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映し出されたのは、一心不乱に祈りを捧げる外国人の少女だった。
余程叶えたい願いでもあるのか、組んでいる手の指先は色を無くし、伏せられたまつ毛が時折震えている。
言葉を紡ぎ続けているが、音声が無いため、何を言っているのかは分からない。
やがて光が収束していき、映像が途切れた。
なんだったのだろう?
恐る恐る拾い上げた腕輪を翳して、窓の外を見た。
外は夜。
街灯の光が部屋に差し込み、腕輪の銀細工がキラキラと光っている。
「どうしたの?何があったの?」
腕輪に話しかけてみるが、当然、返答はない。
自分でも、どこか馬鹿馬鹿しいとは思っているが、話しかけるのをやめられなかった。
「私に伝えたいことがあるの?」
問いを重ねる。
「私、今日から暇なんだよね。力になろっか?できることって言っても、事務作業ぐらいなんだけど…。」
自嘲気味に笑って、腕輪の銀細工にそっと唇を寄せた。
≪―…あなたに力を貸すわ≫
そう呟くと同時に訪れたのは光の洪水。歪む音。
まぶしさに目を固く閉じ、耳を塞いだ。
再び静寂が戻った部屋には、誰もいなかった。