虫を遠ざける
砂彩の様子を見ると、ライトに集ってきた虫を、必死に振り払っているところだった。
「来るなぁ! どっか行け!」
バタバタと手を振り乱して、虫を遠ざけようとする砂彩。
先にこの場にやってきた見空はというと……
「いいですね~。こういうのもかわいいですよ~」
ニヘラと笑いながら砂彩がジタバタしているのを眺めているだけであった。
こいつはダメだ……
「ライトから離れればいい」
遠巻きに見ている魅成が言う。
「やだぁ! 暗いの怖い!」
砂彩は、よっぽど暗い場所が嫌いなようであった。
俺は、魅成に視線を向けた。
魅成は砂彩にまで近寄り、砂彩の事をその場から離そうとする。だが、背の低く小柄な魅成では暴れる砂彩を押さえつける事はできない。ここまでは予想通り。
「見空……魅成をてつだってやってくれ……」
目を輝かせた見空は、思いっきり、砂彩に迫っていった。
「いやぁぁああ! 虫より怖いのがきたぁぁああ!」
砂彩が、さらにいっそう絶叫して声を上げる。
うん、まあそうだろう……
見空が砂彩にまで迫っていくと、一緒になって砂彩の事を押さえつける魅成を押しのけ、砂彩を木々の中に連れ込んでいった。
「こらぁ! 胸を触るなぁ!」
「うへへへ……お嬢ちゃん。誰も助けにきやしねぇよお」
木々の間からそのような声が聞こえてくる。
あれは、後でなんとかしよう……
俺は、ライトのスイッチを切り、虫を追い払っていった。




