マッハ、狩りをする
「おーし。んじゃ、出発するか。コング以外は、適当で。数出たら、V-MAX発動すっから」
ひげもじゃのために鉱石を探しながら行く。とりあえずまっすぐ山頂を目指そうか。
山頂にはまとめて湧いてることが多いし。
う~ん、鉱石、鉱石っと。ねぇなあ。
敵だ。
山頂への道沿いだから見通しがいいし、楽だな。
虎が3匹、コング2、蝶が数匹か。
虎は本来群れるような習性はないと思うが、FBWではその辺、お構いなしのようだ。
この程度の群れなら、自動で大丈夫。
ペットにお任せして、そのままスタスタ歩いていく。
天翔竜は獲物を見定めて飛んで行った。
近づいてくる敵は、剣士が危なげなく切り伏せていく。
俺の方にもコングが1匹きた。
「よっと!」
軽くバックステップして、振り下ろされる腕をかわす。
「当たらなければどうということはない!」
横合いからレッドブルが突撃して、終了だ。
死体は消えるし、素材はドロップする素敵仕様だった。
こんなもんか。
体感、ゲームと変わらないな。この調子でずんずん行こう。
山頂目指して小1時間、いくつか群れを倒して、素材もほぼほぼ回収した。
ひげもじゃと別れる前に1匹くらい白コングを倒したいところだが……。
そんなことを思いながら山頂に着いた。
予想通り、鉱石の山がある。
「おう、あったあった。じゃ、ワシはここで掘ってくでな」
「うす。オレも休憩がてら、掘っていくかな!」
「そうだな」
そういって、皆して鉱石の山に向かっていく。
どこで掘ろうかな、なんて考えながら、廻り込んでいく。
すると、先行していた魔法士が立ち止まったから、ぶつかってしまった。
「おっ、なんだよいてえな! ぶつかったじゃねえか!」
抗議して、なお言い募ろうとすると、魔法士は口元に人差し指を添えて、もう片方の手で進行方向を示した。
ひとまず怒りをひっこめて、様子を見てみる。
なるほど、いるいる。
鉱石の山でできた日陰に、いるわいるわ。
コングの群れがわちゃわちゃ。
白コングもいる。しかも2匹。
セットで2匹出るなんて、ラッキー!
こいつらを倒せば、クエスト達成だ。
俺は手早く皆を呼び寄せて、作戦会議を始める。
「オレとひげもじゃで向こうにまわる。位置についたらぶっ放してくれ」
「ああ。任せてくれ」
魔法士の返事を聞き届けてから、すぐに行動に移す。
移動しながら、ひげもじゃと細かい打ち合わせを進める。
「ひげもじゃは足止めを頼むぜ! オレは突っ込むからな!」
「よしきた」
位置についた。
コングたちはまだ俺たちには気づいておらず、思い思いに過ごしている。
大チャンスだ。
剣士と魔法士に手で大きいマルを作って合図をする。
いつでもいけるぜ。
足に力を込めて待機していると、コングの上空に複数のつららが形成され、降り注いでいく。
魔法士のスキル、アイスピラーだ。
コングたちは突然の襲撃に慌てふためいている。
と、白コングの1匹が胸をたたいて注目を集める。
統率を取って立て直されると厄介だし、剣士と魔法士が狙われる。
頃合いだな。
「いくぜ! V-MAX発動だ!」
「ギャオオオオォォン!」
天翔竜が俺のコマンドに応え、空色の軌跡を残して飛んでいく。
さながら、蒼い彗星だな。さすがはV-MAX。
俺も敵を目掛けて走り始めた。
マッハと天翔十字咆のスキルを思い出してほしいんだが、V-MAXなんていうスキルはない。
結果的にそういう効果と見た目になることと、あとは俺の趣味で、そう呼んでいるだけだ。
使ったのは、マッハのスキル、従魔活性。
ペットの体力を削って、一時的に能力を底上げするスキルだ。
天翔十字咆は、コングの周りを縦横無尽に飛びまわりながら、咆哮を浴びせていく。竜の咆哮には、相手を挑発する効果がある。
魔法士の方へ向かおうとしていたコングたちも、ほとんど釘付けだ。
ほんの少し、突破したやつらも剣士に横薙ぎに斬られていく。
普通のコングはたじたじだ。
意味のある行動をとろうとしていた数匹も、ひげもじゃのペット、タンブルボールが地面から生やしたツタに足を取られて動きを止められている。
ナイスひげもじゃ!
白コング2匹は、両方とも天翔十字咆の挑発には乗らず、魔法士の方へ向かっている。
「1匹は任せるぜ!」
俺は剣士に声を飛ばしつつ、シュートのスキルを発動し、掌に出てきたボールを放って蹴りとばし、近い方の白コングにぶち当てた。
「おらあ! 今だぜ! 天翔竜煌!」
俺の声に応え、天翔十字咆が白コングへとまっすぐに飛んでいく。
そのカギ爪が、キラリと光っている。
説明しよう。
天翔竜煌とは、圧倒的なスピードで振られたカギ爪から繰り出される、鋭い一撃なのだ。
あまりの速さに、初撃を受け止めたところで発生する衝撃に引き戻され、続くもう片翼の攻撃は避けられない驚異のスキルなのである!
……なんてことはなく、そんなスキルもない。
ただの攻撃だ。
そんなスキルはないが、白コングに攻撃は通り、足は完全に止まった。
俺は追い打ちをかけるべく、加速して宙に跳ぶ。
ディメンションシューズの効力をフル活用し、空中を立体的にジグザグ移動しながら距離を詰める。
白コングは怒りを込めたメガトンパンチを振るってくるが、当たってやる義理はない。
後方に廻り込み、脳天に踵落としをかける。
「どらっしゃああぁぁ!」
どこおおん!
と、派手な音がして、白コングが地面にめり込む。
まだだ。まだ終わらんよ。
「せいっ!」
白コングを蹴り上げ、ジャンプ。
シューズを活用して追いすがりながら、蹴り飛ばし続ける。
気分は格ゲーだ。
仕上げに回転廻し蹴りをくらわせ、着地する。
残心。
もう片方の白コングも討伐され、普通のコングがちらほら残るだけとなった。
こっからは完全に掃討戦だ。
なんか、普通に動けたな。
ゲームやってるより、これ100倍楽しいんだけど!
次は、もうちょい難易度の高いクエストに挑戦してみようかな。