし、日本人に対してまで強制労働を認めてしまうと、勤労奉仕していた日本人へも全部補償しなければならない。

そうなれば私には更に解決が遠退く気もする。


さて、韓国大法院は日韓請求権協定で個人の請求権は消滅していないとし、2018年10月30日、差し戻し審で日本製鉄に対し韓国人4人へ1人あたり1億ウォン(約1000万円)の損害賠償を命じた。


日本政府は日韓関係の「法的基盤を根本から覆すもの」だと反発し安倍晋三首相は

①「日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決している」

②「今般の判決は国際法に照らしてあり得ない判断だ」と強硬に抗議しました。


さて、ここで、安倍さんの主張を国際法の観点「世界人権宣言(1948)」「国際人権規約B」(1966)に照らし合わせて、分析してみましょう。


安倍政権は、昨年の判決直後、1965年の日韓請求権協定によって「個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございません」(河野太郎外相=当時、昨年11月14日の衆院外務委員会)と認めた。


他方で外務省は「裁判所に行ったときには、それは救済されないと両国が約した」(三上正裕国際法局長=当時)と答弁しました。


つまり「裁判による救済」が請求権協定で否定された、というのが安倍政権の主張の中心なのです。


これに対し「徴用工問題の解決をめざす日本法律家有志の会」の川上詩朗弁護士は、被害者の迅速な救済を呼びかけた日韓法律家の「共同宣言」発表の記者会見で「裁判を受ける権利は、現時点で被害者個人に国際人権法上認められている権利だ。その制約が許されないなら、訴権を奪うとか、司法的に救済されないという判断自体が問題だ」と「国際人権規約」を盾に反論し、「行政府と司法府の関係からは、仮に日本政府と韓国政府が『いかなる主張もできない』と約束しても、裁判を受ける権利、司法的救済を受ける権利、を奪う義務を韓国側が負ったとまでいえないのではないか」と述べました。

(国際人権規約で補償されている裁判を受ける権利の事です)


元外務省国際情報局長の孫崎享氏は「請求権協定締結の翌1966年に国際人権規約が採択され1976年に発効した。日本は1979年に批准している。外務省が1965年の請求権協定ですべて説明すること自体に無理がある」と指摘しました。


ここでカニ太郎は、韓国が「法の不遡及の原則」を破り1966年に国連で採択された国際人権規約を1965年に締結された日韓請求権協定に適用しようとしている、との日本の右翼陣営の反論に対して、反論したいと思います。


国際人権規約は世界人権宣言を基に成文化された国際条約であるので、世界人権宣言が国連で採択された1948年に遡って、国際慣例として認知されていたと判断されても仕方がない。

ゆえに日韓請求権協定こそ国際法の精神に反している可能性が高いのではないかと思う。


もと外務省国際情報局長の孫崎享氏は「1976年以降の新しい国際潮流が、まさに国家合意で個人の権利を制約するという請求権協定の立場を覆した」と強調し、過去の協定だけでなく、その後の国際法の発展全体を検討せねばならない、と述べてます。


これは、国際文書は、解釈の時点において、支配的な法体系全体の枠内で、解釈適用されなければならない、と言うことを意味します。


つまり、日韓請求権協定に国際人権規約を適用することは「法の不遡及の原則」を破ることにはならないということです。


1965年の日韓請求権協定では、日本が無償3億ドル・有償2億ドルの経済協力を行う一方、請求権の問題が「完全かつ最終的に解決された」と規定し、その文言からは一切の請求ができないようにも見えます。


しかし歴代政権は、消滅したのは「国対国」の外交保護権であり、「個人の請求権は消滅していない」とし、現在もその立場です。


1948年の世界人権宣言8条は、すべて人は「基本的権利を侵害する行為に対し、権限を有する国内裁判所による効果的な救済を受ける権利を有する」と規定。1966年の国際人権規約2条3項はこれを具体化しました。


これらの規定からも「国家間の合意で個人の請求権を消滅させられないのは当然」と理解されています。


では「裁判を受ける権利」はどうか。


もともと外務省は「協定上外交保護権を放棄した、そして関係者の方々が訴えを提起される地位までも否定したものではない」(柳井俊二条約局長=当時、92年3月9日の衆院予算委員会)としていました。


「権利はあるが裁判所に訴えられない」との主張は2000年代になって従来の見解を大転換し強まってきたものです。


しかし世界人権宣言10条や国際人権規約14条は「裁判を受ける権利」を明記しています。


日本国憲法32条も「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない」と規定し、これは外国人にも保障されます。


国際司法裁判所のナミビア事件における勧告的意見(1971年)は「国際文書は、解釈の時点において、支配的な法体系全体の枠内で解釈適用されなければならない」とします。


この規定をめぐり明治学院大の阿部浩己教授(国際法)は、「2019年の時点での支配的体系の枠内で解釈適用する。国家中心から人間中心、被害者中心へと変わっている現時点での法体系全体の中で、日韓請求権協定を改めて解釈する必要がある。どんな条約も人権に反する解釈はできない」

と述べました。(日本記者クラブでの講演)


日韓請求権協定に詳しい新潟国際情報大の吉澤文寿教授は「権利は消滅していないが、裁判所で救済されないと両国が約した」と外務省がいうなら「それが明示されている合意文書を示す必要がある。現在までに公表されている合意文書に書いてあることは、外交保護権の消滅のみを示している」と指摘します。


民族の尊厳や国際的人権尊重の観点から、過去の植民地支配の不法性を問いなおす声が広がりつつあります。国際人権規約2条の「人権侵害に対する効果的救済を受ける権利」の精神を背景に、アメリカやオーストラリアなどでは先住民への抑圧に対し謝罪、賠償が行われているのも事実です。


さて、いかがでしたでしょうか、日本政府の「元徴用工問題は日韓請求権協定で解決済み」という主張が、いかに脆弱な理論か、ご理解いただけたかと思います。


それでは、この大法院の判決後の日韓政府の動きについて、見てみたいと思います。


まず、日韓請求権協定には、両国に紛争が起きた際は協議による解決を図り、解決しない場合は「仲裁」という手続きが「第3条」に定められています。

日本政府も、まず、この条文に沿って紛争を解決しようとしました。


まず第三条の条文がどう書いてあるか示しておきます。


第三条


1 この協定の解釈及び実施に関する両締約国間の紛争は,まず,外交上の経路を通じて解決するものとする。


2 1の規定により解決することができなかつた紛争は,いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と,こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし,第三の仲裁委員は,両締約国のうちいずれかの国民であつてはならない。


3 いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき,又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは,仲裁委員会は,両締約国政府のそれぞれが三十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。


4 両締約国政府は,この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。


ざっとこうなってます。


まずは、日本政府の対応経緯を解説します。


2019年1月9日、日本政府は問題を解決する最初の一歩として,日韓請求権協定に基づく韓国政府との協議を要請しました。


そして、韓国政府がこの協議の要請に応じようとしなかった、というか無視したので,2019年5月20日、日本政府は韓国政府に対し,日韓請求権協定第3条2に基づく仲裁付託を通告し、仲裁の手続をするよう、段階を次に進めました。


しかしながら、韓国政府は仲裁委員を任命する義務に加えて、締約国に代わって仲裁委員を指名する第三国を選定する義務についても、同協定に規定された期間内に履行しなかった・・・ばかりか、更に無視してきたので、日本政府は怒って、以下の声明を出しました。


「2019年5月20日に付託した日韓請求権協定に基づく仲裁委員会を設置することができなかったことは、極めて遺憾です」ww


さて、ここで、この後どうなったか、思い出してもらいたい。


安倍さんは「半導体3素材輸出厳格化」を産経新聞にスクープさせ、韓国のホワイト国外しを表明し、マスコミは元徴用工問題に対する経済制裁だと騒ぎ始めました。


私はこのとき、正直、喜んだものです。

私も日本人の端くれです。

韓国の日韓請求権協定無視の姿勢には辟易してましたので、経済制裁やむ無しという立場でした。


ところが私の期待は裏切られ、安倍さんの経済制裁ははポーズだけで「経済制裁ではない」と明言するまでに後退いたしました。


更に「輸出厳格化」のはずの「フッ化水素」が実際厳格化されたのは最初の1ヶ月だけで、翌月には従来の輸出量に戻っているという体たらくでした。


日本は振り上げた拳を早々に引っ込めたのです。


本来ならこのようなときには、ICJへの手続へ進むべきなのに、それもしない。

日韓請求権協定には「解決しない場合、国際司法裁判所への提訴する」との一文が抜けていました。


さて、それでは「元徴用工や朝鮮半島出身戦時労働者にはいったい、いくらの、未払金があるんだろう?」という素朴な疑問に移りたいと思います。


「韓国の言うことはデタラメだから未払金なんかほとんどない」とか思ってませんか?

まずは、以下の資料をみてもらいたいと思います。

「強制動員真実究明ネットワーク」という団体がネットにアップしたレポートです。


http://www.pacohama.sakura.ne.jp/kyosei/09kyotaku.html






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