幕間
幕間 お兄ちゃんに会いたい
魅成は、いつものようにここに来ていた。
まだ、小学校に入学したてであった魅成。
小さな子供一人でここにやってくるのは危ないと、親に言われていたのだ。だが、それでも、ここで事故死をした兄の事を思い出してここに来てしまう。
物語にあるように、ふっ……と姿を現して、私に声をかけてくれるのではないだろうか?
そんな事を夢想しながら、魅成は学校が終わるとここに足を運んでいた。
兄が死んでから、これで一ヶ月と二十日前後。
明日には四十九日の法事もある。
兄の事が忘れられず、学校が終わってもすぐに帰ってしまうので、自分は、クラスの中でも浮いた存在になってしまった。
いつも日が傾き、暗くなるまでここで待ち続ける。魅成自身、この行為に疲れを感じ始めていた。
当然、兄が現れて来る事なんて無い。
言葉の一つだって、もらえるわけがない。
何も成果が出ないまま、待ち続けているのも悲しすぎて、そろそろやめたくなってきてしまった。
その日も、茜色をしていた空が、黒く染まり始める。道路の縁石に座り、ぼんやりとしながらそれを見た魅成。
『もう帰ろう……』
何も得られないまま、トボトボと帰る魅成。そこに、ふっ……と髪をつかまれる感触を感じた。
驚いて振り返る魅成。
だが、振り返ろうが、辺りを見回そうが、何も見つけることができない。
『何かの間違い……? いや、そんなはずがない……』
きっと兄だ……
兄はいつも私の後ろに忍び寄っていきなり髪をつかんでくる。私が驚いているのを見て笑っていたのだ。
きっと、兄が私に何かを伝えようとしていたのだろう。だが、兄が何かを訴えているにもかかわらず、私は気付く事ができなかった。




