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初投稿です。

至らない点がありましたらすみません!

「アレクサンドラ・イリガールと申します。お会いできて光栄です」


 突如として現れた王子様を前にしての挨拶は、七歳の少女としては十分及第点と言えるものだったと思う。だって、隣のお父様が満足そうに目を細めてくれたもの。

 社交界デビューも当然していない、そんな私を王宮のお茶会へと連れだしたのはお父様だった。お茶会というのは名目で、集まった貴族の子女の中から将来の王子妃候補を選定する主な目的だったと知ったのは、随分後になってからだったけど。


 初めて目にしたこの国の王子様は、それはまあ輝いて見えた。金髪碧眼の、絵に描いたような王子様。キラキラとしたオーラを纏っている様子を目にした私は、まるで憧れの王子様が絵本から飛び出してきたかのような錯覚に囚われた。


 ──王子様というより、控えめに言って天使かな?


 とにかく、その辺の女の子より綺麗な顔だったのが衝撃的だった。


 私は、お父様譲りの赤毛にお母様譲りの緑の瞳を持っていて──鮮やかな対照色は強烈な印象を残し、見る人をもれなく惹きつける。そのことは幼いながらに自覚していたし、公爵家でも蝶よ花よと褒めそやされていた。だから、 自分こそが天使なのだと疑わなかったのよね──この王子様に会う前までは。


 出会った王子様の圧倒的天使感に、謎の敗北感を味わいながらもなかなか目を離せなかった。

 金髪碧眼の王家の天使は私の事をじーっと見つめたかと思うと、おもむろに口を開いた。


「そこのブス、ちょっと来い!」


 えっ…………?

 今、なんて言ったのかしら?

 王子付きの護衛さんたちの顔が、心なしか青ざめている気がするけれど。


「来いと言ってるだろ、ブス!」

「えっ?! あっ……!」


 業を煮やした王子様がさっきよりキツイ口調で言い放つ。

 怒鳴られたことなどない。

 ましてやブスなんて呼ばれたこともない。

 聞きなれない言葉が耳を通過するが、認識と理解が追いつかない。


 更にグイッと強引に手を掴まれた私は頭が真っ白になって、気がついたら庭園の外れの木の側に立っていた。

 周りを見渡してみたけれど、護衛どころか誰もいない。ちょうどお茶会の会場の死角になっているところみたい。

 王子様は慣れた手つきでするすると木へ登っていく。まるで、以前旅行先の森で見た野生の猿のよう。顔の綺麗な、猿──?


「おいブス!この木へ登れ!」


 キヲノボレ?

 呆然と見ていたら、ブスよりもっと聞きなれない言葉きた!

 まさか、まさかだと思うけれど。

 この、大人の背の三~四倍ありそうな木に登れっていうことかしら。

 私、お嬢様よね?

 イリガール公爵家の一人娘よね?


「そこに足置いて。そう。それから手を一段高いところにかけて身体を引っ張りあげて。もう少し上に──」

「…………」


 えっ?一体私、何をさせられているの?

 頭の中は疑問の嵐だった。

 でも何故か王子様の言葉に逆らえず、私はぷるぷる震える手足で身体を木の上目指して運び出した。もちろん頭の中では『私は公爵令嬢』という呪文がぐるぐると回り続けている。


 こんなことをするためにお母様に選んでもらった可愛いドレスを着た訳ではない。

 こんなことをするために侍女たちが朝から頑張って髪を巻いた訳ではない。


 頭では分かっているけれど、初めての事態に混乱して拒否の言葉が出てこない。

 箸より重いものを持ったことがないとは言わないけれど、生まれながらの公爵令嬢なんて似たようなものだ。

 身体を支えている手足は絶え間なく限界を訴えてくる。


「あ、あのっ……!」


 意を決して抗議の声をあげようとしたその時、ふと近くでガサガサという音がした。


「ジェラルド王子──っ?! どこですかー?! 陛下がお呼びですよーっ!」

「ちっ。仕方ない今行く!」


 えっ?


「ちょっと待って、置いていかないで──!」


 王子様──改めクソ王子は、探しに来た誰かの呼び声に応えたかと思うと、登った時と同じようにスルスルと降りて声の方に行ってしまった。

 残されたのは、中途半端に幹につかまった状態の私。

 猿みたいなクソ王子には可能なのかもだけど、私の飛び降り限界を超えた高さだわ。かと言って、これ以上上へ登る選択肢はない。


 ──泣いていいかしら?


「ぐす……待ってよぉぅ……」


 ──ビッ!


 それでも、何とか降りようと足を動かしたその時、嫌な音がした。


「ドレスが──きゃっ!」


 幹に引っかかって破れたドレスに気を取られた瞬間足を滑らせ、私は地上に落下した。


 恐怖と後悔と悲しみが襲ってくる。


 ──ああ、私きっとここで死んじゃうんだわ。


 実際には落ちても死ぬ高さじゃなかったけど、幼い私──しかも今日が木登り初体験の私にはそんなこと分からない。

 だから、暗闇に意識が飲み込まれていくのを感じながら、本気で私は死ぬと思った。



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