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あの人の意外な姿

 部室でグダグダしている時、いきなりドアが開け放たれた。

 両手を広げて、思いっきり元気に部室にまで入ってきたのは、生徒会の書記である、奏多先輩であった。

「よう! 君ら! 元気にしとるかね?」

 俺達は、何もせずにグダグダしているだけであった。元々物置であったここには、扇風機一つない。窓を全開にしても、四人も人がいれば熱がこもってくる。だが、なんの縁かは知らないが、俺達は何もなくても誰ともなくここに集まるようになっていた。

 全員が、暑さでぐでっ……としているとこである。そこに入ってきた奏多先輩の声は俺達にはさわやかすぎた。

「元気ない……」

 思わず答える魅成。

「何を言っておるのかね? いつもの爽やかな笑顔はどうしたのかね?」

 爽やかな笑顔か……魅成には最も似合わないものだ。

「魅成はいつもこんな感じなんですよ」

 生徒会の人間がここにやってきたのだから、何か用があるのだろう。生徒会からの通達であれば、部長である俺の役目だ。

 体を起こして立ち上がり、汗のじっとりにじんだ顔で、奏多先輩を迎える俺。

「汗も滴るいい男とは、君のことだねぇ。惚れ直してしまいそうだよヨシ君」

 奏多先輩は、相変わらずの爽やかさである。

「生徒会からの通達ですね? まだ期限は先のはずですけど?」

 そう言うと、奏多先輩は頭を抱えて考え出した。

「えー……ヨシ君は、私が生徒会として重要事項を伝えに来たって思っているって事?」

「違うんですか?」

「あー……待った、待った。話をそう急ぐんじゃないよ……頭の回転がおっつかない……」

 また、やってしまったか……

 よろず同好会の奴らと会話をしていた時のような感覚で話しているから、普通の人と話すと、ちぐはぐな会話になってしまう。

「えーと……最初に話を戻すよ……」

 ドアを閉め直した奏多先輩。

 ドアの向こうから深呼吸をする声が聞こえてきた。そして、喉の調子を整えるための咳払いが続く。

 ドアが勢い良く開け放たれ、二度目となる奏多先輩の挨拶が聞こえた。

「よう! 君ら! 元気しとるかね?」

「そこからですか!」

 会話がちぐはぐになってしまうのは、多分俺だけのせいでもないと思う。抜けた所のある奏多先輩を見て、俺はそう思った。

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