付き合ってみない?
「認めていいとか、どういうつもりだ?」
教室から出て、砂彩に手を引かれながら廊下を歩いているところ、俺は砂彩に聞いた。
「こぶが付いているって知ったら、悪い虫が近づいてこなくなるでしょう? 虫除けスプレーはしっかりたいておかないと」
「そうかよ……」
俺は虫除けスプレーの代わりかよ……
「私とそういう噂が立つのは嫌?」
「嫌っていうか……」
俺はそこまで言ってから考えた。
実際、どう思えばいいのだろうか? クラスメイト達から羨しがられるような噂だ。本人公認なのだから、おもいっきり自慢でもして、いい気分になるっていうのも悪くは無いだろう。
「ねえ。本当に恋人同士になっちゃおうか?」
思いもよらない言葉を言われ、俺はドキリとして何も考えられなくなった。砂彩が俺の事を見つめる。
本当に、何といえばいいか分からないし、何を考えればいいか分からない。
俺が何も言えないでいると、おもむろに砂彩がおれのほほをつねった
「本気になるんじゃない……『悪い冗談はやめろ』とでも言えばいいのよ」
俺のほっぺを抓りながら言う砂彩。
俺はからかわれたのか……ホッとしたのか? 残念だったのか? 自分でも分からない、複雑な気持ちだった。




