待っているよ
妊娠してから誠さんが過保護だ。
まあ薄々は、そうなるかな、と思っていたけれど。
自転車には乗らせてくれない。
重いものを持たせてくれない。
食事の内容にまで気を使う。
最近は、体重管理までされてしまって、ちょいと窮屈にさえ感じてしまう。
「大丈夫ですって、そんなに心配しなくても」
私は思わず、そうぼやいてしまった。
言われた方の誠さんは、少し困り顔。
「解っているけれど、何というか、こう、じっとしていられないというか」
そう言いながら、誠さんはほとんど無意識に私の仕事をとってしまう。
そこは私が拭きますから。
「そんなので、出産まで持ちますか? 産まれた後もいろいろありますよ」
「まどかさんは、心配になりませんか?」
「それが、あんまり」
そう、何となくいつも変わりなく、いろいろやろうとしてしまう。
言われて、はっと気づく時があるぐらいで、あまり心配していない。
「何故だろう」
「何故なんでしょうね」
それでも、私は毎日はじめに語りかけている。
ひと時だって忘れてはいない。
「私は母のように、真穂さんのようになりたいんです。心配してもそんな素振りを見せず、信頼をしてあげられるような」
誠さんは一瞬、あっ、という顔をして、しばらく考えこむ。
そして、ちょっと笑いながら、誠さんがこう言った。
「僕はちょっと泣き虫でもいいですか?」
ふふっ、私の父のようになりたい、という意味ですね。
「はい、いいですよ。でも、泣き虫だけじゃ駄目です。一家の大黒柱としてどっしりとして、そしてちょっと甘くないと」
「ははは、そうですね。頑張ります」
誠さんはそう言いながら、やっぱり私の仕事をとってしまった。
だから、洗い物はしますから。
だんだんとお腹が大きくなってきて、動いているのも解ってきた。
どすどすと蹴ったり、ぐるぐると回ったり。
忙しい子供だ。
「はじめ。元気なのはいいけれど、あまり動き過ぎないで」
私は思わず、注意してしまう。
うーん、不思議な存在だ。
気分はカンガルー?
そして気付いたら、お腹はぱんぱんに膨らみ、立ち上がるのにも「よっこいしょ」と声が出てしまうようになる。
ああ、ばばくさい。
でも、十月十日って長いような、短いような。
もうすぐ出産予定日だ。
幸い、ここまで何事も無く順調に育ってくれた。
ちょっとばかり私の体重が増えすぎちゃったけれど、まあ許容範囲内。
本当に有難い。
実は性別はまだ聞いていないけれど、はじめくん、元気に産まれてきてよ。
私達はあなたに会える日を本当に、心待ちにしています。
もうすぐだね。
待っているよ。




