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魔人達の思惑

 今後の方針が決まった私達は港町の朝市に来ていた。まずは食料を買い込んで、今後の魔物退治の旅に備える。


「先生、どこに魔物が出るとか分からないですけど、どーやって襲われている町を探すんですか?」


 新鮮な魚を選びながら先生に問いかけた。


「ふぉふのふゅーほぉふにひぇんふひぃらひぇひぇもらっふぇるふぁら、ふぁいふぉーふ」


 訳:僕の従僕に全部調べてもらってるからだいじょーぶ


 熱々のたこ焼きをモグモグしながら先生が答える。相当熱いらしくまだハフハフしていて、めちゃくちゃ可愛い。そして、私には解読不可能な言葉だったが、最後の「ふぁいふぉーふ」だけは分かったので大丈夫なんだなぁ〜と思い、放置する。すると、


「はぁ〜熱かった〜〜、はい、アデレイド嬢もアーン?」


 意地悪な顔で熱々のたこ焼きを口に差し出してくる。たこ焼きは好きだが、このたこ焼きは危険なほど熱そうだった。逃げ場がなくてしょうがなく口を開け、たこ焼きを受け止める。思った通り美味しいよりも熱さが先に来てハフハフで喋れなくなる。


「ふふ、真っ赤になってたこ焼き食べてる君は可愛いね」


 意地悪な先生が口の端をあげて笑う。その後も先生に翻弄されながらも二人で市場の買い物を楽しんだ。



 ※ ※ ※


 その日の夜、トーマスから連絡が入る。


「レイシス様、魔物の情報ですが、フラントルの街付近で大量発生してる様です。王国騎士団は明後日出立する様ですので、気づかれずに掃除するなら明日には動いてください」


「さすがトーマス、優秀だね。今度ご褒美あげようか?」


 揶揄うような声がする。


「貴方のご褒美ほど怖いものはないので辞めときます」


 ハッキリと拒絶の声で即答される。レイシスは笑いながら


「はははっ、僕のご褒美断るのトーマスくらいだからね?」


 断られたのに上機嫌なレイシス。それに対して心底嫌そうな声で


「はっ?受け取る人の顔が見たいですよ。私は暇じゃないので通信切りますよ」


 通信が切られる。レイシスは笑顔のまま明日の事を考え始めた。



 ※ ※ ※


「フラントルの街に魔物が大量発生してるらしいよ!僕たちが王国騎士団より先に殲滅させて、あの王様に恥をかかせよう。そして、もし、魔人がでたら何が目的か聞きだすから、魔人が現れてもすぐに殺さないでね?アデレイド嬢」


 美味しい朝ごはんを食べながら先生の話を聞く。確かに魔人に何も聞かずに前回殺してしまった。魔人が何を考えてるのか、何が目的か分からない。多分人間を全滅させたいだけな気もするが…………まぁ、聞いてみないと分からないもんね、、


 ご飯を食べ終わり、準備を整えたら早速先生と影移動でフラントルの街に入る。先生がこの街の領主と話し合いをし、守りと攻めの陣形を決めていく。私はフリーで魔物を倒していくだけの戦闘要員だからサーチで魔物の気配を探っていく。


「先生!先に魔物殲滅を開始してて大丈夫ですか?」


「うん、よろしく頼むねぇ、すぐ応援にいくよ」


 先生に許可をとり魔物の群れに突っ込んでいく。普段であればおとなしい魔物までいる。これは魔人が居る予感しかしない。


(殺っても殺ってもキリがないなぁ………先生達まだ来ないかなぁ)


 アデレイドは分身を出して手当たり次第襲ってくる魔物を迎え撃つ。魔物は操られているからか、恐れも痛みも無いように襲ってくる。なので傷ついても、血が噴き出てもお構い無しだ。


 とうとうアデレイド一人では魔物を抑えきれなくて街の方へ溢れ出していく。


「うわぁぁぁ〜!!もう多すぎるよぉぉぉぉ先生ぇぇぇぇ」


 半べそをかいて嘆いていると、後ろから増援部隊がやってきた


「うぉぉぉぉーーー加勢に来ましたぞーー!!」

「うぉぉーーおーーまーーたせーーしまぁーーしたぁーーー」

「ぬぉぉぉおーーーー」


 野太い声の増援が取り漏らした魔物達を殲滅していく。


(増援のタイミングめちゃくちゃ良いな………さすが先生だけど、ちょっとキツかったよ…………)


 チベットスナギツネのような顔になりながら戦い続ける。


「アデレイド嬢、遅れてごめん大丈夫だと信じてたけど、もう疲れちゃった?少し休む?」


 レイシスが優しい声で問いかけてくる。心配そうに覗く妖艶な藤紅色の瞳が前髪からチラリと覗く。ドキリとして顔が赤くなる。それを誤魔化すように魔物を派手に吹き飛ばしながら


「げ、元気一杯に決まってるじゃないですか!!魔人だって今なら一人で一捻りですよ!!」


「ふふ、僕の弟子が元気いっぱいで良かった」


 先生の大きな手で頭を優しくなでなでされる。アデレイドは先生のなでなでが好きだった。心が落ち着いてポカポカな気持ちになるからだ。そんな幸せタイムの中、突如巨大な魔力がアデレイド達を襲う


 すると、目の前に現れた一人の魔人。両腕を腰に当て仁王立ちでこちらを睨んでくる。アデレイドは先生の言いつけを守る為に攻めから守りに変えて、今だけは殺気をしまう。


「あぁ〜うっぜぇぇ〜なぁーー、人間風情が俺様の邪魔すんじゃねぇーーよ!殺すぞ雑魚ども!!」


 イラついた顔の魔人が一番弱そうな見た目のアデレイドをめがけて斬撃を飛ばしてくる。アデレイドは敢えて避けずバリアで斬撃を蹴散らす。それを見た魔人は目を丸くした。いかにも弱そうな人間の子供を確実に仕留めた筈だったのに、何故か無傷で自分の攻撃を無効化したのだ。心臓が嫌な音を立て、魔人は初めての冷や汗を流す。


「うわぁ〜さすが魔人だねぇ〜、弱そうな子供を狙ったんだろう?でも、残念だったね、僕の弟子は君より強いよぉ、はぁ、可哀想に、雑魚なのは君だったね?」


 先生が飄々とした声で魔人を煽る。魔人は体をブルブル震わせ、顔を赤くする。


「うぁぁぁぁぁぁーーーーくそぉーーーーーーお前からやってやるよぉぉぉーーーーーー!!!」


 魔人がレイシスにすごいスピードで突っ込んでくる。そして、勢いをつけたままレイシスの心臓めがけて禍々しい魔法を放つ。



       シュッ



 魔人が放った魔法が一瞬でレイシスの体に吸い込まれるように消えていった。レイシスはいつもの揶揄うような笑顔で魔人を見下ろす。魔人は信じられないと言うような顔でレイシスの顔を見つめながら固まっている。


「ごめんね、僕天才なんだよねぇ〜、じゃぁ次はこっちの番ね?」


 そう言うと、警戒する魔人の口にヒョイっと何かを入れる。そして、飲み込ませるためか頭を掴みシャッフルする。魔人は何が起こったか分からない様で抵抗が遅れてしまい、口に入ってきた薬をシャッフルとともに飲み込んでしまう。


「なっ、、何を飲ませ……た、、あっ、あ、あ…………」


 魔人は目をトロンとさせて、おとなしくなった。


(えっ!?先生魔人に何をしたの?さっきまであんなにギャンギャン怒り散らかしていたのに、先生をトロンとした目で見つめている…………色んな意味でめちゃくちゃ怖っっ!!)


「先生…………そのくすりぃ……………………」


 先生を恐る恐る見る。そして怖かったが、思い切って話を切り出してみる。先生はとってもツヤツヤした顔で


「ただの自白剤だよ?」


 アデレイドはジト目になる。自白剤だけであんなにトロントロンの目になるわけ無い…………そしてあの先生のツヤツヤの顔…………しかも声がウキウキしてる気がする!!絶対に自白剤だけじゃ無い………絶対に!!


 しかし、触らぬ神に祟り無し。ここは自白剤だと信じ込もう。先生は魔人の頭を掴みながら


「じゃぁ、全部話してもらおうかな?まずは、魔物を使って人間を襲ったのはなんで?」


「人間は弱いが……数が多い……魔物を使った方が効率が……良い…………人間は魔人の奴隷だから…………効率よく奴隷を…………集めようとしてるだけ…………」


「奴隷ねぇ〜、、じゃぁ、これは誰が指示してやってるの?」


「…………魔王様…………」


「はぁ???あの魔王が私達を奴隷にしようとするわけ無いじゃない!!魔王はお兄様に指導されているのよ?完璧なお兄様に指導されてそんな風に育つわけ無いじゃない!!!」


 あのちびっこ魔人の魔王がこんな事思いつくわけがない。しかも、お兄様が教育係なのに裏をかいて人間奴隷計画など立てられるわけ無いのだ。しかし、自白剤で答えてるということは……嘘をついていないと言うこと…………

 しかし、絶対に有り得ないそんなこと、、考えれば考える程にアデレイドはパニックになっていく。


「アデレイド嬢、落ち着いて?魔人君、もう一度聞くよ?誰の指示でこんな事してるの?詳しく教えてくれる?」


 魔人がトロンと焦点の合わない目で答える。


「…………魔王様…………




 ………………の為に…………我々は…………


 ………動いている………それに…………


 …………大魔王様…………も喜んでくれる……」


 プッツン、


 アデレイドの堪忍袋の尾が切れた。勝手な思想で魔王の為、大魔王の為と、そんな傍迷惑でしかなく、まったく望んでいない事の為に勝手に暴走してしまっている魔人達に怒りが湧いてきたのだ。


「…………っっんのバカ魔人が!!!勝手に暴れ回って、お兄様が喜ぶ訳ないじゃない!!!お兄様の邪魔しないで!!あなた達みたいなのが居るから私とお兄様が離れ離れになっちゃうのよ!!ぶっ殺してやる!!魔人は全員居なくなれ!!!」


 怒りに任せて魔法を魔人めがけて放つ。それを先生が魔法で防ぐ。


「アデレイド嬢、気持ちは分かるけど、僕の邪魔はしないでね?僕はこの魔人で実験をしたいから生かしてるんだよ?暫く黙っててくれるかな?」


 先生は口元はいつも通り笑顔だが、こちらに向ける圧が凄まじかった。そして、自分がついカッとなってしまった事を反省する。先生には先生の考えがあったのに私がそれを台無しにするところだった。


(私って短気なのかも……そして、怒りに任せて自分勝手に魔人を殺そうとするなんて、私は大馬鹿者だ…………もう少し冷静に物事が見れる人になろう)


 心の中で一人反省会をし、それからは先生の邪魔をしない様に事情聴取を眺める事に徹した。何度か怒りが込み上げてきたが、言葉を飲み込みグッと堪えた。一時間程の尋問の末、分かった事は、

 魔人は今勝手に魔国から出れない状況で、出ると大魔王に罰を喰らう。そこまでは私達が知っている事だ。

 しかし、その理由が、弱い人間が今強くなり魔人をも超える力を持っている。なので、魔人を人間から大魔王様が守る為の国外外出禁止の通達だと言う噂が広がっているらしい。ならば、大魔王様と、魔王様の憂いをはらう為に人間を排除、または奴隷として連れ去ろうと言う事らしい…………


(お兄様……あんなに頑張っているのにこんなバカな魔人達しか居なくて可哀想……勘違いでお兄様のやっている事が無駄になるなんて…………そして、私達家族と会えない理由がこんな奴らの所為なんて…………)


 怒りよりも、お兄様の苦労が報われていないのが悲しい。これはお兄様に伝えなければいけないが、お兄様が落ち込んでしまったらと思うと二の足を踏んでしまう。すると、横から先生が


「アデレイド嬢、レオナルド君には早めに伝えた方がいいと思うな…………僕もレオナルド君を手助けすることができると思うから、今回の事報告するなら僕も同席したいんだけど、いいかな?」


(先生がお兄様を助けてくれるなら百人力じゃない??!!?もちろんYESの一択しかないよ、早くお兄様に伝えなくちゃ!!)


 その時の私はそれが一番の解決策だと思い、先生の助け船に乗り込んでしまったのだった。


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