第七話
書くのが楽しいうちは続けるよ……多分。
目指せ!1シリーズ完結!
赤髪美人だけど貧乳の若干残念なお姉さんに連れられ、僕を含む無能力者数十名は闘技場(第一訓練場というらしい)から少し離れた第三訓練場に移動した。
お姉さんはあわあわしながら、僕たちを整列させると、試験の内容の説明を始めた。
どうやら、彼女がそのまま試験管をするようだ。
……なんだか急に心配になってきた。大丈夫かこの試験?
「え、ええと皆さん聞いてくだひゃい!」
「ひゃい!だって……」
「かわいいな」
「俺合格したら、あの先輩に告白するんだ……」
なんかときめいてる……っちょ!?そこフラグを建てに行くんじゃない!
ほらもうお姉さん顔真っ赤になってるって!
「えぇ!?あの、ええと、それでは!試験の内容について説明をはじめます!」
「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」」
受験生、ノリノリであった。
お姉さんは二つ結びにした髪をふりふりと揺らしながら続ける。
「わたしは、今回の試験官を務めさせていただきます!アリサ・ブルームと申しましゅ!よろしくお願いします!」
「「「「「「「「「「お願いしまーす!」」」」」」」」」」
「今年度より、無能力者の試験内容が変更になります!
その試験内容を、お、恐れながら、わたしが考案させていただきましたので、説明および試験監督をわたしが担当することに……なっちゃいました……」
アリサ・ブルームというらしい。
震えがすごいが、本当に大丈夫だろうか。
「震えてる……かわいい……」
「あの先輩に出会うために俺はこの学園に来たのか……そうに違いない!」
一方で受験者内では、続々と彼女のファンが生まれているようだ。
何かを確信した顔をしてるやつもいるが、何だろうか。
その時、ざわつく訓練場で誰かが立ち上がり、声を上げた。
「静かにしたらどうなの?先輩困ってるじゃない!」
喋っていた近くの男子を睨みつけ、アリサ先輩の助けに入った少女は、限りなく赤に近い橙色の髪に、同じ色をした瞳をしていた。
話し方や態度の大きさを見る限り、恐らく貴族の娘だろう。
だがこの場においてそんなことは関係ない。
睨まれた男子が立ち上がり、逆に少女が見下ろされる形になった。
そう、この少女は、信じられないほどに背丈が低かった。
「なに様だよチビ」
「チビっていうな!貴族であるこの私に逆らうつもり?」
その言葉は失敗だ。眺めながら僕は思った。
この国、とくに辺境に近い町などでは貴族の力が強く、貴族を嫌うものも多い。
故にその言い方では敵を増やすだけだ。
そしてこの男子の身なりから推測するに彼もそういう土地の出身だろう。
剣にお金をかけたらしく、ぼろぼろの服を着ていた。
「貴族だからなんだ?この場で黙らせてやるよ!」
予想通りの結果になった。
男子のほうが拳を振り上げた瞬間に僕は動き出す。
加速する余裕もない。
踏み込みを強くすることで、一歩目からトップスピードに近づき、僕は飛び出した。
そのまま二人の間に割り込み、両者の手を抑え込む。
「……そこまでにするべきじゃないか?」
「「なッ!?」」
突如割り込んできた俺に驚く二人。
少女は慌てて僕を睨みつける。
「離しなさい!彼はともかく、私は何も……」
「本当にそう言い切れるのかい?こんなものを持っていても?」
どうやら自己弁護がしたいらしい少女の言葉を遮った僕は、つかんだ少女の手首を引っ張り、周りに見せつける。
そこにはどう見ても殺傷性のあるひと振りのナイフが握られていた。
アリサ先輩が思わず息をのむのが見えた。
少女にもそれが見えたらしく、慌てて掴まれた腕を振りほどこうとする。
まぁ、僕には離す気などさらさらないのだが。
「な、なによ!護身用のナイフくらい貴族なら誰でも持ってて当たり前よ!
向こうから手を出してきたんじゃない!私は悪くないはずよ!」
「……ハァ」
「!?……」
再び自己弁護に走ろうとする少女、だが僕はため息をつくと、少女と目を合わせることもせず、周りに聞こえるように大きな声で言葉を発する。
「確かに彼を含めて数人の男子の態度は受験生として相応しくなかったと思う。
彼女の注意は正しかっただろう。そう思うけど、どうかな?」
途中で言葉を切り、もう片方の手で押さえた男子に問う。
彼は黙ってコクコクと頷いた。僕は彼の手を放す。
これでほかの喋っていた者たちは文句を言えないはずだ。
事実として、彼らの声や態度は試験官であるアリサ先輩の邪魔になっていたのだから。
僕は彼らが静かになるのを見ながら、次の言葉を続ける。
今度は少女の目を見ながら。
「ここまではいいかな?」
「ほら、私が正しいんじゃないの!早くこの手を離しなさいよ」
「この学園の受験は、貴族と平民に分かれていない。つまり、ここでは貴族と平民の差ではなく、剣士としての質を見られているんだ。ちなみにこれは、事前に送られてきている資料にも書いてあることだ。」
「くッ、どうせあんたも平民のくせに」
少女は苦し紛れの暴言を返す。
まだ自分の間違いを認める気がないらしい。
ここで僕は隠し玉を出すことにする。本当はまだ出す気はなかったのだが……
「あぁ、自己紹介をしていなかったね。
僕はアルト、アルト・グローリアだよ」
これが僕の隠し玉だった。
途端に少女は驚き、訓練場には先ほどまでとは違うざわつきが起こる。
そして彼らの気持ちを代弁するように、少女が叫ぶ。
「うそ……嘘よ……その名が残っているわけがないわ……グローリアなんて、あ、あの『栄光の騎士王』の後継者なんて、存在するわけがないのよ!」
そう思うのも当然だろう。
これは家を出る前日、父さんから聞いたのだが、父さんは、剣士時代、その強さから『栄光』を意味する『グローリア』の苗字と子爵位を授けられ、その後母さんと結婚するために剣都から失踪したことになっているらしい。
つまり、『グローリア』は、剣都の歴史上、存在するはずのない苗字なのであった。
実際、僕もつい先日知ったんだけどね……
入学編はプロット一枚分で一気に考えたので、切りどころが分からずに困っております……(泣)
多分あと三話くらいで次にいける……はず……