第5話
老人改めエロ爺さんが睨んでくる。
(俺が代理で悪かったな)そう思っていると水を司る神が
「何処かお話しできる場所はありませんか?」と尋ねる。
「これはこれは儂とした事が。ささ、此方にお入り下さい」
いつの間にか大木の根元付近に扉が現れていた。
大木の中は意外に広く木で出来たテーブルや椅子などが置いてあり快適な生活が送れる造りになっている。
テーブル近くに置いてある椅子に勧められ待っていると、エロ爺さんが紅茶を二つ運んできた。
その紅茶を水を司る神と自分(エロ爺)の前に置き椅子に座る。
(あれ?俺の分は無いのですか?)そう思い視線を向けるとエロ爺さんは小声で
「お前なんか招いてなんかいないわ。さっさと帰れ」と呟いた。
・・・涙が出てきた。もう帰りたいよ。
優雅に紅茶を飲み一息ついた水を司る神が話し始める。
「さて、まずは自己紹介から致しましょう」
「私の隣に座っている神が今回こちらの世界で創造神代理をすることになった名無しさんこと名も無き神です」
なるべく先程の件は気にしてないと装いながら
「ご紹介に与りました名も無き神です。まだまだ未熟者ですが頑張りたいと思います。宜しくお願い致します」と頭を下げる。
そう挨拶するとテーブルを挟んで対面に座っているエロ爺さんが何かを諦めた、そんな様子で「はぁ」と深く息を吐き気持ちを切り替え
「儂は今お主がおるこの大木じゃ。名前は世界樹、マナを司る大木など沢山呼び名があるが近くの森の中に住むエルフからは『精霊王ユグド」と呼ばれている。お主には精霊王様と呼ばせてやろう」
精霊王様?いいえユグド爺もしくはエロ爺で十分です。
しかし、エルフだと?人間はいないのですか?
聞きたい事が山ほどあるぞ。そう思考していると隣に座る水を司る神が立ち上がり
「それでは、私はお暇させていただきます。後の事はお二人でよく話し合い決めて下さいね。紅茶、御馳走様でした」
そう言いながら帰ろうとする。
名も無き神が
「まだ自己紹介をお互いしただけなのですが?」
そう返すとユグド爺さんも
「そうですぞ。もう少しゆっくりしていかれては」
と引き止める。
けれども、水を司る神が
「私はあくまで精霊王に名無しさんを紹介しに訪れました。その役目を終えましたので、後の事はお二人の話し合いで決めるのが宜しいかと。既に部外者ですのでこれにて失礼致します」
「それでは頑張って下さい」
そう言い残し、転移して帰ってしまった。
ユグド爺が先程まで水を司る神が使っていた椅子とカップを眺めている。
眼をキラキラ輝かせながら小声で呟いた。
「この二つは儂にとって神器じゃ。大事に大事に宝物庫に保管しなくてはならんわい」
その言葉を聴いてしまった名も無き神は背中に寒気を感じ、これからの話し合いが物凄く不安であった。
ユグド爺さんが大事に椅子とカップを何処かに運び終えて戻ってくると
「先程はすまんかったな。ほれ」と
紅茶の入ったカップをテーブルに置く。
実は、名も無き神は紅茶が好きではない。しかし、折角の厚意を無駄にしない為に我慢をして一口飲む。この星に紅茶以外の飲み物がある事を祈りながら話し始めた。
「自分はこの世界の創造神代行を任されましたが全くこの星の事を知りません。色々とお教え願えませんか?」
するとユグド爺さんが
「わかった。儂が知っている範囲で良ければ教えてやるとしよう」
それから長い事この星について教えてもらい一区切りがついた頃には窓の外は暗くなっていた。
ユグド爺さんは「今日は此処に泊まっていけ」と言って気を遣ってくれたが丁重にお断りする。
これからの準備の為に一度元いた世界に戻る事を話し、転移しようとしたその時ユグド爺さんが
「すまん。忘れておった」と真剣な眼で自分に問いかけてきた。
「お主は、この世界で何を目指し又何を求める?」
(難しい問いだな)
そう思う名も無き神は相手の眼を見てその問いかけに答える。
「正直に話しますが自分にはまだその答えはわかりません」
「しかし、一つだけ言える事があります」
「平穏にこの世界を過ごしていきたい。そう思っています」
その回答を聴いたユグド爺さんは
「そうか、そうか。平穏に暮らしていきたいか。お主中々面白い事を言う神様じゃな」
と顔を綻ばせて笑うのだった。
誤字、脱字ありましたらごめんなさい。
次に三人の視点をの間話を書いたら序章は終わりです。
拙い文章ですが宜しくお願いします。