料理対決
「料理対決……とかどうだ?」
スポーツになれば、体力面で劣りそうな魅成は勝てそうにない。
魅成は、さっきの会話で『弁当を作ってくる』とか言っていたはずだ。料理に対する心得は、ありそうである。
俺の方を向きながら、コクン……と小さく頷く魅成。
それに対し、砂彩は俺から目を逸らした。顔は、困ったようにして歪めている。
見空も、同じような顔をして頭を抱えている。
この反応は、二人とも料理の心得は全く無さそうだ。
「まあ……いいんじゃない? 料理くらいだったら、誰だってできて当たり前だしね」
声を上ずらせながら言う砂彩。明らかに強がって言っているのが分かる反応だ。
「そうですね……そのあたりが妥当でしょう……」
腕を組み、平静を装いながら言う見空。
だが……こめかみのあたりが引きつっている。動揺しているのがバレバレだ。
「それじゃあ、ルールを決めよう」
魅成が二人に向けて言う。
「料理の材料の資金は千円まで。ただ、お米や調味料なんかを買っていたら足りなくなっちゃうから各自持参可能。こんなところでどう?」
スラスラと言い出す魅成。明らかに料理に慣れているのが、言動からもすでに分かる。
「そうよね……お米は千円じゃ買えないわよね……」
砂彩は言う。
「そんなルールにして大丈夫ですか? うちで使っている調味料はすごいですよ」
見空が言う。調味料一つで、そこまで味が変わるものか……
これは完全に、始まる前から勝負が決まっているようなものだ。
砂彩と見空の二人にはかわいそうだが、俺の目論見は成功したようなものだろう。




