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九話

「と、いうわけで護衛任務なんだが」


「祝福持ちが現れるなんて何年ぶりですかね」


「存在だけは公表されるからな。俺以降は一人か二人いたような気もするが…」


「で、ガキのお世話ですか?ボス」


「まぁそういうなよ。ただ、今回は急な話で表の仕事もあるから、ニジヤに単独で当たってほしい」


帰った後の新しい魔道具開発のことで頭がいっぱいだったニジヤは、突然出てきた自分の名前に心底驚いた様子で返事をした。


「え!俺っすか!?」


「力手が欲しい依頼が多いんだよ。戦闘が苦手なのはわかってるが、まだ公表もされていない祝福持ちなんてそうそう狙われない。だから、頼む」


「わかったっす…」


渋々ながらも了承の返答をする。町の困りごとは確かに、男手の足りない職場やご婦人たちでは難しい家の修繕などが多かった。それはニジヤが苦手なタイプの依頼で、たいていセイレンやアシレが赴くことになる。リュウはセイレンの補佐的な業務が主なので、いつも事務所に在中している。


「ちなみに、どんな子なんすか?」


「…教会のやつによれば、ませてるらしい」


「ませてるガキなんてろくなもんじゃないですよ」


「君だってそうだったんじゃないの?」


「僕はボスと会う日のために精神の成長が他より速かっただけですから!」


「ふふ、でも本当に私たちでいいのかな。確か女の子だったよね?保護対象」


「女の子なんですか!?何話せばいいんだ、ただでさえ子供となんて接する機会なかったのに」


「今回の依頼は話し相手じゃなくて護衛なんだからそんな気にするな」


「わかりました…」


「朝礼終わり。ニジヤは今から一週間、日のあるうちは護衛を頼む。夜が更けたら内側から魔道具を使ってもらう手筈になってる」


「ずっと魔道具じゃダメなんすか?」


「発動中は出入りができなくなるし、臨機応変な対応ができないだろ?」


しょぼくれながらもニジヤは必要な荷物を移動用のカバンに入れると、依頼書に書かれた家へと向かった。


「いってきます」


「いってこい、気をつけてな」


気が重いまま王都のはずれにある便利屋から少し中心部へ歩みを進めた。ニジヤは子供が苦手だった。大人でさえ何考えているのかわからないのに、子供なんてもっとわからない。気が向かなければ泣くし、物言わぬ魔道具を相手にしているときのほうがずっと楽しい。そんなニジヤでも、便利屋には居心地の良さを感じていた。初めのうちは王太子であるウィルセルに紹介された働き口でしかなくて、変な人ばかりだと思っていた。それでも働いていくうちに、それぞれの懐の深さや頼りになる一面に、心を許していった。もともと学園時代は友人という友人もおらず、勉学と魔法にのめりこんでいった。その中で出会ったのがいまだ未知な部分もある現象としての魔法と理論を組み合わせた魔道具だった。前から得意としていたテイム系の魔法と組み合わせることで情報戦において学年一となったころ、ウィルセルに声をかけられた。今でもあの時の緊張を覚えている。学園でも変人だと言われていた能力を、生かせる場所がある、と。

今となっては感謝しかない。自分の変な部分もまとめて受け入れてくれる便利屋の人たちが、ニジヤは好きだった。

なんて考えを巡らせていると、地図に書かれていた家に着いた。ちょうど家から出てきた女性に声をかける。


「あ、ご依頼者さんっすか?」


「え?あ、もしかして教会の…」


「そうっす。便利屋のニジヤです」


「こんな若い方だなんて思わなくて…あ、どうぞ、入ってください」


招かれた家の中は一般的なお宅で、家の真ん中に置かれたテーブルに頬杖をついた少女が座っていた。今回の護衛対象はこの子供だ。


「フウ、お兄さんがフウを守ってくれる方ですって」


「ふぅん、なんか冴えないわね。本当に守れるの?」


「こら!フウ!すみません、うちの子が」


「あはは、だ、大丈夫ですよ」


出会ってそうそうこれとは、なかなか大変な依頼になりそうだ、とニジヤは思わず考えた。事前情報の通り、ませた子供であることに違いない。こちらを値踏みするような視線、困った様子の母親を見るにいつものことなのだろう。確かに、アシレよりもニジヤに任せたセイレンの采配は間違ってなかった。アシレが来た場合、大人げなく煽りあいに発展していただろう。


「ええと、フウ、さんでいいんすかね。一週間、お世話になるっす」


なるべく下手に出てみると、フン、と鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。これは手ごわい。この任務、前途多難そうっす、と頭の中のセイレンへ愚痴ってみた。

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