零章 回想(1)
そもそもの始まりは、今から50年前―――ある一人の科学者が人間型アンドロイドの製造に成功したことだった。
―――と言われてはいるのだが、俺はその時まだ生まれていなかったので、初期のアンドロイドのことは教科書でしか知らない。
今でこそ人間型アンドロイドは見た目が人間と区別つかないくらいまでに技術が進歩しているが、昔は“人間のでき損ないの失敗作”レベルだったと聞く。
まあその科学者も、まさかそのアンドロイドに裏切られるとは思わなかっただろうが…。
とにかくそうして人間型アンドロイドは生まれ、やがて人間の生活の一部になっていった。当初は反対していた学者たちも、アンドロイドの便利さにやられて、徐々にアンドロイドは人間たちに溶け込んでいった。
アンドロイドは本当に人間に対して従順だった。
俺は正直なところ、そのアンドロイドの従順さを気持ち悪いと思っていた。殴られようと水を掛けられようと、仲間が壊れて捨てられようと、人間たちに何をされても従順に従うアンドロイドたち。
――まるで、人間たちに反旗を翻す日を待っているかのように…。
とまあ、ちょっと世間の矛盾について小賢しく考えてみたわけだが、今の俺の見解は思春期特有のそーゆーのだと思ってもらって大丈夫だ。自覚はある。ただ、どうしようもないだけだ。
話を戻そう。
アンドロイドたちはあの日、それまで従っていた全人類に対し牙を剥いた―――。