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八話

呆れ交じりにため息をつくセイレンをしり目に、ウィルセルは依頼の詳細を語り始めた。

先日、新たに祝福を受けた者がいた。その者は庶民の出らしく、祝福の発現から時間がたっていない。つまり、教会の受け入れ準備ができていない。祝福を受けるものは、数年に一人いるかいないかといったところで、そう多くない。そして、発現以降の扱いが特殊なものになるので準備に時間がかかる。貴族の子だった場合、その家で保護しておけるのだが庶民の場合そうもいかない。もし祝福が暴走した場合、貴族と違って魔法の使い方を学んでいない庶民は対処できない。セイレンは元々教会の管理下にある孤児院にいたため手続きはスムーズだったがそんなケースはまれである。


「そこで受け入れ準備が整うまでの一週、君たちに護衛をお願いしたいんだ」


「騎士を派遣はできないのか?」


「できればいいんだけど…祝福持ちに関して王家が表立ってかかわるのを教会のおじいさま方が許すと思うかい?」


「…許さねぇだろうな。第一、俺がお前の下にいるのだって特例だからな」


「そう。本来なら、必要な教育の済んだ祝福持ちは制約の魔道具を埋め込まれ、普通の暮らしに戻ることが多い。だから今回も将来的にはそうなると思うんだ。だからこそ、王国の騎士が四六時中庶民に張り付いていたらおかしいだろう?」


「それはまぁ、な」


庶民の世界は噂話があっという間に広がる。町では見慣れない騎士がうろついていたらすぐに何かあったのではないかと勘繰られるだろう。主人が罪を犯したのか、妻が貴族と不貞を働いたのか、はたまた子が本当は王族の血筋だとか。その点便利屋は町に馴染んでいて、何か動いていたとしても変な依頼を受けたのだろうと思われる程度だ。しかし。


「親は…その、親はどうしたいんだ」


ウィルセルは少し目を見開いて、ふっと笑った。


「もし教育が終われば、また一緒に暮らしたいそうだ。幸い、今回の祝福は君ほど強くない。ただ、本人が少しませているらしく教会の担当者がぼやいていた。任せられるか?」


「はいはい。あんたのための組織なんだから命令ひとつで動くっつーの」


「いやだな、私たちは友人だろう。友人に命令は、なるべくしたくない」


「そういうならリュウのやつにも会えばいいんじゃないか」


「うーん、彼は当たり障りない反応しかしないからつまらないんだよ」


しない、と言い切らないところが彼らしい。命令と依頼を使いこなして信頼を示してくるのが、王太子というしがらみだらけの立場なりの友情なのだろう。有能なのに不器用な友人にため息を贈った。

王城を後にしたセイレンは、今回の依頼書を眺めながら町へ降りていく。そこには件の子供のことが記載されていた。名前はフィー。庶民のため姓は無いようだった。性別は女、歳は10。


「この年頃のガキが一番めんどくせぇんだよなぁ」


空を見上げると、昔よりもずいぶんと鮮やかに映る空が見えた。

あの頃、祝福を受ける前。セイレンには親の記憶などなかった。覚えている限りの記憶は孤児院でのもので、無邪気に騒ぐ子供たちを冷えた目で見つめては色のない世界で虚しさを覚えた。そんな少年だったからこそ、呼び寄せてしまったのだろう。あの日、鈍色の空の日に、孤児院を抜け出して海辺に来ていた。岩の上から水面に映る濁った自分の瞳を眺めていた。ふと、歌が聞こえる。それは微かなはずなのに異様に耳に届いて、顔を上げようとした瞬間、水面が揺れる。波紋とともに泡が浮かんできて。

聞いたこともない言語なのに、わかる。

『おまえもなかまなのだろう?』

伸びてきたてらてらと光る腕を最後に、気を失った。

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