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四話

国境沿いの道は、商人が行き交う両国の貿易にとっても放っておけない地点だった。賊は、馬車が通る大きな道から外れた、長年使われていなかった小屋を根城にしているとのこと。数はそこまで多く無いようで、小者が集まった程度らしい。ならば国が動けばいいと言いたいところではあるが、そうもいかない。国境への兵の派遣となるといろいろと絡んでくる。隣国との関係は悪くないが、兵の派遣となると自国の貴族たちがあれやこれやと騒ぎ出す。それを抑えてやっと兵を派遣したころには、民の暮らしに多くの影響を与えた後になるだろう。だからこそ、どこぞの便利屋が勝手にやったこととしたほうが都合がいい。


「今回はニジヤとリュウは後方支援だ。どうせ交戦することになるだろうから俺とアシレで主に対応する。いいな」


「異議なし」


「任せてくださいボス!僕、活躍して見せます!」


「りょーかいっす」


「じゃあ、今日はそれぞれ雑務。解散」


セイレンが手を二回、叩くと、それぞれの業務へと移る。セイレンは依頼の手紙の数々とにらめっこ。アシレは事務所に置いてあった作業着に着替えて草むしりの依頼へ向かった。ニジヤは浮気調査の報告書を作成している。この浮気調査もニジヤにとって初めての経験ではない。広い王都、そこに住まうのが貴族となれば浮気だなんだも多くなる。実際、ニジヤも伯爵家の四男で、母は後妻だった。しかし、血のつながらない上二人の兄も優しく接してくれた。母は兄たちを虐げるような人ではなかったし、それなりにうまくやっていた。父である伯爵は、あまり息子たちに興味が無いようで、四人もいるなら一人くらい女のほうがよかったなどと吐き捨てたこともあったが今となっては思い出と呼べるだろう。

つまるところ、貴族のどろどろには慣れていた。市井の人々からの依頼もあるが、大概にして男が悪いのでもっと反省すべきだと、ペンを滑らせながらニジヤは考えた。

リュウは便利屋の会計資料の整理をしていた。置かれた本棚に増えていくファイリングされた紙たちに、感慨を覚える。元々はあの人が気まぐれで作った、セイレンの居場所。

その一部に、自分がなれていることがくすぐったく、嬉しい。出会った当初、衝撃を覚えた。すべてをあきらめたその瞳に。しかし今はどうだろう。彼の瞳に今映っているのは、たくさんの依頼の手紙だ。きっと、きっと壊させはしない。大切な場所。






「で、今回の作戦は、ニジヤが事前に調べた侵入箇所からアシレが入り、内部からぶっ潰す。俺が出入口を張って、来た人間をぼこす。残りは周囲の警戒と支援、以上。質問は」


「ないです!」


「救急道具もって待機しとくね」


「あ、セイレンさん、今回からは動物を介さなくても連絡取れますよ」


「なんだこれ。ピアス?」


「前に話した魔道具っすよ。やっと形になったんで、お渡ししときます。その耳飾りが受信機で、こっちが送信機になってて二つセットでつけるんですけど、送信機側が魔力を込めて話すと受信機側に聞こえるっていう…改造に苦労したんすよー」


「それで連日ひでぇ隈こさえてたのか」


「三時間は寝てたんで大丈夫っす」


にかー、と親指を立てるニジヤは達成感満載の顔をしていた。


「そんじゃ、いくか」


「そうだね」


「おいニジヤ!ボスの役に立つのはいいけど足引っ張んなよ!」


「ちょ、やめてアシレさん頭に響く…」

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