その後の話
あと活動報告にあげた、その後の話も少し付け足しておきます。
「せんせー、次の患者さん用意出来ましたー」
「はーい」
看護師に呼ばれたまどかはいつもの内視鏡室に入り、6人目になる胃カメラを行った。
多い。
多すぎる。
消化器内科医になったのはいいけれど、子ども達もまだまだ手がかかる年頃。
仕事を絞って、わずかな外来と内視鏡検査だけにさせてもらっているのだが、その検査の枠にいつも収まりきらないぐらい依頼が来る。
「疲れた……」
最後の一人が終わり、所見を書き終えた診察室で、まどかはぐったりと机に倒れこんだ。
「お疲れ様です。先生、いつも多いですもんね」
ついてくれていた看護師が苦笑いをしながら、まどかのことをねぎらってくれた。
「そうなの……もういっぱいだから他の先生にふろうとするけど、患者さんが……」
「先生がいい、と」
「そう……」
有り難いことであるが、キャパオーバー。
毎回、枠の制限数を超えて入れているので、付き合ってくれるスタッフにも申し訳ない。
でも、胃癌の可能性もある患者さんを、あまり先の予約に入れるわけにも行かない。
すでに、予約だけでも2ヶ月先まで一杯なのだから。
「有り難いことだけど、できれば他の先生に……」
看護師は笑いながら、「無理、無理」と言いながら、言葉を続けた。
「だって、私だって先生に受けたいぐらいだもん」
「……なんで?」
「だって、胃カメラをやるときの様子を思い出して下さい」
「?」
「胃カメラを入れられている患者さんの一番近くに見えるものはなんでしょうか?」
疑問を持ちつつ、まどかも想像してみた。
患者さんがベッドに横になり、口にカメラを挿入して…………ん?
「…………それって」
「ふふっ、美人な女医さんの巨乳を間近で見放題!」
「…………」
まどかは机に突っ伏した。
男性だけでなく、女性看護師までもが経験してみたい胃カメラって……。
確かに、残念なことに、胸は大きい。
詳しいサイズはすでに言いたくもないけれど、まあジロジロと見られるからかなり大きい方だとは思う。
「大腸カメラにいたっては、汚れないように薄手の手術着で、胸の盛り上がりがさらにはっきりするし、優しい言葉であんな所に固いものが挿入されて、新たな扉を開けてしまった男性がゴロゴロと」
…………もうやめて! ……私のライフはゼロよ!
まどかは心のなかでそう叫んでいたが、彼女の追撃は終わらなかった。
「健康まで保証されて、しかも7割り引きなんて。どんな水商売も真っ青よ!」
「……そうね」
反論する気力もなく、もうそのまま机の上でふて寝をし始めるまどか。
「でっ、先生って何カップなんですか?」
「教えるかっ!」
「F? それとも、G? ……まさかH?」
……正解が入っているけど、教えませんっ!
「私はCです。きゃっ、恥ずかしい!」
「……そんな情報いりません」
起き上がって逃げるように歩き出したまどかが隣の部屋で見たのは、自分について研修している若い男性医師が鼻血を出して倒れている姿だった。
まどかは、あとでこってり彼を絞ることを決めた。
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誠とまどかが37〜8歳、長男の元が16歳ぐらいになった未来の話。
誠は東京の大学の准教授となっていて、家族とともに東京で生活しています。
そんな家庭に、いまやすっかり人気歌手になった桜が毎晩のように転がり込んでは、食事をいただいて寝泊まりしていました。
遅めの夕食が終わり、まったりとお茶を飲む、誠とまどかと桜。
元も一緒になってダイニングテーブルについていました。
そんな時、桜がまどかにお願いをします。
「ねえ、まどか。誠くん、貸してくれない?」
「……貸すって?」
「いや、処女のまま40歳を迎えたくないなぁ、と思ってさ」
お茶を盛大に吹き出す誠と元。
「一晩だけでいいんだけど」
いまや国民的歌手になった桜が、両手をあわせてまどかにお願いをするが、まどかはにっこりと笑って答えた。
「お断りします」
「えー、けちー」
「けちじゃありません。誠さんは私のです。桜さんならいくらでもいますでしょ」
「誰でもいいわけじゃないのよ。ファンと言う訳にはいかないし、同業者も仕事の支障をきたしてもいけないし、出会いもないし」
「でも、誠さんはダメです」
どこかほっとした表情の誠に、桜が問いかける。
「ねえ、誠は私とエッチしてみたいと思わない?」
再び盛大にお茶を吹き出す誠。
「どう?」
「いや、その、無理です」
「無理っていうのは、気持ちとしてはエッチしてみたいけど、という意味?」
「いや、あの、考えたこともないし、考えられない」
「そりゃあ、まどかほど胸はないけどさ」
そういって桜が胸を寄せてみせると、顔を真赤にする男性二人。
「でも、まあ、40近くにもなって処女なんて、誰も相手にしようとしてくれないか……重いよね」
机につっぷす桜。
「誠さんはダメだけど……」
まどかの言葉にちらっとだけ顔を上げる桜。
「元ならいいよ」
まどかの言葉に盛大にお茶を吹き出す元。
誠と桜は……ああ、そう言えば……という顔。
「おっ、俺?」
「だって、元の初恋の人って、桜さんでしょ? 今、彼女もいないみたいだし」
「えっ、そうなの?」
目を輝かせる桜。
「そっ、そうだけど。いや、だからといって」
にじり寄る桜。
後退りする元。
「こんなおばさんじゃ、嫌?」
テレビで見慣れた綺麗な顔が、少し困ったような顔をして問いかけてくる。
「さくら姉ちゃんは、おばさんじゃないよ。……ってそんな話じゃなくて」
混乱する元。
「桜さん、いきなりエッチなんて言ったら戸惑うわよ。まずは二人でデートでもしてみたら?」
「デート!! デートしたい!!」
「じゃあ、まず事務所の人の許可をもらえたらね」
「よし、今から電話するっっ」
「俺の許可はいらないのかぁ?!」
事務所からも許可をもぎ取り、ファンにも「デートをしたいので、見かけても温かく見守ってね」と呟いたら、意外に好意的な反応が多く、外堀を埋められる元。




