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マッハ、従魔召喚!

 FBWでは、メインクエストとサブクエスト、デイリークエストがある。


 メインクエストやサブクエストは、特定のNPCに話し掛けることで発生する各種おつかいクエストだ。


 町の住民のお困りごとを解決して、報酬をもらう。


 直接、困っている人のところに向かって話し掛けても受注できるが、困りごとはギルドへ持ち込まれるので、ギルドに顔を出して情報を得るのが、順当な手段だ。


 他にも、突発的に受注できるイベントクエストなどもある。主に季節ものだな。七夕とかバレンタインとか。



 街の中心に、ギルドがある。


 ギルドの前の通りは、受注広場と呼ばれているが、それは、ギルドの建物の脇に立てられた、看板のためだ。


 ここに、デイリークエストが、毎日貼り出される。


 デイリークエストは、素材と討伐のクエストだらけだ。


 エリアごとに分けて貼り出されていて、まとめて受けることができる。


 デイリークエストというだけあって、その日のうちに完了しないと、報酬はもらえない。


 狩りに向かう前、広場で依頼を見て狩り場を決めるのが、FBWの正しい遊び方だ。


 クランメンバーと高難易度のダンジョンに挑戦したり、イベントクエストなんかをやるのもいいかも知れないが、いくらファンタジーで冒険するっていったって、冒険し過ぎだろう。


 パソコン越しでポチポチやるわけじゃなくて、自分で身体を動かすんだ。


 マッハはスピードタイプのファイターだし、俺がぶっつけでそこまで動けるとも思えない。自慢じゃないが、体育会系じゃないからな。


 というわけで、どうするか。


 もちろん、野良PT募集だ。


 ふぅむ……。

 今日はフラウ山脈の狩りが良さそうだな。


 過疎化の進んだ末期のFBWでは、野良PTなど集まるわけもなかったが、ここにはそれなりの人通りがあるし、何とかなるだろう。


 ゲームなら、ログインさえしていれば、どこにいてもチャットできたけど、どうもクランのメンバーいるかいないかすら分からんし。


 俺の夢には未実装らしい。


 ここで、できるだけ大声を出したら、世界中の人に届くだろうか。まあ、たぶんこれも未実装だろうな。


 いや、夢は可能性の塊!


 オレ、マッハ! いきまーす!


 俺は、大きく息を吸って、できる限り大きい声で叫ぶ。


「フラウPT募集するぜ! コング2体倒すか、昼過ぎまで!」


 がんばった。


 まあやっぱり、世界中に届いた感じはしないな。

 せいぜい、この通りの端くらいまでだ。


 デイリークエスト板を眺めてる連中には聞こえてるから、充分だろう。


 さっそく、何人か集まってきた。

 そのうちの、ひげもじゃドワーフが話し掛けてくる。


「ようマッハ。今日はフラウか。がんばれよ」


「なんだ冷やかしかよ。今日も掘るのか?」


「おうよ。ま、鎧ができるまではな」


 言うだけ言って、ひげもじゃドワーフは去っていく。FBWでは最高級品質を求めるなら、基本的に装備は自作、素材も一から自分で用意するしかない。


 良い品質の素材を精錬して精錬して、ようやっと取り掛かれるのだ。


 その辺、ブラウザゲームは時間を惜しみなく使いつぶす仕様だから、1日中ログイン放置して、延々鉱石を掘っているキャラクターがそこかしこにいたものだ。


 レア素材の争奪戦があり、自治厨が沸いて、職的に必要ない素材をサブキャラで放置掘りは許せん、とかイキって狩りまわったりと、まだ過疎化する以前のことを懐かしく思い出した。


 実際には装備に使う以外にも、素材は換金したり、下級のセット装備を作るのに使ったりと、無駄になることはないので、言いがかりなのだが。


 そこまで考えて、俺はひげもじゃドワーフを呼び止めた。


「お~~い、ひげもじゃ!」


「なんじゃい、小僧! もう行くんじゃ! 手短にせい!」


「鉱石が見つかるまででいいからさ。一緒にフラウまわろうぜ!」


「おう、それもいいか。ちょっと待っとれ。適当に受けてくる」


「わかったぜ!」


 狩りはPTメンバーが多い方が、獲物も集まってくるからな。


 フラウ山脈で稀に出現するハイパーコングも、PTならすぐに出てくる。


 2人でも、ひげもじゃならいけるか。

 もう出発してもいいな。


「フラウ、俺たちも行っていいか?」


 お。もう2人。

 剣士と……魔法士か。こりゃ心強いな。


「オッケーオッケー! これなら楽勝だぜ!」


「じゃあ、よろしくな。俺たちはもう受けてる。コングもあるから最後までいるぜ」


「よろしく」


「おう! ひげもじゃきたら、すぐ出発するぜ!」


「待たせたな。行こう」


 俺本来のテンションとは大分違うが、長年マッハとして過ごしたのは伊達じゃない。終始ビックリマークの異常テンションでも、なんてことない。


 フラウ山脈は、街を出て森を抜けた先にある。


 俺は森のデイリーも受けているが、ひげもじゃは受けていないからスルーだ。


 スイスイ避けて進みながら数十分。

 俺たち4人はフラウ山脈に着いた。


「よし、戦闘準備だ」


 ハイパーコングはパワー型の野獣だ。パワーで対抗するのも一興。しかし、遠距離から安全に倒すのがセオリーだ。

 フラウ山脈で他に出るのは普通のコング、虎型と、蝶型の3種類だ。

 普通のコングは黒くて、ハイパーコングはひとまわり大きくて白いので、簡単に見分けられる。


 デイリーは白コング2体、他各20体、素材が蝶の鱗粉、虎の毛皮、コングの胸板各5つ。


 ゲームだと素材はドロップアイテムだったが……。


 これはまぁ、倒してみて、他のヤツの様子を見てれば分かるかな。


 死体が消えてドロップアイテムが残る素敵システムだと助かるな。


 で、戦闘準備。


 FBWでは、ペットを1匹使役できる。

 俺は主に2匹を育成、運用していた。



 お~~、いるいる。召喚しよう。


 フラウ山脈で厄介なのは、蝶型のモスガだ。

 飛んでるし、鱗粉で痺れさせてくるから、戦闘に時間を喰う。

 俺はガチ勢じゃないけど、狩りに時間効率の意識は大事だ。

 雑魚狩りで全滅なんて有り得ないしな。


 修理費のかさむ装備を外して、狩り用の装備に付け替える奴だっている。

 それどころか、アイテム枠やら、付け替えの面倒臭さから、単純に全裸で狩りに臨む奴もいる。


 俺は資金に困ったことはないし、外すのすら面倒だからそのままだった。


 さすがに、今の状況での初狩りで、装備を外す気にはなれない。普通に着けていよう。


 各種ステータスを見たところ、資金やらも、サービス終了時のデータを引き継いでいるから、潤沢だしな。


 アイテムショップは……さすがに開けないか。


 街に戻ったら、アイテム倉庫の中身も無事か、確認しないとな。


 あ~、こんなことなら、サービス終了間際の割り引き祭りで、もっと色々買っとけばよかった。

 あと、何の意味もない花火を打ち上げるエフェクトやら、移動する時残像の出るカッコつけアイテムとか使って遊ぶんじゃなかったかも。


 いや、まあ夢なら覚めたら関係ないから、どんなに浪費したっていいんだけどな。


 ……。


 夢じゃなかったら、ちょっともったいない可能性もあるかな?


 まあ、無難に様子見するかな。

 もうちょっとな。

 俺自身は、イケイケでもなんでもないし。


 さあ、どっちにするかだけど。


 よし、キミに決めた!


 片手を前に出し、呪文を唱える。


「従魔、召喚!」


 俺の前方に円形の光の柱が生まれ、中からペットが現れる。


 呪文を唱えなくても出てくるんだけどな。気分、気分。


 出てきたのは、空色をした小型の竜だ。

 平均的な大人と同じくらいの大きさで、地面から少し浮いてはばたいている。

 翼にカギ爪がついていて、いわゆる翼竜というやつだ。


 モスガは飛んでるからな。

 目には目を。歯には歯を。空飛ぶ敵には空飛ぶ竜だ。



 天翔十字咆


 天翔竜 LV94


 HP 1264/1264

 SP 669/669


 腕力 103

 体力 103

 敏捷 475

 知力 103

 精神 103


 スキル 竜鱗 咆哮



 こいつもマッハと同じく、敏捷特化型だ。


 防御など必要でない。

 天竜はただ、圧倒的な速さで蹂躙するのみ!


 退きません!

 媚びへつらいません!!

 反省しません!!!


 くっふふ~~ん。


 ひげもじゃや、剣士と魔法士ペアも、それぞれペットを出す。


 ひげもじゃは本人にそっくりなもじゃもじゃを生やした、荒野とかでよくカサカサ転がってるような草みたいなボール、タンブルボールを召喚し、剣士はちびドラ、魔法士はレッドブルか。


 けっこう物理系に寄ったな。


 コングとの相性は良くないけど、殴り倒せばいいか。

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