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初めての夜


「お先に失礼しました」

「いえ。では僕も入ります」

「はい」


 私と入れ違いに、誠さんがお風呂に入る。

 私はドライヤーで髪の毛を乾かすことにした。


 何となく、みんなで海旅行に行った時を思い出す。

 あの時も、誠さんと同じ部屋でドキドキしながら、髪を乾かしていたな。

 今は、あの時ほど緊張はしていないし、安心感もあるけれど。


 そっと、隣の部屋を見ると、仲良く並んだ布団が2組。


 ひとりで眠ることになれた私が、今日は眠れるかな……。


 眠っているから知らないけれど、私、イビキとか歯ぎしりとかないかな。

 別の部屋で寝ましょう、とか言われたらどうしよう。


 それに、やっぱり、その……エッチとかに、なるのかな。



 うわぁ、胸が急にドキドキしてきた。


 静まれ! 心臓!


 先走ってどうする!


 キスとハグしかしたことがないから、こればっかりは不安だな……。

 経験も知識もないし。

 お任せしたらいいのかな。

 待っていたら、何も無かったりして。



 ……誠さんならあり得るな……。



 私から襲う?


 いやいやいや。


 いつの間に肉食系女子になってしまったんだろう……。



「お待たせしました」

「はっ、はい!」


 いつまにか誠さんがお風呂から出ていた。

 妄想している間に、そんなに時間が立っていたとは。


 青いパジャマ姿の誠さん、何となく可愛い。

 いつかお揃いのを買いたいな。


「はっ、早いけど。寝ましょうか」

「そっ、そうですね」


 二人でどもりつつ、一緒に部屋の電気を消して、それぞれの布団に入った。


 あたりがしんっ、と静かになる。

 耳をすますと、冷蔵庫のモーター音がわずかに聞こえるぐらいで、何となくふたりの呼吸の音まで聞こえてきそうだった。

 目が暗闇に慣れると、部屋様子や隣に眠る誠さんの姿が見えてくる。


 ああ、本当に一緒に寝るんだ。

 何か不思議。


 私は独り言のように話し始めた。


「何か不思議ですね」


 誠さんもまだ寝ていなくて、聞き返してきた。


「何がですか?」


 私は視線を天井に向けたまま説明を続けた。


「父から同棲を勧められて、まだ10日ぐらいですよね。二人で一緒に寝ているなんて」

「ああ、そうですね」


 同じように天井を見ていた誠さんがこちらを顔を向けた。


「急ぎすぎましたか?」

「いえ、そんなことはないです。楽しみにしていましたし」

「僕もです。一緒でよかった……」

「ふふ、いつも一緒ですよ」

「はい」


 しばらく沈黙が続く。


「まどかさん」

「はい」

「……隣に行っていいですか?」



 きたぁぁぁ!!



 きました!



 誠さん、頑張りましたね!!



「はい」


 私は緊張と嬉しい気持ちを隠して、静かに返事をしてみた。


 誠さんが私の布団の中に入ってきた。

 それまで冷たかった布団がほんわかと温かくなる。

 それが嬉しくて、思わず私の方から誠さんを抱きしめてしまった。


「まどかさん……」


 胸がきゅんっとした。

 いつまでたっても、恋してるなぁ……私。


 好きですよ、誠さん。



 そうして私たちは、暗闇の中でキスをした。





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