実は撮れていた心霊写真
始発の時間になり、全員で駅にまでやってきた。
見空は頬にくっきりと手の形をした赤あざをつくっている。
だが、表情は、痛みなどまったく苦にしていない感じで、満足そうな表情であった。
あの顔を見ると、ちょっとイラッとくるなぁ……
砂彩は服の襟を掴んで、赤い顔をしながら顔を伏せていた。今でも肩がフルフル震え、息もどことなく荒い。俺がその様子を確認すると、キッ……と俺の事を睨みつける。
なぜ、俺を恨む……
魅成は俺の手をギュッと握り、俺の事を見上げてきた。その様子を見ると、不覚にも心が癒されてしまう。
この四人で、電車に乗り込み、隣同士になって座席に座る。
とてつもなく疲れる夜であった。一晩をかけたドタバタ劇。その裏方をやった気分だ。皆のフォローをしたり、様子を確認して手助けに入ったり……
「そういえば、写真撮れたか……?」
俺は、思う。どうせ撮れてない。
心の底からそう思っているのだが、部長としてこの事を聞いておかないわけにはいかなかった。
「写真撮ってない」
「写真なんか撮っている暇なかったわよ」
「写真を撮るのを忘れていましたね」
それ見たことか……口々に言う三人。
俺だって写真なんか撮っていない……そう思いながらカメラのメモリーを検索した。
すると、一枚だけ撮った写真があった。俺がふざけて魅成の事を撮影した時の写真だ。
「ん……?」
俺が撮った写真には、何者かの手が、魅成の髪をつかんでいるところが写っていた。
横からそれをのぞき込んだ魅成。
「お兄ちゃん……」
髪をつかんでいるのは魅成の兄なのだろうか? 当然そんな保証なんか無い。
俺は魅成の顔を確認する。
魅成は、自分の髪をつかむ手を見て、小さく微笑んでいたのだ。
「心霊写真だよ。撮れてる」
魅成がそれを言うと、見空と砂彩が二人揃ってよってきた。
「何!? 見せて!」
俺が、携帯の写真を砂彩に見せると、すぐに反応を見せた。
「いやぁぁぁあ! 写ってる!?」
そう言い、カメラを投げ捨てた。それ、俺のカメラなんだけど……
それを急いで拾い上げた見空。
「ひゃぁぁああ! 本物です!」
またも、投げ捨てられる俺のカメラ。
「もう一度見せて……」
そう言い、砂彩がカメラを拾い上げようとしたところに、俺が素早くカメラを拾い上げた。
「ポンポン投げ捨てるんじゃない!」
とりあえず、心霊写真を撮るという目的は達成した。
そして部員達の絆も少しだけ深まったように思う。今日は、収穫ありの心霊スポットめぐりであった。




