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第五話

早めに書けたよ。

「……!?」

 

 アルトが去った頃、アリアの豪邸の中で七人の剣士がある話し合いをしていた。

そのうち一人はこの館の主であり剣都アルンで圧倒的人気を誇る剣士、アリア。

円卓の置かれた静かな部屋で、そのアリアが突如声にならない程の驚愕を顔に出し、窓に駆け寄ると、



窓から顔を突き出し、外の匂いを嗅ぎ始めた(・・・・・・・・)……


「スゥーーーー……ハァーーーー」

「どうしたのですかアリア殿?今が何の時間か理解できておられないように見えるが……

ほかの皆さんも注意しなくていいのですか!」

突然の奇行に一人が声をかけるもアリアは窓から離れない。

七人の中で最も若く見える剣士は他の誤認に注意を仰ぐのだが……


「「「「それはもうほっといていいよ」」」」

「それって言うなそれって」


思わずアリアが文句を言うほどに見事なシンクロだった。

その中の一人、美しい銀髪を伸ばした男がアリアを目配せだけで黙らせると静かに口を開いた。


「お前が自ら行動にでるとは珍しいな。アリア、何があったのか、よければ教えてはくれないか?」

「アルトよ……」

「アルト?どこかで聞いた名だったか……?」

「私の弟よクライヴ!外の風からアルトの匂いがしたの!」

「「「「「嘘つけぇ!」」」」」


クライヴと呼ばれた男以外の五人がまたも見事なシンクロを見せるがアリアは気にせず続ける。


「この私がアルトの匂いを間違えるはずがないもの、間違いないわ!」

「だ、だけどそれ今関係な………」

「はぁー、アルトにぎゅーってしたい……抱きしめて深呼吸しながら一緒に寝たい……」

「「「「「「………」」」」」」

「枕に巻いてたアルトのシャツも最近匂い薄れちゃって、アルト臭に飢えてたのよ……」

「「「「「「うわぁ………」」」」」」


ドン引きだった。


「それじゃ、私アルトを探してくるからー!」……ガチャ、バタン!


アリアはそう言い残して走り去った。

思いもよらなかった展開に反応できず、沈黙が一席空いた円卓を包む。


「ほんとにあれについて行って大丈夫なんですか……?クライヴ殿」

「……大丈夫だライオット。……多分」

「「「「「「………」」」」」」








「あれが剣都の頂点(一番強い)なんて、信じられそうにないですよ……実際に負けてなければ」


ライオットと呼ばれた男のつぶやきに、一同はコクコクとうなずくのだった。

 ここは『頂上会議』。

剣都の上位七人によって結成される、まごうことなき剣都最強集団である。






==============================


 剣都アルンの城壁沿いに建つ宿屋『鷹の爪』。

香辛料の生産が盛んな地方から来たという主人の作る、うまくて辛い料理が自慢の宿である。

朝食、夕食付で一泊銀貨一枚という安めの値段に惹かれ、僕はこの宿に泊まることにしていた。

城壁沿いで、学園から遠いこの宿は幸い部屋も空いていた。

昼食は別料金になったいるが、それでも一食銅貨四枚。

なんでも、宿の主人が田舎からとても安く香辛料や食材を仕入れることができるため、この価格でも十分に儲けがでるのだとか。

 姉さんに自分の存在を知らせないと決めてから三日、僕はこの宿で休息をとり、昼間は鍛錬をして、明後日に迫った入学試験に備えていた。

 受験するのは異能持ちがほとんどらしいが、無能力者の英雄譚が多く残るアルンでは、無能力者用の受験会場があり、合格者の割合の三分の一が無能力者になるよう調整がされているという。

それを知ったこともあって、僕は安心して鍛錬に打ち込むことができていた。


 そしてこの三日間で大きな変化が一つ。


「アル、早く鍛錬に行こうぜ。」

「マックス、食べるの早いって」


剣都にきて初めての友達ができた。

マクスウェル・アヴェニュー、僕の村とは剣都を挟んでちょうど反対方面にある街の貴族の息子らしい。

なぜ貴族なのに安い宿に泊まっているのか、と尋ねたところ、

「貴族の集まりは堅苦しくていけすかねぇ。俺は強くなるために来たからな!」と言っていた。

異能は火系統。上に兄が三人おり、後継者争いに巻き込まれる前に剣都に来たらしく、たまたま宿が同じ部屋になったのが仲良くなったきっかけだった。

それから三日間、昼の鍛錬に付き合ってもらっている。

……彼が食べ終わるのが早すぎて、いつも待たせてしまうのだが……


「ご馳走様でした。いいよマックス、行こう」

「よし!今日こそアルに一発入れて見せるからな!」


 さすがに街中で戦うわけにもいかないので、僕とマックスは一旦城門からアルンを出て、外の草原に草を刈って作ったスペースに向かう。

城壁の外側なので動物に襲われることもあるが、それを倒すのもいい鍛錬になるので、僕はこの草原が案外気に入っていた。

動物が異能を身に着けた異常種も存在するらしいが、今のところ遭遇していないから、恐らく大丈夫だろう。


「さぁ、始めようか」


僕がそう言うが早いか、マックスは両手のガントレットに炎を纏って突っ込んでくる。

彼は剣士ではない。拳士だ。

「剣術とかめんどくさい」といい加減なことを言いながらも、拳のみで僕の短剣を捌くマックスには、実戦経験があるもの特有の余裕がある。

相手の一手先を読んで動いているのだ。

脳筋に見える戦い方だが、頭の回転が速くないと到底不可能だろう。


だが……


「くそッ、かすりもしねぇ!どうなってんだアルは」

「昨日も言ったろ?三手先まで見えないと足りないよって」


 僕は父さんから、この技術を叩き込まれていた。

異能を持たない僕にとって、相手の行動を読んで動けることは勝つための必須条件。

得意とする死角の利用も、これができてこその技術だった。

武器を持たないマックスの戦い方にも、それは同じだったのだろう。

初めて戦った時点で、彼は一手先を読めていた。

僕はそれでは足りないと考え、こうして彼に教えているのだが……


「もう無理だ……休ませて……」


約二時間後、結局一度も僕に攻撃を加えられず、マックスは音を上げるのだった。


次回、試験か、アリアか、それ以外か……!

まだかんがえてない……どうしよう……

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