笑顔を取り戻す
自室に瞬間移動で帰って来た。まずは服を綺麗にして、身支度を軽く済ませてからお父様の書斎に向かう。途中メイドや執事とすれ違う。涙ながらに「お帰りなさいませ」と口々に言われる。
トントントンッ
「アデレイドです。ただいま戻りました」
すると、中から色々ぶつかる音が聞こえた。そしてすぐに扉が開かれる。
「アデル!!待っていたよ、よく無事に帰って来たね」
お父様にきつく抱きしめられる。少し痩せた様にも見えるお父様の声は涙声だった。
「レオナルドは、居ないと言うことは…………そう言うことなんだね…………それでも、アデルだけでも無事に帰って来てくれて良かったよ」
ついにお父様は堪えきれず涙を流した。レオナルドは生きているという一縷の望みを賭けたが、やはり…………と言う気持ちだったのだろう。
「お父様、お兄様は生きています!!詳しくお話ししたいので、中でゆっくりお話ししませんか?」
お父様は驚きと喜びで「本当かい?」と言いアデレイドをさらにきつく抱きしめた。
お兄様が過去魔王だった話、なぜ魔王城に連れ去られたのかなどを詳しく話した。さらに、録音の魔石でお兄様の肉声もしっかりと録音していた。お父様は音声を聞いている最中は涙を流し、嬉しそうな表情を浮かべていた。
「という事で、お兄様は今も魔王城に残る決断をされました。なので、お兄様が魔人達を教育した暁には戻って来られるので私達家族は信じて待ちましょう!そして、お兄様が帰って来たらお祝いしましょう!!」
「そうだな、レオナルドが無事なのが分かって良かった、元魔王だろうが、なんだろうがレオナルドは私の息子だ、そして、今魔人の進撃を抑えられるのがレオナルドしかいないのならば、レオナルドに任せよう!本当に我が子ながら昔からなんでもこなすレオナルドが誇らしいよ……会えないのは寂しいがな……」
泣き笑いのお父様を見て、アデレイドも笑顔になる。お父様の安堵した笑顔など久々だった。レオナルドが居なくなってからはずっと悲壮感が漂い、緊張と、どこか張り詰めていた感じがあった。
「お父様、お母様にも報告しに行きましょう!」
お父様がハッとした顔をした。
「そうだな!私ばかり喜びを噛み締めている場合では無かったな、ルーシーにもこの良い知らせを聞かせよう!!」
そう言うと、お母様の元へお父様と一緒に向かう。お父様に伝えた事同様、肉声もお母様に届ける。お母様は涙を流し、声を出して泣いた。もう、けして戻らないと思っていた我が子が生きていた。そして、いつかは分からないが無事に帰ってくると分かった事がどれだけ嬉しかった事か……
「アデル、貴方がレオナルドを探しに行っていた事に気づかなかった私を許してちょうだい、弱っていたからとはいえ、フェイクのアデルが本物だと、母親失格ね…………」
「いいえ、心労のお母様を置いて、私が旅に出たのが悪いのです。心配をかけたくなくて騙してしまってごめんなさい」
「アデル本当に無事に帰って来てくれてありがとう。そして、レオナルドの事もありがとう。アデル貴方は私達の宝物よ、大好きよアデル」
親子3人で抱き合った。お母様もお父様も以前の様な明るい笑顔を見せた。テイラー家に笑顔が戻ったのだ。
それからは、お母様のリハビリを行なった。寝たきりだったので筋肉が弱っていた。そして、お父様からは衝撃的な事を告げられた。
「アデル、実は王家からお前に婚約の話が来ているんだ…………アデルから足止めを頼まれた数日後に婚約の打診があったんだが、今はそれを必死で断っている所だ、もしかして王子と結婚したいとか思ってたりするかい?」
少し困った顔で尋ねてくる。アデレイドは嫌だという感情を表す様に思いっきり顔を顰めた。
「お父様、アレクシス王子と結婚する事になるなら私は他国で暮らします」
お父様の顔がギョッとした顔になる。そしてアデレイドを抱っこしながら言う。
「結婚したくないならこのまま婚約をしない様に話を進めていこう!!アデルは他国に行くなんて言わないでおくれ、この7ヶ月近く会えないだけでも辛かったのに、更にアデルに会えなくなるのは耐えられないよ………」
涙目のお父様にぎゅうっとされアデレイドはお父様の頭をよしよし、と撫でる。
「お父様、私もお父様と離れたくないです」
「任せておきなさい!!なんとか婚約が成立しない様にお父様頑張るから!!」
嫁にはやらんと聞こえて来そうなお父様の叫びだった。アデレイドはもし、婚約する事になったら変装してでも逃げ回って見せると心の中で密かに思うのであった。




