第1話
とある病院の病室
ベットの上に老人が寝かされている。
周りには二人の看護師さんが先ほどまで動いていた医療用機器を外していく。
その様子を名も無き神は見下ろしていた。
「平均寿命まで生きられなかったのが残念だ。やはり煙草がいけなかったか?」
死因は癌だった。既に見つかった時点で手遅れの状態。他の場所にも転移。
日に一箱以上は吸うヘビースモーカーだった。
「だが次転生しても多分辞められないんだろうな」
と微かに呟く名も無き神。
葬式の準備は医者から末期と告げられてすぐに業者とお寺に委託した。
お墓の方も問題はない。すべて支払いは済ませた。
納骨される最後まで見ていくか?そう思ったがやめておこう。
只々悲しいだけだ。
「さて、また頼まないといけないな」
そう言って動き出そうとした瞬間後ろから声を掛けられた。
「やっと見つけましたよ、名無しさん」
名も無き神は冷や汗を流しながら後ろに居るであろう彼女に振り向き
「これはこれは、創造神様。私如きに何か御用事でしょうか」
と頭を下げるのだった。
創造神に連れてこられこの星の神界に来ている。
ちなみに神界に来たのはこれで三度目。
一度目は創造神に激怒された。
この星の決まり事を破ってしまったから。
二度目は頼み事をしに訪れた。
そして今回が三度目になる。
内心ここには来たくなかった。自分が惨めになるから。
他の神と違い自分が何を司る神なのかわからず、信仰すらない。
その事で他の神々からは奇怪な目でみられる。
それが嫌だった。だからこそ避けていたのに・・・。
だがごく少数ながら好奇心から声を掛けてくる神もいる。
それが唯一の救いだ。
しかし、今回は自分の前に創造神が歩いている。
触らぬ神に祟りなし。
このことわざを考えた人はすごいな。今の状況が的を得ている。
暫く無言で歩いていると、小さな神殿に辿り着く。
「着きました。どうぞ、中にお入りください」
「はい。お邪魔致します」
そう返答して神殿の中を歩いて行く。
神殿の中は部屋が四つ在るだけの簡素な造り。
その一つの部屋に案内された名も無き神は
最初に連れてこられた時の事を思い出していた。
あの時から全く変わっていない。
部屋には事務用の机が一つ。椅子が二つ。壁際に書類棚が一つ。
壁は白を基調とした色合い。
まさに必要最低限の執務室である。
「お座りください。」
勧められた椅子に腰かけながら名も無き神は凄く焦っていた。
自分が何かやらかしてしまったのかと考えては思い至らず既に背中の冷や汗が止まらない。
だからこそ次に発せられた言葉を聞き安堵する。
「貴方に頼み事があるのです」
嗚呼、頼み事か。助かった。
また知らない内に決まり事を破ってしまい、今度こそ消滅させられるのかと恐怖していたのだ。
本当に良かった。
そう心の中で思っていると
「この世界とは違う異世界で創造神代理をしてもらえませんか?」
・・・・・・。
「えええぇぇぇ~~~」
余りにも唐突に言われた頼み事に驚きの声をあげる名も無き神であった。
誤字、脱字等ありましたらすみません。
今回も短いです。ごめんなさい。
自分の文力の無さに絶望中。