表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/47

三英雄「黒騎士」。そして……

未完成品です。

活動報告もお読みください。

 某年某月某日。この日、VRMMORPG「ムラクモの軌跡」は7周年記念アップデートまであと3日を切っていた。

 そしてムラクモの軌跡第1ワールドのランカー達において、ムラクモの軌跡サービス停止までで2番目に白熱したと言われる大激戦が行われようとしていた。





―――グロス:準備できました、いつでも行けますよー

―――ルマリア:私も大丈夫です

―――ノイ:じゃあ予定通り30分後にギャラティの北門で

―――アレフィオ:頑張りましょう\(*⌒0⌒)♪

―――ノイ:(無言の殴打)






「『神技:ラディスの光槍』!」

『……!』


 隙を見て放たれた光の槍が突き刺さるも、意に介さず戦闘を続ける騎士。しかしそのHPバーは僅かであり、今まで積み重ねてきたダメージが実を結ぼうとしている。

 度重なるアプデでの弱体化、神や魔王ですら倒しきれる程のPS(プレイヤースキル)の上昇、地道なレベル上げ。たくさんの要因を重ねに重ね、今プレイヤー達は「最強」の証を乗り越えようとしていた。


「『夜叉秘奥技:衆徳』!」

「『リバースフレア』!」

『……』


 磨き上げられた技が、練り込まれた魔法が、確実に黒騎士を追い詰める。そして戦闘開始から25分、遂に最後の時が訪れる。


「これで最後だ、『神技:マリエルの神霊剣』!」

「『エナジードライブ』!」

『……!』


 空中でグロスとルマリアの二人と武器を打ち合わせていた黒騎士が落下すると同時に、着地点に放たれた二筋の攻撃魔法。もはや避けられる筈もなく、予定調和のように直撃したそれによって、今ここに最後の三英雄「黒騎士」の撃破が完了した。


―――敵との戦闘に勝利しました。0EXPと0Gを手に入れました。全員に「宝箱(EX)」「いにしえの守護石」「黒騎士の核」がドロップしました。このアイテムは自動的にプレイヤー倉庫へと送られます。

「っはぁーーー……終わったぁ……」

「腰抜けて立てないですよもう……」

「黒騎士を、倒せたんですね。私達は……」


 片膝と左の手のひらを地面に着いて動かない黒騎士を前に残ったのは、アレフィオノイグロスルマリアという攻略最前線組(いつも)の4人と、最上位ヒーラーである教皇(プリーステス)セレナ、そして最上位ガーダーである鉄壁(アイアンクラッド)ジェラルド。元は30人での連合パーティだったのが、6人まで減らされている。

 そしてその6人も疲労困憊で、それぞれが座り込み、もしくは武器を支えになんとか立っているような状態である。


「あー……駄目だ、疲れたのと感動で言葉が出てこないわ」

「で、このあとはどうなるんだろう? 三英雄全討伐したけど」

「とりあえずは来週のアプデ待ちだな、鬼が出るか蛇が出るかだが」

「それよりも恐ろしいものを今討伐しましたけどね」

「違いない!」


 軽口を叩き合う6人。しかし次に入ったアナウンスに、一気に緊張状態となる。


ー「三英雄」全てが討伐されたため、新たなワールドイベント「地上最後の英雄」が開始されます。それと同時に、新たなレイドボスモンスター「???」が出現します。

「「「!?」」」

「はぁッ!?」


 アナウンスが流れると同時に、倒したはずの黒騎士が立ち上がる。驚愕し動けないメンバー達の前で、漆黒の鎧に皹が入った。

 ピシリピシリと皹を大きくしていく黒騎士を前に警戒を強くする6人。如何なる攻撃も耐え続けた鎧兜は、目の前であっさりと砕け散る。

 まず砕けた兜から、どこにその量をしまっていたのか、地面につくほどの白銀が溢れ出す。

 次に砕けた手甲からは、白魚のように繊細な指先。胸甲からはふくよかな胸元とそれを隠す美麗な装束。脚甲からはすらりと伸びる優美な足。

 身体を起こし顔を上げて真っ直ぐこちらを見据えるのは、恐らくはこの「ムラクモの軌跡」内で最も有名なプレイヤー。




「「「ディドさん!?」」」

「久しぶりー」




 そこにいたのは紛れもなく、姿を消して久しいディドその人。その出で立ちは過去PVPフリーにて初お目見えしたユニーク防具そのまま。そしてその身には赤いオーラを纏っており、右手には変わらず黒騎士の使っていた剣を握っている。


「ああ安心してよ、まだここで戦う気は無いから」

「いやそうじゃなくて……えぇと……」


 あまりにも予想外のタイミングでの登場に動揺するランカー達と、軽く笑いながら立つだけのディド。やがて動揺を押さえつけたアレフィオが口を開く。


「とりあえず、お久しぶりです。今まで何をしてたんですか?」

「ずっと黒騎士やってたよ。ちょいちょいイベントボスとしても参加してたしね」


 ここに来てまさかの「ボスに中の人がいた」宣言である。そういうメタな事は言っていいのかとここにいるディド以外の全員が思ったが、特に周囲に何かあったりするわけではなく、この程度を話すのは運営も折り込み済みなのだろう。


「まあ一応開発に関わってる一人だからあんまり詳しくは言えないんだけどね」

「……で、ここにいて、さっき流れたアナウンスからすると……」



「まぁお察しの通り。これが正真正銘第一ワールド最後のワールドボス……「最後の英雄ディド」だよ。よろしく」



 ディドの背から突然に放たれる七色のオーラ。レイドボスの特徴の現出に、自然と緊張が走る。


「……これは今までで一番の強敵ですわぁ」

「つか洒落にならんってこれぇ!」


 戦闘態勢を取るランカー達だが、既に強敵との一戦を終えたあと、しかも撃破からここまで全てイベント扱いの為、一切の回復ができていない。無意識に手足は震え、生唾を飲み込む―――システムとして実装されていないため、もし現実ならそうなっていただろう、という意味でだが。


「さあ行こう! 天地を砕け、我が拳よ!」


―――”最後の英雄 ディド”が出現した!

―――”最後の英雄 ディド”背水の陣EXが発動!

―――”最後の英雄 ディド”決死EXが発動!

―――”最後の英雄 ディド”死神の悪運EXが発動!

―――”最後の英雄 ディド”逆襲EXが発動!

―――”最後の英雄 ディド”死に際の底力EXが発動!


「はぁっ!?」

「遅いっ!」


―――”最後の英雄 ディド”の四死拳が発動!

―――ジェラルドに29800ダメージ

―――ジェラルドは倒れた……。死体消滅まであと00:30

―――セレナに14920ダメージ

―――セレナは倒れた……。死体消滅まであと00:30

―――ノイに24080ダメージ

―――ノイは倒れた……。死体消滅まであと00:30

―――アレフィオに19940ダメージ

―――アレフィオは倒れた……。死体消滅まであと00:30


 剣を投げ捨てたディドの姿がぶれると同時に、戦闘はすでに終わっていた。

 戦闘開始から5秒も経たず、グロスとルマリアの二人を除く四人が消滅する。それは間違いなく撃破された時のエフェクトと同じもので、消えるまで二人は一歩も動くことができなかった。


「ん、な……!」

「なんですか、その出鱈目な……!」


 何をしたかはわかる。しかし動きはどうにかして影を追えたかどうか、といったところでしかなく、ましてや攻撃を加えるなどと夢であった。


「まあ、また後でどこかしらに顔を出すよ。久しぶりに話そう」

「それって」

「とりあえず寝てなさい」


―――”最後の英雄 ディド”の弐似拳が発動!

―――グロスに22222ダメージ

―――グロスに22222ダメージ

―――グロスは倒れた……。死体消滅まであと00:30

―――ルマリアに22222ダメージ

―――ルマリアに22222ダメージ

―――ルマリアは倒れた……。死体消滅まであと00:30

―――パーティが全滅しました。レイドボスとの戦闘が終了しました。







ムラクモの軌跡攻略スレ Part2067


158.名無しの夜叉さん

なる

試してみる、サンクス


159.名無しの霊騎士さん

あ~ソロ姫神辛すぎるんじゃ~


160.名無しの偉大勇者さん

【速報】レイドボス「ディド」出現【絶望】


161.名無しの歌姫さん

>>159はマゾ、はっきりわかんだね


162.名無しの古代魔導師さん

!?


163.名無しの竜魂闘士さん

!?


178.名無しの解放者さん

え、待って待って

脳が理解を拒否してる


179.名無しの竜魂闘士さん

マジで言ってんの? バカなの?


180.名無しの救世騎士さん

ファーwww


181.名無しの偉大勇者さん

戦闘時間は10秒にも満たないんでステータスやスキルその他はまだほとど不明で検証もしてない

とりあえずDEF6000超えの城塞騎士が一撃で3万食らって落とされるってくらいかな


182.名無しの大魔導士さん

ディドさん開発の人なんだっけ


183.名無しの真竜騎士さん

ディドさん行方不明になったと思ったら、そういうことだったのね


184.名無しの城塞騎士さん

ルドガーさん即死かよワロタ


185.名無しの怪盗さん

つか3万って……0一個おかしいだろJK

単発3000ダメでも大分頭悪いけど


186.名無しの禁術士さん

つかなんで今さらディドさん……


187.【運営】ディド

はーいこんにちわー

「ディド」の打倒を楽しみにしてるから、全力で挑んできてね


188.名無しの貴公子さん


189.名無しの夜叉さん


190.名無しの救世騎士さん


191.名無しの大魔導師さん

おい





おい


192.名無しの怪盗さん

ディドさんんんんんんん!?


193.名無しの解放者さん

いやいやいやいやいや


194.名無しの竜魂闘士さん

待って待ってwww


195.名無しの霊騎士さん

えぇ……(困惑)




289.名無しの偉大勇者さん

とりあえず情報整理します

・ディドさんは第一ワールド最後のワールドボスと明言していたので、おそらく第一ワールドのストーリークエストは終了

・使用スキルはアリーナトップ時代と比べ大きく変わり、ほぼエネミー専用スキルに変更されている?

判明PS5、スキル詳細はすべて憶測を含む

背水の陣EX(戦闘開始時残HPが最大HPの??%になり、攻撃力が?倍になる)

決死EX(残HPに比例してステータス上昇)

死神の悪運EX(残HPに比例して避ダメージ低下、与被クリティカルダメージ上昇)

逆襲EX(残HPに比例して被ダメージと与ダメージ上昇)

死に際の底力EX(残HPに比例してスキルでの与ダメージ上昇)

判明AS2

四死拳:詳細不明、おそらくは4人をターゲットした範囲選択攻撃、一番DEFの高いジェラルドが被ダメージが一番大きかったので、何かしらのダメージ上昇条件あり

弐似拳:詳細不明、おそらくは2人をターゲットした範囲選択の複数回攻撃、ダメージは22222×2で固定と思われる

・上記スキル構成から、ディドは必ず一度の戦闘で撃破しなければならない


情報が少ないですが、現状こんな感じでしょうか

全体的にアリーナ時代を彷彿とさせるスキル群なので、陽炎、根性、ジャンプ辺りも持っていると思います


290.名無しの星術師さん

無理ゲーかな?


291.名無しの闘神さん

無理ゲーかな?


292.名無しの神聖刻印騎士さん

ええ……


293.名無しのトリックスターさん

これは……


294.名無しの法王さん

どないせえと


295.名無しの大賢者さん

まともに戦闘してないとなると何も言えないなぁ

運営パワーを引っ提げて自重をやめたディドさん相手にまともな闘いができるかどうかって話だが


296.名無しの霊騎士さん

ディドさん物理攻撃主体なら霊騎士ワンチャンあります……?(震え声)


297.名無しの夜叉さん

ブレイヤーの最大HPがやっとこ15000ってとこに22222×2の固定とかアホかと

最初から即死効果にしとけよ(即死耐性を100%にしながら)


298.名無しの海賊王さん

ディドについての運営情報来たぞ、一部省いて載せる


・ディドの出現によりワールドクエストは完全終了、今後第1ワールドでワールドクエストが更新されることはない

・以降はサイドストーリーと各種イベントがメインとなり、今までと同じように別ワールドへ一部データをコピーした状態で引き継ぎ可能

・ディドとの戦闘の参戦メンバーは最大6人まで

・ディドとの戦闘発動のトリガーとして、「黒騎士の核」を1つ消費する必要あり

・「黒騎士の核」はランダムで出現する6人レイドボス「黒騎士の影」の撃破時ランダムドロップ、ドロップ率は参戦メンバーの数によって変動、メンバーが少ないほどドロップ率は上がり、2人以下で挑んだ場合全員に確定ドロップ

・「黒騎士の影」を動かすのはNPC、かつ形態はバトル開始時にランダムで決定される

・「黒騎士の影」が低確率でドロップする宝箱から出現する装備品、もしくは「黒騎士の核を使用して作成した装備品」を装備した数だけ、戦闘時ディドが弱体化(パーティメンバー全員合わせて10個で頭打ち)


299.

はいはい対策装備集めですね


300.

まあそうよね


301.

ここに来て唐突にクソ要素を投げ込んでくるのほんと草生える


302.

編成どうしたらいいんだろ

黒騎士の影はNPCならちゃんとヘイト管理で動くだろうしG2A2H2でいいとして、ディドさん相手にヘイト通用するの?


303.名無しの大海賊王さん

あとディドの出現と第一ワールド完結に際してコメントが出てたが、運営としては

・本来の想定では黒騎士で物語は完結し、黒騎士の影がエンドコンテンツの1つとなる予定だった

・しかし一部のランカー内で「またディドと戦いたい」という意見が多く見られたため、会議を重ねた結果「最後の英雄 ディド」の実装に至った

・現状「最後の英雄 ディド」に関しては倒されることを想定していない

って感じか


304.

肉入りだしヘイトは通用しないんじゃないかな

またガーダーが死んでおられるぞ


305.

またディドと戦いたいとは言ったがこんなものは望んでいない


306.

どうしてそうなった……


307.

結論が斜め上すぎて草www


308.

倒 さ れ る こ と を 想 定 し て い な い


309.

なんちゅうパワーワード


310.

違うそうじゃない……


311.

頭のネジ何本飛ばしたらそういう発想になるの?


312.

>>307

草に草生やすな


313.

まだまだワールド1で遊べそうで何よりですね(白目)


314.

まずは黒騎士狩りかぁ……しんどい……


315.

肉無しで動きがどうなってるか次第だなぁ

ちゃんとNPCの動きしてくれるなら、まあ6人ならなんとかなるでしょ


316.

2人で挑む場合は考慮しなくていいか

一部の変態以外無理だろうし、やる人は頑張ってって感じで



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] だからヤケクソ調整はヤメロォ!w とは言えディドはディドな上にスキル構成的にまともに攻撃がヒットすれば目に見えて体力削れそうな感じはありますが
[一言] お帰りなさい。 続きが読めて凄くうれしいです。
[良い点] 最終更新との事ですが、このぶっとび具合が好きですw [気になる点] 某はちくま同人RPGとかにも固定ダメ>最大HPとか、某悪魔呼んじゃうSRPGだと、防御しないとHPMP999ダメとかあり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ