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転生悪役令嬢十三歳。

「…………」

「あら、殿下、眠そうですわね」

「いや、眠くなんかない」

「きっと疲れが溜まっているのでしょう。少し横になられてはどうですか?」

「お、お前が…………してくれるなら」

「えっ?よく聞こえませんでした。失礼ですが、もう一度お聞きしても?」

「何でもない……少し失礼する。俺の許し……がないのに勝手に帰るな……よ?」

「ハイハイワカリマシタ」


 オウジサマは大きな欠伸をしながら、フラフラと隣の寝室へと向かわれた──もちろん計算通り!

 彼が眠くなるのは当然だ。私が一服盛ったのだから。

 と、言っても、お茶に直接睡眠薬を入れたわけではない。そんなことしたら私も眠ってしまうものね。

 彼が口をつけるカップの縁にペースト状にした強力な睡眠薬をベッタリと塗っておいたのだ。お茶を飲む時、睡眠薬が一緒に流れ込んだという訳。

 そして!


「じゃーんっ!」


 私はドレスに仕込んだペンを取り出した。何とこれは、このイタズラだけのために開発した油性ペンモドキ!

 いやーインクを付けて書くのが一般的なこの世界で、油性ペンを作るのには苦労したわよね。プラスチックなんてものは存在しないから木軸で少し不格好だけど、これなら飲み会で鉄板のあの伝説のイタズラができるもの!


 十分に時間を置いた後、私はジェラルドの寝室にこっそり侵入した。

 帰るなとは言われたけど、部屋から出るなとは言われなかったしね。

 いつもの事なので、彼の護衛や私の侍女はもちろん何も言いませんよ?

 むしろいいぞもっとやれ的な空気を感じるのは何故かしら──きっとモラハラ発言のせいであまり人望がないのね、可哀想に。


 キュッキュッキュッ!

 実に小気味のいい音が響く。根性腐ってても王族だし、肌がツルツルなのね~。

 目蓋の上に目を描くのは定番よね!額にも『第三の眼』を描いたら一気に中二病くさくなったわね。もちろん眉毛は太くして、目の下に下まつ毛を散らしてみる。更に、鼻の下にくるんとカールした口ひげも描いて……ほっぺにハートとかも描いちゃう?描いちゃお!


「よし、完成!」


 小声でガッツポーズ。

 さすがの美少年も油性ペン&私の圧倒的画力の敵ではなかったわね!

 我ながら傑作だわ、傑作!


「ぶっ……」


 静かな部屋に響く護衛騎士さんの吹き出す音。これは最大の賛辞だわ!

 ほっぺはハートじゃなくて猫ヒゲとかでも可愛かったかも~。

 それにしても男のくせにまつ毛長くてムカつくわねぇ。

 次回は劇画調にするのも面白そうね──まぁ、当分警戒されるだろうから次があるか怪しいけど。


「……んん……」


 うめき声とともにジェラルドの眉が一瞬しかめられた。


 ──まずい。


 楽し過ぎて時間忘れてたわ!

 睡眠薬は即効性があるけど、効果時間短めで後遺症とか依存性とかないものなのよね。

気づかれないように退却しなきゃ!

 そろりそろりと彼の上から身体を退けようとした瞬間に、手を滑らせてしまう。


「わわっ!」


 あっという間にバランスを崩して倒れ込んだのは、もちろんジェラルドの上だった。

 まずい!すぐ起き上がらないと!

 慌てて身体を起こそうと腕を突っ張るも、身体が重くて持ち上がらない。


「なっ…………」


 ぐっと力を入れて起きようとするものの、何かに阻まれた。よく見たら私の腰にジェラルドの腕が巻きついている。


「んん……む……ら」

「えっ……ちょっ……待っ……!」


 本人は可愛らしく寝言呟いてるけど、こっちはそれどころじゃない!

 抵抗すればするほど、何故か腰に回されている手にぐっと力が入って、あっという間に抱き込まれてしまった。

 まさか起きてるの?

 私は慌ててジェラルドの顔を覗き込んだけど、起きているようには見えない。

 私は抱き枕じゃないんだけど!


「マリー!マリー!」


 私が小声で叫ぶと(器用でしょ?)、部屋の入口で待機していたマリーが慌てて駆け寄ってきて、ジェラルドの腕をべシッと叩き落とした。


「!」


 ちょっとマリー、それはさすがに不敬なんじゃ……と思ったけど、護衛騎士さんも何も言わないし、王子様の顔にイタズラ描きした私が今更不敬を語るわけにもいかない。

 やっと腕の中から逃げ出せた私は、なんだかよく分からないけど、そのまま逃げるようにして部屋を後にした。


 結果、あの傑作落書きの成果を直接見ることは叶わなかった。

 ああ~、あの顔でしばらく城内歩き回って、誰かに指摘されて鏡を見た時の羞恥に震える顔を見たかったわぁ~。

 油性ペンで描いたから、油系で落とさないと落ちないのよね……ふふっ。落とし方が分からなくて涙目であたふたしてるかしら?

 あの濃いブルーの瞳にみるみる涙が溜まっていく様子、見たかったなぁ。ちぇっ。


「──あっ!」



 そういえば、彼が起きる前に無断で帰ってしまったから、次回のお茶会でネチネチ嫌味を言われるかしら?言い訳と新しい嫌がらせ考えなくっちゃ!




転生悪役令嬢暴走中。

何もかもゆる~い異世界なので、王族に一服盛ったから極刑とかは特になしです、すみません(汗)。

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