表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

残したサヨナラ

作者: ヤン

彼氏が浮気した。

付き合ってそれそろ7年目。

ネオンの光が眩しいピンクのホテルに、これまた美人な女性と腕を組んで中に入った。

周りが次々と『結婚します』なんて嬉しいような悲しいような気持ちの中、私にも・・・なんて妄想では無く、想像していた今日この頃。

「あーの人の〜ママに会うために〜今1人電車に乗ったの〜」

懐かしいメロディを口ずさみながら、彼氏の家に私は向かう。


1人、おろしたてのパンプスの音が響く。

一目惚れしたけど、足が痛い。

これは失敗かなとか、

あぁ、冷蔵庫の中に卵が無かったとか、

どうでもいいような事を考えながら、先ほどの光景を考える。

スタイルよかったな、あの人。

ニュースで時たま流れる浮気が、まさか自分にも当てはまるとは。

『浮気』もしかしたら、私が浮気相手だったとか。

それともセフレ、友達・・・考えたらキリがない。

途中、コンビニを寄ろうかな。


彼が嫌いと言ってたから、もう久しく行っていないコンビニ。

作りものの光は、先ほどのネオンの光を思い出して悲しくなった。

「ありがとーございました」

私はゴミ袋を買った。

決別のために。

「終わりなんて、呆気無かったなぁ」

彼と過ごした7年は、あまりにも長かった。

コンビニにガラスに映った、哀れな女。

その泣きそうな表情で、必死に涙をこらえる顔を、私は『見て見ぬふり』をした。


合鍵を貰って、約5年。

彼の部屋から私の私物を片付ける。

こんなに化粧道具の場所をとってたんだ。

片付けた洗面台がスッキリしたのを見て驚く。

20代真ん中かな、ハリも無くなってきた。

あの時のショックを思い出して、少し笑える。

それと同時に、私は『私って馬鹿だったかも・・・彼に時間を費やしすぎた』とか考える。

シャンプー、歯ブラシ、パジャマ・・・途中、珍しく彼とお揃いにしたマグカップを取り出す。

お揃いなのに青とピンクや赤、じゃなくて黄色と水色が可笑しかったのを覚えてる。

紅茶は彼も飲むかな。

私がオススメして、普段コーヒー派の彼が珍しく気に入った紅茶。

彼の部屋に置いてた、一度も着てないワンピース。

彼が珍しく褒めてくれた。

『お前らしくて、いいと思う』

お前らしくて、が嬉しくて買った、白いAラインのワンピース。

ちょっと子供っぽいかなと思ったら、結局着れなかった。

でも、私にはもう必要ないから。

日付が変わる前には、片付け終わるかな?

どうせ、彼は今日『帰れない』。

いや、『帰らない』。

つい数分前に着たメール。

『今日は友人と飲み会に行くからオールする』

はっ白々しい。

彼への気持ちも薄れていく。

もともと、荷物の少なかった部屋。

そこにあったはずの私の荷物はもう無い。

本当に、サヨナラ。

最後に残した置き手紙。

大丈夫。彼は頭の回転が速いからわかってくれる。

『サヨナラ』

紙にお気に入りの口紅で書いた。

一回やってみたかったのなんて思いつつ、手を離すと紙はベッドの上へヒラヒラ落ちた。




残したサヨナラ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。 面白くて何度も読んでしまいました♪ 読んでいて昔を思い出してしまいました…。 宜しかったら男視点も読んでみたいです。 有難う御座いましたm(__)m
[良い点]  他人の心を繋ぎとめられない、現実を想像しました。 [一言]  どれだけ情熱を注いだとしても、報われないことは珍しくないと思います。
2016/07/05 11:25 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ