後日譚 祖父の形見
ロアス視点
剣術の指南を終え兵士団本部から出ようとすると、見覚えのある兵士が声をかけてきた。
『ロアスさん!お帰りですか?』
『あぁ』
『いつも急いでお帰りになりますね?そんなに早く奥さんに会いたいんですか?』
『まぁな』
『ははっ!お熱いことで』
確かこいつは第二部隊のアーノルドだったな。
『ずいぶん大荷物だな。遠征帰りか?』
兵士たちが総出で何やら運び込んでいた。
『はい・・・。実はデルーア山脈でドラゴンの巣を発見したんです。そこになぜか金銀財宝がありまして・・・』
『金銀財宝?』
『はい。巣穴にドラゴンの死骸があったんですけど、どうやらそのドラゴンが集めていた物のようです』
『ドラゴンがそんなものを集めるのか?』
『不思議ですよね・・・。でも人が入ったような形跡もなかったですし、わざわざドラゴンの巣穴に財宝を隠す奴なんていないでしょう?』
『確かにそうだな・・・』
『そのドラゴンはずいぶん前に死んだようです。足に剣が刺さっていたんですよ』
『・・・剣?』
『はい。誰かに刺されたんでしょうね』
もしかして・・・。
『その剣はどうした!?』
『えっ?』
『回収したのか?どこにある??』
『た、たぶん回収したと思いますけど』
『その剣を見せてくれ!』
『えっ??』
『それは・・・俺の剣かもしれない』
『ぇえ!?』
俺はアーノルドに連れられて保管庫へと向かった。
『隊長!』
『ん?アーノルド、どうした?』
『ロアスさんが見せてもらいたいものがあるそうです』
『ロアスが?』
『サイラス隊長、ドラゴンの足に刺さっていたという剣を見せてもらえませんか?』
『剣を?』
『はい・・・。それはもしかしたら俺の剣かもしれません』
『は?どういうことだ??』
俺は過去にドラゴンに連れ去られてモンテタールに来たことを簡潔に話した。
『そんなことがあったのか・・・』
『その剣の柄にランヒューレの紋章があるかどうかを確認させてください』
『そうか・・・。わかった。あれは武器庫に運ぶように指示したはずだ。ついて来い』
『ありがとうございます』
武器庫に行くと、丁度兵士が剣のブレイドを磨いているところだった。
『おい。その剣をちょっと貸せ』
『はい』
サイラス隊長は剣を受け取ると、柄頭にある紋章を一目確認してから俺に見せた。
『どうだ?』
『・・・間違いありません。俺の剣です』
『ははっ。こんな偶然があるとはな』
俺もまさかこんな形でこの剣が戻ってくるとは思いもしなかった。
『じゃあこれは持って帰っていいぞ』
『いいんですか?』
『紋章が入っているということは大事な剣なんだろう?』
『はい・・・。これは祖父の形見です』
『そうか・・・。よかったな』
サイラス隊長は俺の肩をポンと叩くと保管庫へと戻って行った。
『なんか・・・あのドラゴンがロアスさんを連れ去った理由がわかっちゃいました』
隣にいたアーノルドがそう言ってふっと笑った。
『理由?』
『はい・・・。ドラゴンが金銀財宝を集めてたって俺言いましたよね?』
『あぁ』
『あいつはロアスさんのことを自分のコレクションに加えたかったんじゃないでしょうか』
『は?俺を?』
『だってロアスさんって綺麗じゃないですか。それにその黄金の瞳・・・宝石みたいでしょう?』
『・・・・』
『ロアスさんを見て、つい巣穴に連れて帰りたくなったんだと思います』
まさかドラゴンがそんな感情を持つだろうか・・・。
『ただの偶然だろう』
『まぁ・・・真相はわかりませんけどね』
アーノルドは満足そうに微笑みながら自分の持ち場へと戻って行った。
急いでテネッタのマンションへ帰るとリナが嬉しそうに俺を出迎えた。
「お帰りなさい。今日は少し遅かったわね?」
「すまない。思いもよらないことがあってな」
「え?」
「これが戻って来たんだ」
俺が説明を交えながら剣を見せると、リナは驚きと興奮で目を丸くした。
「よかったわね!!見つかって!!」
「あぁ。もう二度と手にすることは出来ないと思っていた」
「お祖父様の剣を無くしてしまったことをずっと悔やんでいたものね・・・」
リナは目尻を拭いながら微笑んだ。
「次の休みにスワナーの鍛冶屋に行ってこの剣の鞘を作ってもらおうと思う」
「そうね。私も一緒に行ってもいい?」
「あぁ。久しぶりに遠出しよう」
「ふふっ。楽しみだわ」
「その時なんだが・・・また何かを買って馬車で食べないか?」
「え?馬車で?どうせならお店で美味しいものを食べましょうよ」
「いや・・・あの時のように君に食べ・・・」
「え?」
「な、なんでもない!忘れてくれ!」
俺が風呂場へ直行しようとすると、リナが後ろから抱きついてきた。
「わかったわ。馬車で食べましょう?」
「・・・・」
「なんなら今日の夜ご飯も私が食べさせてあげましょうか?」
「くっ・・・」
「ふふっ。ロアスったら、耳が真っ赤よ?」
勘弁してくれ、と思いながらも、俺は彼女とのこんなやりとりが心地いいと感じてしまうのだった。
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