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家族へ



 退院した後、私達は私の実家に戻ることになった。


 私は学校へ行かなくてはいけないので、元ちゃんのお世話を母にお願いすることになったのだ。

 保育園に預けられるようになるまでの、しばらくの間の実家暮らし…………退院して帰る頃には、私の部屋はすっかり元ちゃん仕様になっていた。


 誠さんの部屋も用意されていた。

 ただ、しばらくは夜泣きが続くので、おばあちゃんの部屋でひとり寝起きをしてもらうことになったけれど。


 身動きがとれない私の代わりに、誠さんが引越しの準備をほとんどやってくれた。

 実家の古い洗濯機と冷蔵庫が私たちの使っていたものに変わると、懐かしくて何となく嬉しくなってしまった。

 2年と少しの間だったけれど、とても楽しかったし、勉強になった時間だった。


 母達の思惑で始まった同棲生活。それはとても良い経験だったと、今は思う。



 引越しの最期の日は、私は誠さんと一緒に行くことにした。


 私も、あのお部屋に最後の挨拶をしたい。


 すべての荷物が運び出された部屋は、初めて訪れた時みたいに光がきらきらと差し込んでいて。

 穏やかな、ゆっくりとした時間が流れているような空間に戻っていた。


 置いていた机も冷蔵庫も何も無いけれど、今でもそこにあるような、ただいま、と言って中に入りたいような郷愁にかられて、胸がぐっとなってしまった。


 あの時、戸惑いから始まった2人の生活の中で、ゆっくりと私達は家族になっていったような気がする。


 ここに、ただいま、と言って帰ってくる。

 行ってきます、と言って出ていく。


 2人でいることが、しだいに自然になっていった時間。



 そして今、私の腕にはもう1人の家族が。



 すべての荷物が車に載せられ、部屋の掃除も終わった。


 私と誠さんは、並んで玄関に立った。



「有り難うございました」



 誠さんが、何も無い部屋に向かって一礼する。

 私もゆっくりと、頭を下げた。



 楽しくて、幸せな時間を、本当に有り難うございました。


 私はこの部屋に対して、本当に感謝の気持ちで一杯だった。


 名残惜しいような気持ちを残しつつ、誠さんはゆっくりと部屋の扉を閉じる。



 ぱたん……と静かな音を残して、扉は閉まった。



 これで、同棲生活は本当に終わり。




 さあ、始めましょう。


 3人家族の生活を。

 

 きっと、今までよりも騒がしく、楽しいことでしょう。



 私は誠さんと見つけ合いながら、心のなかにだんだんと温かいものが広がっていくのを感じていた。




 そんな気持ちを知ってか知らずか、腕に抱かれた元ちゃんが、それはそれは大きなあくびをしていた。





〈 ふたりが家族になるまでの  終わり 〉

 



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