散歩
土日や祝日は、周囲の散策に出かける。
歩いて回れる範囲でもけっこう知らない場所、楽しい店があったりして飽きることがない。
最近は携帯電話をスマートフォンに変えて、写真をとったり、記録したりすることもある。それが溜まっていくのが何となく楽しい。
二人で可愛い猫や犬の写真を撮ったり。
塀の上や道端で座り込んでいる猫がいて、ちょっとドアップで撮ったりする。
できた写真を二人で眺めて、こうして撮るともっといいかな、とか話したり。
空の色は毎日違って、特に夕暮れ時は格別だ。
誠さんは黄金に光る雲が好きだといい、私は深くなっていく空の青さが好きだと言う。
「だって、だんだんと深くなる青って素敵じゃないですか? ふとすると星が見えたりして」
誠さんは笑ってうなずいてくれた。
「宵の明星だ」
指さした先に、ひときわ光る星を二人で眺めた。
暮れゆく空に、ただひとつの光点。
本当に綺麗だな、と思ったのに、ふと風に乗ってきた揚げ物の匂いがとっても美味しそうで、お腹が鳴ってしまった。
それがあんまり大きな音だったので、二人で大笑いしたりして。
なんだろう。
何でこんな些細なことに幸せを感じてしまうのだろう。
何となく夕暮れどきって切なくて。
寂しいかな、と思っていると、誠さんが「じゃあ、帰ろうか」と言ってくれる。
それだけで、心がほわっと温かくなって、寂しさが消えていくなんて。
あなたは何者ですか?
私も、あなたにとって、そんな存在でありたいです。
「ああ、本当に祝婚歌の意味が解るなぁ」
私は以前に教えてもらって詩が頭の中によみがえり、思わずそうつぶやいてしまった。
「そうですね。解ります」
誠さんはそう言って、祝婚歌を暗唱してくれた。
「……立派でありたいとか、正しくありたいとかいう、無理な緊張には色目を使わず」
私も言葉を続けた。
「ゆったり ゆたかに、光を浴びているほうがいい」
光、大事です。
人間も光合成しなくゃ。
もう落ちかけている太陽の光を体いっぱいに浴びて、私は大きく伸びをした。
パシャッ。
「あっ、撮りました?」
「撮りました。素敵なワンシーンだったので思わず」
「私の伸びをしている姿が?」
「はい。良かったです」
「どれどれ」
「ほら」
濃い青の空をバックに、夕暮れ色に染まる私の顔は、どこか幸せそうだった。
ああ、いまこんな顔をしていたんだ……。
「まあまあですね」
「被写体がいいから」
「景色が良かったということに」
誠さんが笑った。
その笑顔、思わず私も一枚撮りたくなった。
「夕食は何にしましょう」
「なんでしょうね。鰹のタタキとか?」
「あっ、いいですね! ニンニクも乗っけたい」
「じゃあ、スーパーに寄ってから帰りましょう」
「はい!」
私達は手をつないで、歩き始めた。
誠さん、私、幸せです。




