いがみ合いが解決
何これ……? なんで二人とも『渋々了承』みたいな感じの態度になっちゃってるわけ?
この状況を飲み込めていないの俺だけなのかもしれない。
見る限り、あの三人の様子は、いい感じになっている、これがマンガやアニメなら、背景に花とかが浮かんでいただろう。なんとなく俺にはそう感じる。
「また明日、部室で会いましょう。なんか、美味しいところは全部もっていかれました」
見空が言う。
「ここに残っても恥をかくだけね」
二人は、この場の空気を読んだらしい。俺にはまったく読めないけど……砂彩と見空の二人は、帰る事になっていったのだ。
「片付けしよう」
「片付けは俺達がやるのか……?」
魅成が言うのに、俺が気付く。
片付けを俺達に押し付けやがったか……あの二人……
「そんなの小さなことじゃない。お兄ちゃん小さい事を気にしすぎ」
「俺って顔に出やすいのか! なんで考えている事がことごとくバレるんだよ!」
「口を動かす前に、手を動かして」
俺の文句の言葉も無視かよ……魅成もだんだん可愛く無くなっているな……
「私だって、ただのなまけものにまで優しくない」
「また読まれた! もう読まないでくんないかな!」
「可愛くなくなっているとか……片付けをやることになったくらいで、ふてくされすぎだよ。私に当たるのもダメ」
「結局何も食えなかったし、片付けだけを、やらされる身にもなってみろ」
そう言うと、魅成の口元がクスリと笑った。
「何かを食べられればいいの?」
そう言い、魅成は一つのお椀を俺に向けて出した。
「私はトン汁も作っていたの。忘れてたでしょう?」
そう言い、俺の前にお椀を置いた。俺はそれを見つめる。
「何か食べたかったんでしょう?」
ニヤリと笑いながら俺に言う魅成。こいつ……分かっていて言ってるな……
「箸は……?」
汁物である、箸が無くては食えない……
魅成は、箸を取り出した。
「私のを使ってあげる」
そう言い、トン汁の中に箸を入れて、中のニンジンをつかむ。
そして、俺の口元にニンジンを近づけてきた。
「はい。あーん」
そう言い出す魅成。この状況、当然箸を持っているのは魅成である。
「どうしたの? 食べたかったんでしょう?」
からかうようにして、さらに言ってくる魅成。
問題なのは、そこじゃないだろう……
『あーん』なんてやってもらうのは、小学校の低学年以来だ。
まあいい……砂彩と魅空は、もう帰っている。これを見ている人間はいない。
恥ずかしい気分もするが、魅成の悪ふざけに付き合ってやってもいいだろう。俺は、魅成の差し出してきたニンジンをくわえた。
「どう? おいしい?」
そう聞いてくる魅成。正直恥ずかしくって味なんてあんまり感じない。
そこで、魅成の後ろ。ガラスを隔てた窓の向こう側に、砂彩と見空の姿を見かけた。
いつから見てたんだ……あの二人……
二人は並んでこっちを見ている。
『このロリコン……』『警察に通報しますよ……』
そうとでも言い出しそうな、冷たい目線をしながら、俺の方を睨んでいたのだ。
二人は、同時に後ろを向くと、ケッ……とでも言い出しそうな感じで俺のことを一瞥した後、廊下を歩いて去っていった。
「どうしたの? 美味しくなかったの?」
俺の顔をのぞき込みながら言う魅成の声を聞く。
「これは他人から見れば、ものすごくおいしい状況だろうな……」
意味が分かっていない魅成は、じゃがいもをトン汁から取り出して、俺の口に近づけてきた。




