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ジェイクと国外旅行

 王子襲来ですっかり疲れたアデレイドは午後からはリフレッシュもかねて薬草を摘みに行く事にした。


「あら!久しぶりね、アドラちゃん今日は薬草摘みかしら?」


 カウンターのマリアンヌさんに微笑まれる。


「お久しぶりです!はい!薬草摘みにきました。なんだか身体を動かしたくて、討伐も良いかなって思ったんですが、一人じゃ怒られちゃうので」


 舌をペロっと出しておどけて見せる。


「そうね、アドラちゃん強いかもしれないけど、それでも一人で魔物に襲われて怪我したら悲しいわ」


 マリアンヌさんは心から心配してくれている。なんだかくすぐったい気持ちになり、心がポワポワあたたかくなった。


 依頼を受注し、薬草が生えている草原にやって来た。


「はぁ〜〜、やっぱり外で身体を動かすと気持ちがいいなぁ〜どんどん薬草取っちゃうぞ〜!!」


 張り切って薬草を摘んでいると


「アッ…………アデレイドッッ!!??」


 振り向くとジェイクがこちらを指差し、目をまん丸にしてワナワナと震えていた。


「わぁ!ジェイク久しぶり、ここを離れる時直接言えなくてごめんね、あの時は急いでいて……ジェイク宛の手紙をギルドに頼んだんだけど、読んでくれた?」


 嬉しさのあまりジェイクの手を取り一気に捲し立てた。そして小首を傾げる。ジェイクは顔を真っ赤にして


「ちっちっちっ近いって!!アデレイドお前いっつも距離感おかしいぞ本当に!!貴族だろ!!」


 そう言い手を振り払わず身体を少し遠ざけた。アデレイドの手を振り払ったら怪我をしてしまうと考えたからだ。そして、心配になって尋ねた


「なぁ、長旅だっだろうけど、本当にどこも怪我とかしてないのか??嫌な事とかされて大変じゃ無かったか?それに、お兄さんは……無事だったんだよな?」


 心配した瞳がアデレイドを真っ直ぐにみつめる。その瞳が子犬のようだ、効果音でクゥーーンと犬の鳴き声が聞こえてきそうだった


(かわいいいぃぃぃいーーー、ジェイクしばらく会わないうちに子犬身?が増してる気がするよぉぉおワシャワシャに撫で回してギューしたいよぉーー)


 アデレイドが変態思考で見てるとは思いもしてないジェイクは、変態思考が加熱して顔を蒸気してうるうるし始めたアデレイドをみて更に心配を募らせた


(泣きそうなくらい嫌な目にあったのか?俺のバカッ!帰ってきたばっかりで傷のいえてない女の子に何てこと聞いたんだ、、クソッ)


「ごめっ………」


 ごめんっと言いかけたと、同時にアデレイドが話し始めた。


「心配してくれてありがとジェイク!大変な事はいっぱいあったけど、嫌な事は無かったよ、今まで体験したことない事ばっかり起こって大変でさぁ、まずはダマレスカであった事なんだけど…………」


 今度は今まで起こった事を身振り手振り大袈裟に話した。ジェイクが楽しそうに聞いてくれるので余計に調子に乗ってしまった。


「お前のお兄さんカッコイイな!……俺達の為に残って魔人を躾けるなんて、そんな事が出来るのなんてアデレイドのお兄さんくらいだよ!!!」


 尊敬の眼差しでジェイクが見てくる。尻尾をブンブン振っているような幻覚が見える。かわいい……


「それにしても、魔国に着くまでの道のり大変だったな、俺、外の国行ったことないから羨ましいな……いつか海とか見てみたいなぁ…………」


 ポツリとジェイクが呟く


「じゃぁ一緒に海に行ってみる?」


「えっ???」


 数秒見つめ合う二人。ジェイクは目をまんまるに、アデレイドは悪い顔でニヤニヤしている。


「私の瞬間移動で行けるよ!!海は美味しい食べ物沢山あってオススメだよ!私も海の幸食べたくなってきちゃったから今から行こうよ!!」


 ジェイクの両手を握り行こうとせがんでみる。ジェイクはまさか自分が海に行く日が今日になるとは思っても無かったのでまだ呆けている。それ程外の国に行くというのは危険というのもあるが、憧れでもあった。自分がお金を稼いて安全に行くか、大人になって力をつけてから冒険者として旅をするものだと思っていたのだ。


「おーーい、ジェーーイーークーー、どーーするのぉぉーー??」


 ハッと我に返り、こんなチャンス今後あるか分からないのでアデレイドに甘えて行くことにした。


「じゃぁ!決まり!!私と手を繋いでね、じゃぁ行くよ」


 一瞬の光に包まれ、光が消えたその時にはもう目の前には海が広がっていた。


「うわァァァァァァーーーーーーー」


 ほっぺが紅潮し、目をキラキラさせながら海を見つめる少年ジェイク。初めての海に感動し、動けないでいる。

 アデレイドはと言うと、感動しているジェイクを見てニンマリしていた。


「アデレイド、連れてきてくれてありがとな。俺、こんなに綺麗なもの初めて見たよ。これ全部しょっぱい水なんだろ?そんで、この海の中にもいろんな生き物が暮らしてるんだろ?海って凄いな!!」


 興奮と感動で目をウルウルさせながら笑顔でアデレイドを見る。アデレイドはニヤニヤするのを抑え


「ジェイクがこんなに海好きなら、今度は水着を買って泳ぎに来よう!!そして、今日は海の幸いっぱい食べて楽しもう!!」


「うん!!」


 ジェイクの可愛い返事を聞いて、早速屋台が並ぶ通りに来た…………来た、が、何故か屋台がどこもやっていない。前に海に来たときはめちゃくちゃ活気にあふれていたのに……ジェイクも戸惑った顔でどことなく悲しそうな顔をしている。


(こんな顔させたくてここに来たんじゃないのに!!かわいい笑顔が見たくてきたんだよ、私は!!)


「今日はお休みなのかな……?」


 ジェイクの犬耳がしょんぼり下がっている(アデレイドだけに見えている)


「せっかく来たんだし諦めるのはまだ早いよ!!

港に行ってどこかやっている所ないか聞いてみよう!!」


 仲良く手を握って海沿いを歩きながら港を目指す。すると、海の男達が群がって何か話し合いをしていた。何か嫌な予感がしたが、近づいて屋台の事を聞いてみる。


「あの〜、さっき屋台街に行ってみたんですが、どこも閉まってて、私達海の幸を食べに来たんですが、どこかで食べれる所ないですか?」


 小首をコテンッと傾げ、いつものようにかわいこぶってみる。


「おう、嬢ちゃん達は観光できたのか?タイミングが悪い時に来たなぁ……実はよぉ〜海に巨大な魔物が現れてよぉ〜今俺らで退治できるか相談してた所なんだ」


「もしかしたら俺らじゃ対処できなくて他のギルドから応援を待たないと行けねぇんだけどよ、それまで漁が出来なくなるから屋台とかはしばらくお休みなんだ、すまねぇな嬢ちゃん達」


 意気消沈し元気の無い漁師たち、その中に前にアデレイドに魔石をくれたおじさん達もいた。


(あっ!!あのおじさん達!!あの魔石のおかげで人魚の人達と話し合いができたんだよね、ありがたかったなぁ〜、よし!!これは恩返しできるチャンス!!)


「あの〜、その巨大な魔物ってどんなものか分かってるんですか?」


「あーー、今回発見した魔物はクラーケンなんだが、これがいつもよりデカくてょ〜………今回はギルド頼るしかねぇ〜かもなぁ………あんなデケェの見たことねぇよ」


 なるほどね、と、うんうん首を縦にふっているアデレイド、ジェイクはクラーケンを知らないのかキョトンとした顔をしている。


「まぁ、今回は残念だったが、今度この街にまた来て楽しんでってくれよな!!」


「いえ!今日楽しみたいのです!!私がそのイカの魔物を退治してきましょうーーー!!」


 腕を組み、胸を反らし、自信に満ち溢れた顔で皆の前に立っていた。アデレイドの後ろからはドーーーンッと効果音がしそうだ


 一瞬の静寂の後、誰からともなく「ぷっ」「ぷっふふ」口の端から笑いがこぼれだした。そしてとうとう、男達は大笑いした。


「あはははは、嬢ちゃんじゃ無理だろ〜俺らでも無理なのに、あはははっ……でも気持ちだけはありがとうな!!」


「そんなちっさいナリで威勢はいいな。ガハハハ、嬢ちゃん気に入ったぜ!!将来漁師になれ!!」


 みんなアデレイドの言ったことを本気にしていない。まぁ、当たり前である。小さい女の子がどうやって巨大なイカを退治できるっていうのか……普通はそうだ、ただ、アデレイドは普通の女の子ではない。


「おじさんたち、おれらこれでも冒険者なんだ。これでもアデ……アドラは優秀な冒険者で、俺も魔物退治はそこそこ強いんだぜ?おれらにクラーケン退治任せて欲しい!!海の魔物は初めてだけど頑張るよ!!」


 漁師のおじさん達は冒険者と言う言葉を聞きザワザワしだした。子供だが、冒険者なら強いかもしれない、不安だがここまで自信満々なら任せてみようかと…………。


「ほ、本当に大丈夫なのか?」


「はい!!任せてください!!」

「うん!任せてくれ!!」


「なら、一つ約束してくれ、危険を感じたらすぐ引き返してくる事、これだけは守ってくれ!!」

「嬢ちゃん達が勝つって信じてるぜ!!待ってるぜ!!」

「よろしく頼むぜ!!」


 おじさん達の元気な見送りを背に船で目的地まで向かう。


「アデレイド、作戦どうする??前の狩りの時と同じでアデレイドがロープでぐるぐる巻きにしておれが氷の弓矢で撃つか?それともおれも魔法上達したから、おれがクラーケンを氷で凍らせてアデレイドがトドメ刺すか?」


 ワクワクしながら前のめりで作戦を立てるジェイク。ジェイクも学園で学び成長していたのである。


「ジェイクの魔法見たいからジェイクに凍らせてもらって私がトドメ刺そうかな!!」


「よし任せとけ!!」


 お互いに笑顔で親指を立てる。そして、そんなこんなでクラーケンが目撃された場所まで辿り着いた。周りは海が広がっており、逃げ場所はない。


 おじゃべりしながら楽しく待っていると、巨大な何かがサーチに引っかかる。ものすごいスピードで近づいてきた。


「ジェイク、イカが近づいてきてる!!船に捕まっててね」


「わ、わかった!」


 恐怖半分、期待半分の顔でジェイクが答える。


 ザバァァーーーーーーー


 船を飲み込むように下からクラーケンが現れる。しかし、それをアデレイドはタイミングよく風の魔石で船ごと避ける。


「ジェイク大丈夫?イケる??」


「うわぁぁぁあーーー、ちょっと待って!!船が飛ぶなんて、、き、聞いてないよ、アデレイド!!」


 船に必死にしがみつきながら半泣きのジェイク、クラーケンを全然見ていない。そんなバタバタしている私達を他所にクラーケンは獲物に逃げられた事に怒り狂い攻撃を仕掛けてくる。船めがけて足を激しく叩きつけてきた。


 バシーーーーーンッッッ


 しかしアデレイドのバリアによって弾かれる。攻撃を受けて、初めてジェイクはクラーケンに目をやる。


「で、でけぇーーー…………」


(俺、コイツ凍らせる事できるのか??ここまでデカいとは思わなかった…………でもやるしかないよな!!海の幸の為だ!!)


 おじさん達の為じゃなく、海の幸の為になってる食いしん坊なジェイク。


「凍れーーーーークソデカクラーーーーケーーーーン」


 クラーケンが徐々に凍っていく。が、ジェイクの魔力が足りなく足2本凍っていない。クラーケンもしぶとく動く足を激しく動かして抵抗する。


「クソッ、はぁ、はぁ、ごめんアデレイドいけるか?」


 ジェイクは魔力を使いすぎて船に捕まっているだけで精一杯だった。そんなジェイクを見て、笑顔で答える。


「大丈夫だよ!凍らせてくれてありがとう、すぐやっつけちゃうんだから!!」


 凍って動かないクラーケンの頭をめがけて光のビームを放つ。すると今まで動いていた足がザバァーーンとゆっくり落ちていく。ジェイクの氷魔法とアデレイドの光魔法、二人の連携で無事倒すことができたのだ。


「やったね、ジェイク!!イカヤローを二人で倒したよーー」


「やったぁぁぁあーーアデレイドのおかげだよありがとな!!」


「ううん、二人の連携で倒したんだから私だけの力じゃないよ!!ジェイクの魔法が上達しててビックリしちゃった」


「えっ?そうかな?ふふっ照れるな、、」


 可愛いジェイクのはにかんだ笑顔にアデレイドは癒された。これが一番のご褒美かもしれない。


 その後はクラーケンがデカすぎて収納バックに入らなかったのでアデレイドのロープでぐるぐる巻きにし、風の魔石を上手に使い船で引きずってきたのであった。


「「「おおぉぉぉぉぉーーーーーー!!!」」」


 おじさん達が信じられないものを見るかのように感嘆の声をあげている。


「オメェーらすげぇな!ちぃせぇのにこんなバケモンを二人で倒すなんてよぉ!オメェ達の為に今からバーベキューを準備するからよぉ、食べてってくれよな!!」


「バーベキューーー??!!嬉しい!ありがとうございます!!」


「おれ、バーベキューなんて初めてだ!!何なのか分かんないけど楽しみ!!」


 アデレイドもジェイクも子供らしい顔つきになり目を輝かせて二人で手を握りしめてワクワクしている。その様子を見て漁師達はさらに嬉しくなり、張り切って準備に取り掛かった。


 どこかにしまっておいたのか、貝類や、魚、先ほどのクラーケンやエビ、カニ、焼きそばや、たこ焼き、美味しそうなあら汁の様なものなども用意されている。


「ううわぁぁーーー、これ全部食べてもいいの??」


 完全に子供に戻っているジェイク、みんなあたたかい目で見守る。


「おう!みんなで食べてお疲れ様会だ!!たっぷり食べてくれよな!!オメェらにはジュースもあるから喉に詰まらない様にジュースもちゃんと飲めよ!ガハハハハ」


 優しい漁師達と、いつの間にか集まった街の人達と一緒にバーベキューを楽しんだ。ジェイクは初めて食べる海の幸にひとつひとつ驚いていた。特にカニが気に入ったようだ。この世界でもカニは高級品なのでジェイクは舌が肥えているのかもしれない。


 最後にアデレイドとジェイクが子供だからか、ジェラートがおやつとして出てきた。ジェイクは初めてのジェラートに「つ、つめたい!」「と、溶ける!!」と感動して一口食べるごとに噛み締めて食べていた。


「そーいえば、嬢ちゃんと坊主はアドラとジェイクって名前で良かったか?後でギルドに報告させてもらうな?俺らの恩人だからできるだけ報酬上乗せしてもらうから楽しみにしとけよ」


 アデレイドは恩返しのつもりで、ジェイクは海の幸を食べたかっただけで助けたはずが、まさか報酬までもらえるとは。


「バーベキューが報酬でもいいですよ、おれ、こんな美味しいもの初めてだったし………」


 欲がない少年に漁師達は全員心を鷲掴みにされた。


「坊主!!飯は俺らが育ち盛りのオメェ達に食わせたかっただけだから気にすんな!!ちゃんと報酬もらって今度は俺らの街の屋台に来いよ!」


「うん!!分かった!そうする!!」


 無邪気な笑顔と漁師達のにこやかな笑顔でバーベキューは締め括られた。おじさん達に別れを告げてアデレイドとジェイクは自分達の国に帰ってきた。


「アデレイド、今日はありがとうな!おれだけじゃ体験できない事たくさん体験できた。アデレイドが貴族だって事忘れちゃうけど、おまえ、大丈夫なのか?いっつもあんな無茶して?」


「だ、大丈夫だよ!!現に大丈夫だったでしょ?クラーケンだって倒せると思ったから名乗り出たんだし!!」


 偉そうに胸を張るアデレイド、それを訝しんで見つめるジェイク。しかし、今日、楽しかったのは事実、ジェイクはフフッっと笑って


「まっ、貴族って言っても、最初からアデレイドはアデレイドだったもんな。今さら大丈夫かどうかは関係ないか。改めて今日はありがとなアデレイド、また遊ぼうな」


 アデレイドはアデレイドだって言ってもらえて何故かその言葉がアデレイドの心に突き刺さる。学校ではジェイクとは教室も離れているし、差別もある。そんな中でジェイクは変わらずに接してくれる本当にジェイクの心は素直だ。


「ありがとうジェイク大好き!!」


 抱きつきたくなる気持ちをグッと堪えて笑顔に留める。


「おれも大好きだぞ!」


 お互い照れ笑いをしてその場で解散した。


 後日談だが、漁師達からの報酬はジェイクにとっては今まで見たことのない金額で腰を抜かし、しばらく熱でうなされる事になったのであった。

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