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第三話(父視点有)

少し量を増やしていきます。2000文字を目安でしばらくいこうかと思います。

「なッ!?」 

 剣戟の中、アルトの剣筋が変わった。

一度経験がある剣だ。これは……アリアの剣だ。

まさかアルトがこれを盗んでいるとは思わず、少し反応が遅れた。

アリアの剣術は途切れないことが特徴のもの、これをしのげば勝てる。

そう思った矢先、アルトが木剣を……投げた。


 予想外の行動に驚きながらも、飛んできた木剣を弾く。

そして目線を正面に戻すと、アルトが……消えていた。


「何処に……」


 一瞬の出来事に目を見張った。

そしてすぐにアルトがどう動くかの予測に頭を切り替えた。

今アルトは木剣を持っていない。

そしてあいつの力では俺と正面から戦うのは無理だ。

アルトもそう考えるはず、であれば……


「後ろかぁ!」


そう確信した俺は自分の後ろに向けて木剣を振りぬいた。


「残念、外れ。そして僕の勝ちだよ。父さん」


寒気がした。

その声は、後ろを向いた俺のさらに後ろ、つまり先ほど消えたのと同じ方向から聞こえたのだ。

そしてその声を発した俺の息子は、俺の首筋に投げたはずの木剣を突き付けながら、微笑んでいた。

もう認めるしかないようだった。


「ははは、まさかここまでとはな……強くなったんだな、アルト」

「……はい!ありがとうございます、父さん!」


この日、俺は息子に完敗した。




=============================

数日後……


「それじゃあ行ってくるね、母さん」

「本当に大丈夫?忘れ物無いね?後で困ることとかないわね?」

「母さん、もう子どもじゃないんだから……ありがとう」


 ついに、僕が剣都へ旅立つ日がやってきた。

父さんに勝ってからの数日は、ほとんどがその準備に使われていた。

まさか母さんが僕の服にあそこまでこだわるとは思っていなかったが……

そして今日まで、父さんは僕の剣術を仕上げて見せる、と気合を入れて特訓に付き合ってくれていたのだが……


「母さん、父さんの姿が見えないんだけど?」

「あなたが出ていくのが寂しいけど、泣くとこは見せたくないから,畑にいってごまかしてるのよ」

「へ、へー……」


畑の方から「泣いてないからなぁ!」という声が聞こえたのは気のせいではあるまい。


「そろそろ時間だし、行ってくる」

「行ってらっしゃいアルト、たまにはかえって来なさい」

「もちろんだよ」


こうして、僕は剣都アルンへ出発した。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 アルン行きの馬車との待ち合わせ場所は、村のすぐ外の馬車乗り場。

そこを目指してしばらく歩いていると、誰かが道をふさいだ。


「おやおや、無能のアルトじゃないか。」

「何処に行くのか教えてくれよぉ」

「無能が一人で……ついに絶望して死にに行くとか?頑張ってなぁ」


どこかで見た顔だと思ったら、俺が無能ということを聞いたとき、神殿にいた村の同年代三人組だった。

リーダーっぽいのが確かロイで……あとの二人は思い出せなかった。


「これからアルンに行くんだ。通らせてくれないかな?」


とりあえず急ぎたかったので下手に出て頼んでみると、三人組は笑い出した。


「き、聞いたかよお前ら」

「あぁ聞いた。無能が、無能がアルンに行くって……もうダメ、ひひッ、おなか痛い」

「馬鹿じゃねえ?こいつ馬鹿なんじゃねえの?」


なにかおかしいことを言っただろうか。

そんなことを考えていると、三人組は僕を取り囲み始めた。

正面のロイが見下したように喋りだした。


「なんだ無能の分際で、英雄にでもなれるのか?

んなもん無理に決まってんだろうがよ、わかるだろ?

無能は無能らしくなぁ、村に引きこもって、畑耕して一生を終えればいいんだよぉ!!!」


なるほど、つまりは自分より早く剣都行きを許された僕への嫉妬か。

ここで僕は、同年代の異能持ちとは戦ったことがないことを思い出した。

スルーしたかったが、ひとつ試してみたくなった。


「よく喋るな。異能一つで随分と偉くなったな。」


正直ロイのもとの地位なんて知らないが、適当に挑発してみる。

これで乗ってくるのであれば、その程度だということだし……


「無能が、この俺を馬鹿にすんじゃねえ!」


釣れた。

ロイが叫ぶのと同時に周囲の風向きが変わった。

彼は風系統の異能持ちのようだ。


「剣を抜け無能!格の違いを教えてやる!」

「抜かせてみろよ、自称有能君」

「ッ!!!死ねえ!【ウィンドカッター】!!」


風の刃が具現化し、襲い来る、が、


「当たらないよ。そんなの」


僕はステップのみですべて躱しきる。

そして……加速する。


「なッ……消え……」


消えてなんかいない。

死角に入り込んだだけだ。

そのままロイの後ろにまわり、鞘に収めた剣で膝の裏を突く。

ロイは反応すらできず、膝から崩れ落ちた。


「やっぱり同年代で父さんより強いのはなかなかいないか……」


歩き出そうとする俺をロイが見上げる。


「何かの間違いだ、俺が無能に負けるはずが……」

「僕は無能力者だ。だけど勘違いするなよ。

無能力者であることと無能であることは、決して同じじゃない」


何も言えなくなったロイと何もできなかった二人に背を向け、僕は馬車乗り場に向かうのだった。



そして僕が時間に遅れて御者さんに怒られたのはここだけの秘密だ……







































































実はこの話、間違えて一度消してしまい、すべて書き直しました。今後は気を付けよう……

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