大魔王様のお言葉
レオナルドはアデレイドを困らせる魔人達を何とかする為に動き出す。その為、人間であるアデレイド達をまずは帰らせたのだが、レイシスは帰るのをかなり渋ってなかなか言う事を聞かなかった。
「せめて魔王ちゃんにこの薬飲ませてみて?後悔はさせないよぉ、最後のお願い聞いてくれないかい?ダメ?どぉしてもダメ?」
など、最後まで研究バカを発揮していたが、アデレイドに強制的に連れて行かれた。
その後、レオナルドと二人きりになった魔王が今後の事を問いかける。
「大魔王様、二人を返したのは良いが、これからどうするのじゃ?人間が実は弱くて、実際は魔人達が他の種族を傷つけない為にここに皆を閉じ込めてるなんて言ったら奴ら暴れてしまって、きっと手がつけられなくなるぞ?」
何かしら作戦があるのかと、心配で聞いてみる。しかし、レオナルドはニッコリと魔王に微笑みながら、
「僕がなんとかするから、魔王は魔人全員を今すぐ集めてくれるかな?一人も漏れがない様に頼むね?」
爽やかな笑顔で言われるが、失敗したら許されない雰囲気がそこにはあった…………魔王は顔を青ざめさせながら全魔人に念を飛ばす。
“ 魔人達よ、魔王城に直ちに集まるのじゃ!大魔王様より大事なお話がある。これを無視したものは死よりも辛い罰が下るじゃろう…………とにかく10分以内に来るのじゃ!!以上!! ”
レオナルドは王座に肩肘をつけながら気怠げに足を組み、静かに魔人が集まるのを待つ。魔王はそれを見てビクビクしていた。レオナルドは笑顔を浮かべてはいるが、どこか冷ややかな横顔からは最初に出会った時に味わったこの場を支配する様なオーラが漂っていた。
(はぁ……大魔王様怖いのぅ、そして、妾はいつからこんな下っ端の様な事をする様になったのじゃ…………耐えられなくは無いが、妾の威厳がどんどんなくなっていってる気がするのじゃ…………)
魔王は大魔王のレオナルドが現れるまでは自分が一番である事を疑いもせず自由気ままに暮らしていた。しかし、余りにも自由にしすぎたせいで、部下が魔国の未来を心配し、魔王の師としてこのレオナルドを連れてきたのだった。その日から厳しい訓練や、マナー講座が始まり、自由気ままに暴れる暇もなくなってしまった。そしてそんな昔を懐かしみながら脳内逃避行をして魔人達が集まるのを待つのだった。
10分経ち、魔人達は魔王城の前に集まった。気性が荒い為、そこら中で罵声や、怒号が飛び交い、魔王城の前はとても騒々しくなった。
しかし、レオナルドが魔王城から魔人達が見渡せるバルコニーに出てきた瞬間、空気が一変した。圧倒的なオーラ、そして、魔人達を一瞬で震え上がらせるほどの威圧感を放ったのである。
「やぁ、みんな集まってくれて嬉しいよ。何で嬉しいのかって?それは、君たち、僕の命令はもう聞かないのかと思ってたからね?こうして集まってくれて本当に嬉しいよ」
両手を広げて微笑みながら話すレオナルド。その目は誰が見てもゾクりとするほど冷たく、笑っていなかった。魔王は隣に立つのもやっとな程の威圧感に涙目で耐えていた。
(なぜ妾がこんな目に……妾……ちょっと怖くて泣いちゃいそうなのだ…………)
そんな魔王を横目に、気にせずレオナルドは魔人達に話しかける。
「今日、皆んなを集めたのには理由があるんだけど、分かるかなぁ?あっ!もし当てたら僕からご褒美をあげようかな?当てた者の願いをなんでも一つ叶えてあげるよ………じゃぁ分かる人いたら手をあげてみてくれる?」
大魔王様からの急なご褒美という言葉、しかもなんでも願いを叶えてくれるという魅力的な言葉……一斉にざわめく魔人達、その中で一人の魔人が手を挙げた。
「はい!大魔王様!!俺が答えるぜ、ます!!」
その魔人に目をやり、ニッコリと答えを話せという様に頷いて見せる。そのレオナルドの悪魔の様な美しい顔に魔人達は皆、ドキリとする。顔を赤くし興奮気味に先程の手を挙げた魔人が話し始める。
「俺達みんなでこの世界を征服する為に集まったと思います、で…………
シュパッ
プシューーーッ
レオナルドは美しい微笑みを絶やす事なく魔人の首を飛ばした。先程までのざわめきは一瞬にして静まり返った。魔王も急な出来事に対してビックリし、涙もすぐに引っ込んだ。そして、目を丸くしながらクビが飛んだ魔人を見つめた。
「はぁ、つまらない答えだったね………他には僕の考えが分かる人は居ないかな?ねぇ、願いが叶うんだよ?当ててみてよ」
美しい笑顔で無邪気に問いかける大魔王を見て全魔人は思った。ヤバイ、大魔王様の考えを当てなければ全員殺される何としてもでも当てなければ…………と、そして、その横で魔王は思った
(これ、絶対に魔人達では当てられないやつじゃろ…………まさか、大魔王様は魔人全員を殺すつもりなんじゃぁ………どー考えてもそれしか考えられないのじゃ!ヤバイのじゃ!ヤバイのじゃ!妾じゃ大魔王様は止められんぞ!!)
レオナルドの機嫌を取ろうと、ありとあらゆる他人種に対する残酷な答えが次々と魔人達から挙げられる。それを笑顔で様々な方法で殺していくレオナルド。魔人達の中にはとうとうこの圧倒的で美しい狂気の空間に耐えきれ無くなった者たちがではじめ、徐々に魔人達はパニックに陥っていく。
「大魔王様お許しください!!私達がなにか気に触ることでもいたしましたか?教えてください!!」
「私は大魔王様達の事を大事に思い生きてきました。どうか殺さないでください!!」
「俺は大魔王様の為だったら死ねるぞ!!お前らなんのために生きてんだよ!!一回死んだ方がいいぜ!!」
「うわぁぁ……まだやりたい事たくさんあります!!大魔王様どうか御慈悲を…………」
魔人も死に対する恐怖がある。戦う事は好きだが、殆どの者は戯れあってるつもりで、毎日力比べや喧嘩をする程度なので本当の死をかけた勝負をしているのは一部の戦闘狂な魔人達だけなのである。レオナルドはもちろん魔人全員を殺すつもりはなかった。しかし、一度力を見せつけなければ全魔人を支配する事は難しいと考えたのである。
ウヴンッ
レオナルドが一つ咳払いをした。それだけで全魔人はビクリッと肩を揺らし、緊張した面持ちでレオナルドの方を向き、レオナルドが何を言うのかを固唾を飲んで見守った。
「みんな、今から言う僕の言葉をちゃんと聞いて欲しい。僕はみんなの事が好きだ。ちょっと乱暴が過ぎるとは思っているけど……そして、僕は今、大魔王と呼ばれているが、この体は人間だ!そして、人間として今まで育ってきた。だから君達には到底理解できない事を今から言う!そして、それに従ってもらう!もし、従えなければ、消えてもらう事になる!!その内容とは……」
一白溜めて、レオナルドは大魔王の圧を放ちながら言う。
「他種族を殺すな、それと、できればこれからは他種族とも仲良くして欲しい!!これだけだ!!」
辺りは一瞬で静まり返った。理解が追いつかずポカンとする者達、言われた意味を一生懸命に理解しようとする者達、理解できず顔に戸惑いと怒りの感情を表す者達、レオナルドはそんな魔人達に尚も話しかけた。
「何故なら、君達は損をしている。戦いだけが生きる意味では無い。僕はこの魔国が発展していくのが見たいんだ。他の種族達ともっと交流して、この魔国の文化をもっと発展させて欲しいんだ!!そして、今は戦いしか娯楽がないからお前達は戦っていると言う事に気づいて欲しいんだ!僕も昔はそーだった…………そして僕はもっと他の楽しみを知っている!!それは……………………スイーツだ!!!!」
声高らかにレオナルドはスイーツと叫んだ。
「「「「「「スイーツ??」」」」」」
「スイーツとはなんじゃ?スポーツなら知っているのじゃ!!!」
魔国の今後を憂いてくれているのかと全員が聞き入っていたが、最後に突如謎の言葉スイーツと言う単語を聞き、魔人全員がポカーーンとした顔をして、口を開けている。魔王に至っては全く検討はずれな事を言っている。
「ふふ、魔王、スポーツもストレス発散になって楽しいと思うよ。ただ、スイーツはもっと良い物だよ!スイーツとは甘い食べ物で、一瞬で心が躍る食べ物の事さ」
そういうと、レオナルドは魔法で魔人達の目の前に色とりどりのスイーツを出した。魔王と魔人達は初めて見る目の前のキラキラと輝く宝石の様な綺麗な食べ物を見つめた。そして、初めて嗅いだ鼻をくすぐる甘い匂い。
「そのキラキラして、良い匂いがするものがスイーツまたはお菓子と呼ばれるものだよ。もし、僕の言う事をちゃんと聞くなら君達の目の前のスイーツは食べても構わないよ。僕からのプレゼントだ。でも、もし、言う事が聞けないというなら、こちらは死をプレゼントしよう。どちらを選ぶかは簡単だよね?」
今まで見たこともないキラキラな食べ物。匂いも相まって、この目の前にあるお菓子に抗える者は魔人達の中にはいなかった。皆んなドキドキと恐れを抱きながらお菓子を口に運ぶ。口に入れた瞬間、皆驚きと興奮、初めての強烈な甘みに脳が溶けていく様な感覚を覚える。
「これが……本当のおい……しい………?…」
「なにこれ…………なにこれ…………」
「うぉぉぉお…………大魔王様ぁぁーー」
「うま過ぎるのじゃ…………」
語彙力をなくした魔人(魔王も含む)達が衝撃を受けその場に立つくす。レオナルドはその様子を見て満足気な顔で魔人達に話しかける。
「自分達が殺そうとしていた種族の文明は進んでるんだよ。食べ物以外もそうだ……他の分野も僕達はかなり遅れている。だから他種族達と仲良くし、技術を教わり、僕達の国でも美味しい物を食べれたり、戦う以外の娯楽も作ったり、この魔国を発展させよう!!」
レオナルドの言葉は耳には入ってくるが、皆、お菓子の余韻と衝撃でノックダウンしていた。今まで下に見ていた者たちが、実は自分達よりも遥かに良い暮らしをしているのではないかと、想像したこともないほど美味しいものを食べて初めて気づいたのである。しかし、それでも人間や、他の種族を下に見ている魔人がレオナルドに発言する。
「だ、大魔王様、あの人間達を奴隷にして魔国で働かせるのではダメなのですか?俺達も学ばなければならない理由が分からないんですが…………」
一人の魔人が発した言葉に次々と「そうだ、そうだ」「その方が楽しそうだ」などと声が上がる。やがてその声は大きくなり、ざわめきを生む。
(はぁ……魔人達って馬鹿なのか?もう僕の言った事忘れてる?僕はお菓子を食べたら従えって言ったよね?僕のお菓子返して欲しいんだけど…………全員殺した方がやっぱり早いのか?あーー、バカばっかり…………)
レオナルドは目を細めてため息を吐きながら魔人達を見下ろす。その圧に魔王はゾクリと体を震わせる。
「大魔王様、落ち着くのじゃ……あの、あれじゃ、みんな、、…………悪気はないのじゃ!!」
なんのフォローもなってないが、レオナルドをなんとか落ち着かせる為に話す。
「悪気は無いねぇ…………」
レオナルドは魔王に笑顔で問いかける。と、その瞬間レオナルドから恐ろしい程のオーラが溢れ出す。魔人達は騒ぎ立てていたが、大魔王様の前だと言う事を瞬時に思い出し、静かになる。
「お前達に2度は言わない、従え、考えるな、人間やその他の種族と黙って仲良くしろ、そして、美味しいご飯とお菓子を作ること、後はそうだな…………お前達全員に首輪を着けるね……これの首輪は僕との約束を破ったと判断した時に力を発揮するものとだけ伝えておく。じゃぁ解散して良いよ、後はお前たち次第だからね?」
笑顔でそう言うとバルコニーから城の中に戻って行った。
「まつのじゃ…………大魔王様!!置いていくな!!なのじゃ!!」
魔王も焦りながら後をついて行った。レオナルドは椅子に腰掛けると先程とは違い、柔らかい雰囲気で、眉毛をへの字にし、コテンッと首をかしげ魔王に向かって問いかける。
「魔王、この作戦上手くいくと思う?」
髪がサラリと揺れ、キラキラと輝く白銀の髪と瞳で、心配そうに尋ねてくる……厳しく冷酷な先程の態度とは打って変わり、守ってあげたくなる様な可愛さを見せるレオナルド。魔王は初めてのギャップ萌えを知った。そして、産まれて初めて、自分の心臓がうるさいくらいに高鳴った。
(な、な、な、なんじゃこの胸のドキドキは!しかも、このキュンッと胸を締め付ける様な痛み…………妾は死ぬのか?ま、まさか!大魔王様の何かの魔法なのでは無いのか?怖いのじゃ、怖いのじゃぁぁ!!なんだか顔も熱くなってきたし、妾はどうなってしまうのじゃーーー!!)
魔王は顔を赤くして俯いたまま答える。
「大魔王様の作戦はきっと上手くいくのじゃ!!あのスイーツというものはとっても美味しかったし、妾も毎日食べたいのじゃ!!あと、あと、あと、大魔王様は怖いよりも、今の素のままの大魔王様が好きなのじゃ!妾に色々教えてくれる時もその感じが良いのじゃ!!ずっと妾に優しくして欲しいのじゃ!!!ずっと、ずっと側にいて欲しいのじゃ!!」
つい、好きという感情を口にしてしまう魔王。しかし、言った本人はその感情に気づかぬまま告白している。そして、言われた方のレオナルドは自分の好きな物を肯定された事が嬉しくて、初めて魔王の前でアデルの前で見せる様な本当笑顔を溢す。その圧倒的なスマイルをみて魔王は、更に顔が茹蛸になっていくのだった。
今日ここに一人、本人が自覚せぬまま恋する乙女が爆誕した。




