日常は大事
お母様の体調が回復するまでアデレイドはお母様の側を離れずリハビリを手伝った。そして、お母様の体調が回復してからは学校の準備をした。自分が居ない時に進んでいた勉強を復習していた。そんな忙しい日々から少し落ち着いた頃
「そういえば、先生に帰って来た事を伝えてなかったな…………」
先生はお兄様奪還の為に魔物討伐や魔法の訓練をしてくれた。それなのにすっかり連絡する事を忘れていた。
「先生〜いますか?」
連絡石で先生を呼んでみる。
「アデレイド嬢、久しぶりだねぇ〜元気??レオナルド君には会えたかな?それともピンチだったりする??」
先生も心配してくれてるみたいだった。いつもよりお喋りな気がする。
「先生!!直接会って話がしたいです!!先生の研究室に行っても良いですか?」
「もちろん!僕も今研究室にいるからちょうどいい」
瞬間移動で研究室に着くと先生は魔石付与の術式の研究をしていた。そして、こちらを見る事なく会話をしてきた。
「アデレイド嬢、レオナルド君は無事に戻って来たのかな?それとも魔王城に残るって言った?」
先生は全て知っていて聞いてるような口ぶりだ。しかし、先生が凄いことは前から分かっている事だ。一々気にしていられない。
「お兄様は無事でしたが、魔国からはまだ帰れない状況で、落ち着いたら帰って来ます」
「やっぱり僕の言った通り無事だったね、一時期の君は見てられなかったからねぇ〜、これでまた元気な君が戻って来るならお祝いしなきゃだね」
そう言ってこちらを見て笑った。あの綺麗な顔は隠れているが、一度見てしまったあの顔はそうそう忘れられない。
「そういえば、お兄様を奪還しに行く途中で獣人や、人魚に会って仲良くなりました!!あと、魔石の多様性を知りました。私の知らない事がまだまだ沢山あります!!」
「本当に言ってる?僕、獣人も嫌いだし、人魚はもっと嫌いなんだけど……………あいつら人の言う事なんにも聞かないし、無視しても怒るし、攻撃したらもっとめんどくさそうだったし?アイツらは関わらないのが一番だと思うんだけど?」
ゲェと舌を出して見せる。心底嫌な事が伝わって来る。そんな子供っぽい先生を可愛く思い笑ってしまう。
「アデレイド嬢、今の話で笑うとこあった?あんなヤバい奴ら手懐けるって…………君のコミュニケーション能力ぶっ壊れてるんじゃないの?」
「どんな人だって仲良くなれますよ!!獣人は毅然とした態度でいれば舐めて来ないですし、人魚達は話し合えば分かってくれますよ!!先生根気が足りてないのでは?」
ドヤ顔で先生に言う。しかし、根気と聞いて嫌そうな顔をするレイシス。天才なので根性論的な事が嫌いなのである。
「根気ねぇ…………」
「それより!魔石と言ったら隣の国のダマレスカかな?あそこは良いよねぇ、新しい事沢山試しててさ、僕もポートをこの国に作りたいのに反対されてるんだよねぇ、、国王の頭がかたすぎて困るよ」
「ポート良いですよねあれ!!ビックリしました!瞬間移動を再現するなんて仕組みが気になります!!先生は仕組み分かってるんですよね?今度教えてください!!」
つい興奮して話してしまう。先生は微笑んで「いいよ、後でね」と呟いた。
ふいに扉を叩く音がする
トントントンッ
「レイシス様入ってもよろしいでしょうか?入りますよ?」
「来客中だよ」
レイシスの返事と共に扉が開いてしまう。トーマスはいつも誰も来ることのない研究室に人が居るとは思わず扉を開けてしまう。扉のドアノブを持ったままアデレイドの目の前で固まってしまう。
「先生、この方は…………」
「彼は…………
レイシスがアデレイドに紹介するのを遮りトーマスが挨拶を始めた。
「挨拶が遅れました。レイシス様の従僕トーマス・ラグドールと申します。アデレイド様でいらっしゃいますね?私の無作法、ご無礼申し訳ございませんでした。お許しいただけますでしょうか」
45度に曲げられた綺麗なお辞儀だ。しばらく見惚れてしまったが、ハッと正気に戻り
「いえいえいえ、私が勝手に押しかけた様なものなので、こちらこそいつもの日常を崩してしまってごめんなさい」
「いえ、アデレイド様が居らしてるのに関わらず、勝手にドアを開けてしまった私が悪いのです。申し訳ございませんでした。そして、お茶も用意せず気が利かず申し訳ございません。すぐにご用意致しますので、どうか、我が主とゆっくりとご歓談なさっててください」
最後に怒涛の勢いで謝られて反論もできなかった。そんなトーマスを見てとっても真面目な人なんだなぁとアデレイドは思った。
トーマスがテーブルセッティングをし、紅茶とお菓子が用意された。先生とは魔人の話や最近の魔法の話などで盛り上がり、近いうちに魔法を新しく生み出す実験をしようと言う話になった。
「ではそろそろ帰ります。今日は凄く楽しかったです。ありがとうございました。ただ、突然押しかけてバタバタさせて申し訳ありませんでした。次はちゃんとお手紙出してから伺いますね、それではまた」
「あぁ、またねアデレイド嬢」
先生は手をヒラヒラさせてアデレイドを見送る。瞬間移動でアデレイドは自宅に帰ってきた。
「先生変わってなかったなぁー、って、私も何も変わってないんだから当たり前かぁ…………」
なんの変哲もない日常に帰って来れた事を嬉しく思うアデレイドなのだった。




