初めての朝
翌日の朝、私はひとり目が覚めて、そっと布団から出た。
起こさないように、そぉーっと。
うぅ、可愛い寝顔。
キスしたくなるけれど、今は我慢。
私は脱いだ下着とパジャマを着て、台所へ向かった。
昨晩、私達は抱き合いました。
いやぁ……気持ちよかったです。
誠さん、予習しましたね。
絶対。
お互いに初めてのはずなのに、とても良かった。
初めてのことばかりで、びっくりな夜でした。
私はエアコンの暖房を入れて、お米を研ぐことにした。
せっかくなので御飯とお味噌汁、それにだし巻き卵でも作りましょう。
このぐらいは役に立たなくちゃ。
ご飯をセットして、お湯を沸かして……っと。
でもなあ、本当に誠さんにはもっと、「俺はこうしたいんだ!」という気持ちを持って欲しいし、私には遠慮しないで欲しい。
誠さんが遠慮していると、私まで遠慮してしまいそうで。
それは長続きしないような不安がある。
ケンカになったっていいから、思いをぶつけて欲しい。
何か役に立てないかな……。
私はお味噌汁の具を切りながら、そんなことを考えいた。
ん?
そうだ。
ちょっと恥ずかしいけれど、あれをやってみよう。
たぶん……いやきっと喜んでくれるはず。
私はいたずら心もあって、ちょっと用意をしてみることにした。
隣の部屋で、誠さんが起きた音がする。
よしよし、こちらも準備完了。
お味噌汁の匂いを漂わせて、包丁の音なんかさせて……と。
「お早うございます。すみません、よく寝てしまっ……」
扉を開けて、誠さんが入ってきた。
ちょっと寝ぼけ眼が可愛い。
私の姿を見て、固まっている。
ふふ、どうだ。
恥ずかしいけれど、喜んでいただけましたか?
「誠さん、お早うございます。顔を洗ってきて下さい。もう朝食の準備ができましたから、一緒に食べましょう」
「あっ、はい……」
戸惑ってる、戸惑っている。
誠さんは頭をかしげながら、顔を洗いに行った。
実は私、裸にエプロンをしてみた。
男の人は絶対に好きなはず。
二人っきりじゃないとできないサービスだ。
……恥ずかしいけれどね。
顔を洗っていつもの顔にもどった誠さんが、あらためて私のことを見ている。
ちょっと顔を赤くして、ちらっ、ちらっ、と。
昨夜、見たじゃないですか。
たっぷりと。
「はいはい。誠さん、座って下さい」
「はっ……はい」
誠さんの背中を押して、席に座らせる。
私はもちろん、その向かい側に座る。
視線が胸元に来ています。
うん、でも喜んでいるぞ。間違いなく。
よしよし。
恥ずかしいけれど、やった甲斐がある。
「どうです? この姿。嬉しいですか?」
「えっ、えっ、その…………はい」
よっしゃー。
「でも何で……」
私達はとりあえず、いただきます、をして食事を食べ始めた。
温かいうちに食べないとね。
「誠さん、優しいのはいいんですけど、私にはもっと遠慮しないで欲しいんです」
「遠慮、ですか?」
「はい。もっと『俺はこうしたいんだ!』っていうのを、私のことは気にせずにぶつけて欲しいんです」
「こうしたい……」
「はい。私は誠さんの役に立ちたいし、遠慮して欲しくないし、やりたいことを一緒に楽しみたいんです」
「……いいんですか?」
「はい。何でも言って下さい! 受け止めます」
「何でも? その……嫌いになりません?」
「なるもんですか。さあ、どうぞ!」
よし言えたぞ!
やっぱり思いは伝え合わなくちゃね。
誠さんはしばらく戸惑っていたようだけど、箸をおいて私の方を見た。
「まどかさん」
そう言って、誠さんは立ち上がった。
あれ……?
何か変だぞ。
何したいのかを、伝えてくれるものとばかり……。
……もしかして私、地雷を踏んだ?
誠さんはゆっくり机を回りこんできて、私の横で立ち止まった。
そうなって私はようやく現状を理解した。
そっ、そうよね。
裸にエプロンで、好きなようにして! って叫んだら、普通そういう意味よね。
わぁぁぁぁ、地雷踏んだ!
しかも、おもいっきり天然にっっ!!
誠さんが座っている私を上から抱きしめる。
「まどかさん……いい?」
ぞわっときました!
耳元で囁かれて、背中に何かが走りました!
ちっ、力が抜ける……。
「はい……」
私はそう答えるのが精一杯だった。
朝からですか!
外からちゅんちゅんって、小鳥の鳴き声が聞こえてますけど。
窓から爽やかな朝の光が差し込んできていますけど。
いや、誘ったのは私からみたいなものですから、言い訳はしませんが。
誠さんの手が私の顔を上げて、ゆっくりと柔らかな唇が近づいてくる。
私は思わず目を閉じて、その唇を受け入れた。
ちゅっ……。
それだけで、全身がじんっと痺れてしまう。
あっ、もう……。
朝からすっかり捕獲されてしまった。




