後日譚 隔絶
ロアス視点
↓
リナ視点
「わざわざすまないな」
「いえ・・・お体は大丈夫ですか?」
「大したことはない。ただの風邪をあいつが大袈裟に騒ぎ立てているだけだ」
そう言って笑った父上にいつもの覇気はなかった。
一月前、父上からランヒューレ家の今後について話し合いたいとの手紙をもらい、俺は今朝ラビナスの実家へと戻った。
「それで、俺に話というのは後継の件でしょうか」
「そうだ。お前には耳の痛い話だろうが、これだけははっきりさせておかないとな」
「承知だとは思いますが、俺に後継が務まるとは思えません。これまで剣しか振ってこなかったですから」
「ははっ。確かにそうだな。お前は父によく似ている・・・。父は生前ロアスには剣の才能があると言って喜んでいた。いずれ副団長の自分を超えるだろうと・・・。私が出来なかった親孝行をお前が代わりにしてくれたんだ。お前には感謝している」
父上には剣の才能がなかったようで、貴族学院を卒業後は騎士学校には進まずランヒューレ家の領地を拡大することに心血を注いできた。
その甲斐もあって我が家は王都でも指折りの資産家になったわけだが、俺は唯一の息子でありながらこの家を継ぐことを望んではいなかった。
幼い頃から祖父のように生涯騎士として生きようと心に決めていたからだ。
俺の意向を知っていた父上はこれまで後継問題を後回しになさっていたが、今回体を壊したことでこのまま有耶無耶にはしておけないと思ったのだろう。
「お前の意思が変わらないのはわかっている・・・。それで先日ロアンナとセルジオを呼んだんだ」
「姉上と義兄さんを?」
「あぁ。そこでロディを私の養子として迎えたいと申し出た・・・。ゆくゆくはロディにこの家を継いでもらいたいと思っている」
「ロディに・・・」
ロディはまだ7歳だが気立がよく頭の良い子だ。
「姉上たちに了承していただけるのであれば俺はそれで構いません」
「そうか・・・。では明日にでもロアンナの屋敷へ行くとしよう」
「わかりました」
翌日、姉上たちを交えてランヒューレ家の今後について話し合った結果、ロディを父上の養子にした際にはロディが将来侯爵の爵位を引き継ぐこと、我が家が所有する資産をすべてロディに帰属することを俺が承諾をして覚書に残した。
「久々にあなたに会えてよかったわ。すぐにモンテタールに戻ってしまうの?」
玄関先まで見送ってくれた姉上が俺の肩に触れた。
「はい。明日には発ちます」
「そう・・・。たまにはこうやって顔を見せてちょうだいね?お父様とお母様は言わないけれど、いつもあなたを恋しがっているのよ?」
「はい・・・」
「リナさんにもよろしく伝えてね。長い休みが取れたらモンテタールに遊びに行くわ」
「はい。いつでもお越しください」
姉上の屋敷を出て父上と馬車へ乗り込むと、どこからともなく鐘の音が響き渡った。
「何事だ?」
「これは・・・」
馬車の窓を開けると、鐘の音に合わせて馬の蹄の音が聞こえた。
「早馬が城へ向かっているようです。大事かもしれません」
「そうか・・・。ならそのうち号外が出るかもしれないな」
「はい。すぐに屋敷に戻りましょう」
急いで屋敷に戻ると、号外を握り締めた母上が玄関ホールで待っていた。
「大変よ!モンテタールとの間で紛争が起きたの!」
「紛争!?」
「これにそう書いているのよ!2日前に戦闘が始まったって!」
「見せてください!」
号外には国境付近で騎士団とモンテタールの兵士たちが戦闘になり、複数の死者が出ている書かれていた。
その影響ですべての関所は封鎖され、出国は原則禁止になったという。
「どうしたらいいの?このまま戦争にまで発展してしまったら・・・」
「落ち着け。まさか戦争にまではならないだろう」
そう言って父上が母上の肩をさすった。
なんということだ・・・。
ラビナスとモンテタールがこんなことになってしまうとは思いもしなかった。
「一旦リビングへ移ろう。ロアスも来なさい」
俺は父上に言われるがままリビングへ移動してソファに座った。
父上は向かいのソファに座ると、号外に目を通して頷いた。
「まだ侵攻には至っていないようだ。今は収束するのを待つしかないだろう」
「・・・・」
「ロアス、しっかりしなさい。届くかどうかはわからないが、まずはリナさんへ手紙を出しなさい。向こうもこちらを心配するだろうからな」
「わかりました」
数日後ーーー
朝食を済ませてソファでウトウトしていると、突然玄関の呼び鈴が鳴った。
誰かしら・・・?
玄関を開けると、そこには息を切らしたお母様が立っていた。
『リナ!大変よ!』
『どうしたの??』
『さっき屋敷に緊急の電報が届いたのよ!ラビナスと紛争になったらしいの!』
『え?』
『だから、モンテタールとラビナスとの間で紛争が起こったのよ!早く荷物をまとめなさい!屋敷に戻るわよ!』
『ちょ、ちょっと待って。紛争って、本当なの??』
『こんなことで嘘をつくわけないでしょう??とりあえず屋敷に行きましょう。ここよりは安全なはずよ?』
『そんな・・・ロアスは、ロアスは無事かしら??』
『そのうち手紙が届くはずよ・・・』
『だったら私はここから離れることは出来ないわ。ロアスの連絡を待たないと』
『バカなこと言わないで!まずはお互いが無事でいないと、そうでしょう??』
『お母様落ち着いて。ラビナスの騎士だってさすがにテネッタまでは来ないわよ』
『そんなことわからないじゃないの!お祖父様もリナを連れて来なさいとおっしゃっているのよ。こういう時は家族で一緒にいるべきでしょう??』
『・・・・』
『ね?そうしてちょうだい』
『そうね・・・。わかったわ。荷物をまとめるから少し待ってもらえる?』
私は必要最低限の荷物をバッグに詰めるとお母様と馬車へ向かった。
『お嬢様、お荷物をお預かりします』
『ありがとう』
『まさかこんなことになってしまうとは・・・。ロアス様はご無事でしょうか』
『ロアスなら、大丈夫よ・・・』
自分に言い聞かせるようにそう言うと、レイモンドさんが頷いた。
『そうですね。ロアス様はお強いですから、大丈夫ですとも』
『えぇ。きっとすぐに戻って来るわ・・・』
けれどそんな願いも虚しく、数ヶ月が経ってもロアスがモンテタールへ戻ることはなかった。
総合評価2000ポイント、ありがとうございます!
この後日譚は3話編成です☺️




