表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/34

引っ越し



 ホームセンターで布団と洋服をしまう収納ボックスや机、フライパン、鍋などの生活用品を買い揃える。

 有り難いことに、これもまとめて配達してくれるらしい。

 きっとまだ足りないものあるかも知れないが、それは生活しながら買い足していけばいい。


 楽しい買い物もあっという間に終わり、あとは自分の家にある荷物をまとめることになった。

 洋服や小物や本ぐらいだから、1日もあれば十分に荷物はまとめられる。

 冷蔵庫が配達される時には、部屋にいなくてはいけないから……明日が引越しの日?



 慌ただしくて寂しがる時間もないかとも思ったが、夕食の時に、


「明日には荷物が届くから、もうそのまま、あちらに住むことになると思う」


 と両親に告げると、父と母の手が止まった。


「そう……」


 と母がつぶやき、父は……。



 目が潤み始めていた。



「えっ……」


 私がびっくりしていると、父は涙を隠すように立ち上がり、部屋を出ていってしまった。


 そして残った母が私の隣にやってきてくれて、黙って抱きしめてくれた。


「頑張るのよ。気をつけて」


「……はい」



 二人に愛されて育てられて、私は本当に幸せでした。



 嫁ぐわけではないけれど、私もちょっと泣けてしまった。




 そして、翌日。

 私は母に車で送ってもらい、多くない荷物を持って新しい部屋に到着した。


「おはようございます」


 すでに先に来ていた誠さんが、私と母に挨拶してくれて、3人で荷物を運んだり掃除をしたりして準備を整えた。

 母は昼前には帰ってしまったが、そのあとで冷蔵庫や洗濯機が配達されたり、生活用品が届いたりで、おおよその準備が整った時には、あたりはすでに暗くなりかけていた。


「何とか形になりましたね」

「そうですね」

「夕食は外で食べて、帰りにスーパーに寄りますか」

「そうしましょう!」


 私達はあたりの散策を兼ねて、ぶらぶらと歩くことにした。

 外は寒いが、握った手は温かくて、心がほくほくする。


 お腹が空いていたからか、二人そろって何となく豚カツを食べた。

 少し古いお店だったが、お客さんもたくさん入っていて、味も抜群。

 すっかりお腹がいっぱいになって、満足して店を出た。


「いいお店でしたね」

「美味しかったです。他にも、いろいろお店がありそうですね」

「また今度、ゆっくり歩きましょう」


 これからはしばらく散策が、ふたりの楽しみになりそうだ。

 スーパーも少し歩いたが、広いお店がある。

 そこで、生活に必要な食材や飲み物を購入して帰路についた。


 自転車ぐらいは買ったほうがいいかな。

 それとも、家のを持ってこようかな。


 私はそんなことを考えながら、二人でたわいもない話を交わしている時間を、とても幸せに感じていた。




 部屋について冷蔵庫に食材を収めると、ひとつの難問がやってきた。

 それは、お風呂に入ること。

 誠さんもそれに気づいて、何となく挙動不審だ。


「まどかさん、先にお風呂どうぞ」

「私は少し長いですから、誠さん先にいいですよ」

「いや、少し本を整理していますから、どうぞ入って下さい」


 それじゃあ、先に入ろうかな、と思ったときに、いたずら心が芽生えてしまった。

 そうだ、これを言わなくちゃ……。


「それとも誠さん、一緒に入りますか?」


 私は誠さんが断ることを解っていながら、にこやかにそう聞いてみた。


「あっ、えっ、その……」


 ああ、うろたえている、うろたえている。

 可愛いなあ……。


「どっ、どうぞ一人で入って下さい……」

「はぁい」


 グロッキー寸前の誠さんを見ながら、パジャマを用意してお風呂場へ向かった。

 バスタブに湯をはり、ゆっくりと髪と身体を洗う。

 ちょうど良い湯加減と量になったのを確認して、中に入った。


 あぁ……生き返る……。


 今日は1日慌ただしかったから、いつの間にか疲れが溜まっていた。

 それが温かい湯と共に流れ出してくれるような心地良さだった。


 いよいよ二人の生活が始まったんだ……。


 私はここでようやくそのことを実感した。

 何となく嬉しくて楽しくて、胸がほんわかと温かくなる。

 不思議だな。

 数年前までまったく知らなかった人と、二人で生活することになるなんて。

 これからどんな毎日になるのだろう。


 ケンカもするかも知れない。


 でも、きっとすぐ仲直りをするだろう。


 苦しいこともあるかも知れない。


 でも、二人でならば乗り越えていけるような気がする。



 誠さんの、役に立ちたいな。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ