第14回PVP決勝トーナメント一回戦-前-。
前編です。
ついに出る新衣装と説明回。
300万アクセス60万ユニーク達成。本当にありがとうございます。
『さぁて……いよいよもってお待たせいたしました! 只今より、PVP決勝トーナメントレベルフリー部門を開始します!』
これまでの歓声よりも更に盛り上がる観客。今ここでは、新たな伝説を見ようと大勢の観客が押し寄せていた。
伝説、と言ったのは比喩でもなんでもなく、レベルフリーの優勝者には通常貰える景品と称号の他に、コロシアム前の石碑に名が刻まれる。
ここに名前が乗っているのはつまり、一度は文字通り「最強」の栄光を勝ち取ったと同じであり、その誰もが現在も一線級のランカープレイヤーとして名を馳せている。
『さあまずはトーナメント表の発表といこうか!』
『運命を決める対戦カードは……こちらになります』
一回戦
ディド VS アレフィオ
アクタ VS Shakatura
ノイ VS くも
ハルト VS アルター
対戦カードが発表された瞬間、動揺のざわめきが広がった。
1回戦第一試合から優勝候補と台風の目の激突、現在英雄技を使えるプレイヤーが一回戦で半分になる。
『これはまた面白い対戦カードになったなぁ』
『最注目カードは……まあ言わずもがな、ですね。こればっかりは流石に』
『どっちが勝つにしろ、優勝候補が一人消える訳だからなぁ。まあ個人的な見解から言えば……まだアレフィオの方が有利かね』
『ほう、何故ですか?』
『それはまあ―――』
司会の二人による雑談が行われる中、決勝トーナメント参加プレイヤーは一つの控室に集まっていた。
その中でディドは、興味なさ気にトーナメント表を見つめつつ椅子に座っていた。そこに近づく人影が一つ。
「こんにちわ、ディドさん」
「ドーモ。アレフィオ=サン。ディドです」
「何故そこでネタを挟みますか……」
話しかけてきたのは次のディドの対戦相手であるアレフィオ。試合開始前だからかまだラフな恰好である。
「一応言っておきますが、本気で行かせていただきます。ディドさんも本気で来て下さい」
「……まあ、本気では行きますよ。全力は無理ですけども」
「え……ああ、そういえばそうか……」
その言葉を聞いて頬が引き攣るが、すぐに理由を思い出す。
「縛りがありますもんね」
「アクティブスキル5個までだから、そこだけ了承してくれればいいですよー」
「……残念。まあ、それなら自分もアクティブ5個までしか使わないってことで」
「いや別にそこまでしなくても……」
「ディドさん」
ディドの言葉を遮って、アレフィオが言う。
「自分はディドさんと、対等に戦いたいんです。自己満足ですが、それで勝たなきゃ意味が無いんです」
「……騎士道乙」
「言わないでくださいよ……でも、一人のプレイヤーとしてディドさんに勝ちたいと思ってるのは本当ですし、そうしますからね」
肩を落としつつも、それが当然というように断言するアレフィオを見て、ディドはこっそりと眉を潜める。
ディドからすればこの考えは相容れない。そもそもディドは「ルール内でならズルしても勝てばOK」という考え方であり、こういった騎士道精神は持ち合わせていない。
「……まあ、とりあえずよろしく」
「はい、よろしくお願いします。それでは」
ニッコリと笑顔を浮かべ、自分の控室へと戻っていくアレフィオ。
その後ろ姿を見送り、またモニターを見つめはじめ、ふと思いついたようにメニューを呼び出した。
『さて、間もなく開始時間間近! そろそろ選手入場だ、全員刮目して見やがれ!』
『まずは天の側より舞い降りる使者、悪に裁きを下す光の裁定者!』
『『聖なる統率者』、アレフィオーーー!』
一方のゲートが開き、ゲート両端から炎が上がる。その中を悠々と歩いて来るのは一人の男。
身を包むのは、現状最高レベルの汎用光属性防具である「大天使の聖鎧」シリーズ。各所に光の魔法陣が刻まれたその鎧は、中装鎧ながら重装鎧並の防御・魔法防御力を獲得し、妨害系魔法と状態異常をある程度まで遮断する効果を持つ。
右手に握るは「聖剣クァルファルス」。過去に存在した聖人の名を冠するその剣は、最高クラスの光属性と物理攻撃力を持つ代わりに、聖刻印騎士専用武器となっている。
左手に携えるは「聖盾フィシオ」。同じく過去の聖人の名を冠する、物魔共に高い防御力と低いながらも各種属性防御を併せ持つ軽盾。ステータスだけでいえば重盾に負けるが、重量が軽いために装備者を選ばない。
そして首元に光る「聖光神殿の首飾り」は光属性の攻撃の威力を上昇させるアクセサリで、結果通常攻撃のダメージも高まっている。
まさに本気。PVPですらあまり持ち出すことの無い、本気中の本気装備である。
『いやぁー、流石の貫禄だなー』
『本気も本気ですね。この装備は防衛線以来ですよね?』
「そうですね。やはり相手が相手ですから、こちらも本気で行かなければ負けてしまうかもですし」
『おーっと! 天下のアレフィオさんからまさかの宣言! やはり台風の目になるのか!』
『さあそれでは、そのもう一人の選手をお呼びしましょうか』
アレフィオが発した言葉に、更に会場がざわつく。本気でいかなければ負ける、それはつまり、ディドには自分と同じくらいの強さがあると認めたということ。
本当の実力は未だ知れないディドに、否が応でも期待が高まっていく。
『大地を駆ける美しき風、華麗なる舞踏をその目に焼き付けろ!』
『『優美に舞う双掌』、ディド!』
もう片方のゲートが開いた瞬間観客席が沸き上がり、 そして3秒の後に静まり返った。
ディドが纏っていたのはいつもの着物+ボディスーツという出で立ちではない。ポニーテールにしていた髪はショートカットに切られ、ほぼ隠れていた白い肌は日の元に晒されている。
上半身は下乳も合わせて覆い隠すコルセットタイプの紺色の布防具であるが、肩と腹が露出しており見た目はほとんど防御力はなさそうに見える。
下半身は上半身の防具と前2箇所後ろ2箇所のベルトで繋がれており、チャイナドレスのように深いスリットの入った……というよりは、足首まである長い前掛け後ろ掛けと言ったほうが正しいか。加えて左側には天使の羽根、右側には悪魔の羽根を模した膝下スカートが風に舞う。
足は太ももの真ん中から伸びる紺色のハイソックスに真っ黒のローヒール。余計な装飾の無いシンプルなものだが、それが逆に得体の知れない魅力を引き出している。
全体的に暗めの配色だが、前掛けや上半身の防具の所々に入る紫と金色の装飾によって華美すぎない程度に派手さを演出している。
なんにせよ、エロい。非常にエロい。全体で見れば(一応)露出過多とは言えないが、だからこそ上半身のボディラインとちらりと覗く生足が非常にそそる。
『これはまた……』
『鼻の下伸びてますよ。あんな防具は見たことありませんが……ユニーク防具でしょうか。でもディドさんが行っているのはまだ南ルートだけだから、天使系と悪魔系の素材は手に入らないと思うんですが……』
冷静な解説を行うとほぼ同時に、観客席からアレフィオの時の倍はあろうかという巨大な歓声が響き渡った。なんとも現金な観客である。
「えっと……その装備は、どうしたんですか?」
「スレでも言ってた通り、新装備新調したってだけです」
「いや、そうじゃなくてですね?」
未だ鳴り響く歓声に顔を顰めつつ答えたディドに苦笑しながらツッコミを返す。確かに作るとは言っていたが、まさかすぎる服装に顔の引きつりを抑えられない。そしてそんな服を着て平然としているディドにも何とも言いようのない気持ちになってくる。
しかしそれでもアレフィオは、久々に対する強敵に心を抑えられないでいた。
『えーと……まあ、でもまあ、特に問題はないし、早々に試合を始めてしまったほうがいいのかね』
『なんかもう観客がうるさいですし、早く始めてしまいましょう』
『だなぁ……それじゃあ二人とも所定の位置に付いてくれ!』
司会の言葉とともに二人はお互いに背を向け歩き出し、同時に止まり振り返り構える。騒いでいた観客もそこでようやく落ち着きを取り戻し、試合開始前の緊張感が闘技場から流れ出る。
「アレフィオさん」
「はい?」
「私、今回AS10種使わせてもらいます。許可は取りましたから」
「っ、はい!」
始まる直前に呟いたディドの言葉にアレフィオが破顔する。それを見たディドもつられて微笑し、すぐにお互いに顔を引き締める。
『さあてそれじゃあ世紀の一戦の開幕だ、一瞬も目を離すなよ!』
『お互い用意はよろしいでしょうか?』
「いつでも」
「どうぞ」
『それじゃあ皆行くぞ! せーのぉ!』
掛け声と同時に二つの影は矢のように飛び、フィールド中央でぶつかり合った。
「ふっ!」
「せあっ!」
アレフィオが振った聖剣は左手で掴み取られ、ディドが振った右腕は盾で受け止められる。受け止めた右腕を前方に強く押すことで相手のバランスを崩し拘束から逃れたアレフィオは、そのまま一歩踏み込んで切り払う。
押された反動を利用してディドは回転しつつ剣の腹に肘鉄を打ち込んで切り払いを反らし、同時に腹部への左ストレート。だがスピードが十分でなかったためにダメージは微小。
反撃の切り上げを身を反らすことで何とかかわし、そのままバク転1回で距離を取る。その間に態勢を整えたアレフィオは着地時の脚を狙って剣を突き出すも、空中で体を丸める事でかわされ、空を切った聖剣を掌程で地面に縫い付けられる。
驚愕に目を見開くアレフィオの顔面に右足を繰り出すが、間に差し込まれた盾によってダメージは無く、聖剣を手放すことによって反動により距離を取る。
お互いにダメージはほぼ無いために、仕切り直しといったところか。
「……流石」
「それはどうも。剣離しちゃっていいの?」
「はい……『ウェポンチェンジ』」
ディドの足下の聖剣が消え、アレフィオの右手に新たな剣が現れる。
赤熱の刀身からは陽炎が立ち上り、柄には竜の鱗が張り巡らされている。
「その意匠はまさか……」
「赤竜剣バルファー。ディドさんのおかげで完成しました」
「なるほどね……」
ディドと一緒に行った赤竜乱獲。その際に拾った火竜素材をふんだんに使い完成した、現環境最強の火属性を持つ片手剣。加えて炎症500という最高レベルの追加効果がついている。
片手剣とは思えないほど大量の素材を必要とする代わりに、その性能はまさに破格の一言。
「多分その防具、光と闇耐性ですよね。なら聖剣よりもこっちが通るでしょう」
「さあね」
はぐらかすようなその答えににこりと微笑みで返すと、再度ディドに向けて駆け出した。
夏なので露出を増やしてみました(にっこり)
衣装は自分が一番好きなキャラクターのものを参考に作られています。わかる人にはわかると思います。