海の生き物と仲良くなろう 2
ユートゥティスは急いだ。あのちょっと変わった女の子の為に。少し話しただけだが、とっても面白く、意志が強い事が伝わってきた。だからこそ縄張りにも入ってくる豪胆さがあるのだが、そうこうしているうちに族長の元へ到着した。急いだので息が切れる。
「ハァハァ…………っ……ユートゥティスです。族長との面会を望みます」
族長の扉の前に立っている男に話しかける。
「どーした?ユートゥティス、そんなに慌てて何かあったのか?」
「お願いします!緊急事態です!!」
そう言うと、族長の部屋の扉が開かれる。
「どうした?ユートゥティスいつも冷静なお前がそんなに慌てて、もしかして魔人がまた攻めてきたのか?」
「いえ、違います。この縄張りを一人の人間の女の子が横断しようとしています。その子を見逃して欲しいのです」
………………………………
重い沈黙が流れる。
「人間だと?…………ユートゥティス、人間がワシらにした事を忘れた訳じゃあるまいな?」
「……………………っ、でも!!あの子はその人間達とは関係無いじゃないですか?お願いします。殺さないでください!!!」
「人間め……ユートゥティスの優しさに漬け込んで誑かすとは、許せん!!ユートゥティスお前は戦わなくていい、私達が全て終わらせてこよう!ズル賢い人間共は許さん」
ユートゥティスの顔が青ざめる。アドラを守れなかった上に、余計に火に油を注いだ形になってしまったからだ。
「族長本当にやめてください、まだ小さい女の子なんです!!」
最後の望みを捨てずに大声を出してとめる。すると、族長は静かにユートゥティスに告げる
「ユートゥティス…………お前は暫く反省部屋に居なさい。そんなに洗脳されてては話にならん。人間を始末したら出してやる。おい!!カプリウス、ユートゥティスを反省部屋へ連れて行け鍵もしっかりかけるんだぞ!」
こうして、ユートゥティスは反省部屋へ監禁されてしまった。悔しさと、不甲斐なさで涙がこぼれ落ちる。
「アドラ…………ごめん……ちゃんと俺が止めてれば……ごめん…………」
一方アデレイドは航海を続けていた。ユートゥティスに悪いなぁとは思いつつ、遠回りをしたら半年かかってしまう。約束の一年を過ぎてしまうのはダメだ。どおしてもここを通らなければならなかった。
(ユートゥティスとも戦わなくちゃいけないのかなぁ…………それだけは嫌かも…………)
せっかく仲良くなったユートゥティスとはアデレイドも戦いたくない。そんな事を考えていると、船が大きく揺れた。急に海が荒れてきたのだ。
(まさか、これが人魚達の攻撃なのかな?)
船底に激しい衝撃が走る。ただ、アデレイドのバリアでコーティングされている船なのでびくともしない。どっちかと言うと船の揺れの方が心配だった。なぜなら転覆させられたら大変だからだ。
アドラはもしかしたらユートゥティスみたいに話せばわかるかもと思い。大声で話しかけてみる事にした。
「あのーーーーー!!!私ーーーー!!ここを通りたいだけなんですーーーーー!!通してーーーーくださーーーーーーい!!!」
ザブーーンザバーーーンザブーーーーーン
言葉は全然効果無しだった。とうとう船が耐えきれず転覆した。幸いアドラは海の中でもおじさん達からもらった魔石のおかげで息も苦しくないし、快適に泳ぐことができた。
海の中に入ると100人を超える人魚達が居た。
(えっ?こんな子供一人に多すぎなのでは?)
人魚達は一気に攻撃を仕掛けてきた。水と風の同時魔法で、鋭い水の攻撃がたくさん飛んでくる。その中に稀にファイヤーボールの様な攻撃も混ざっていた。
(水の中での火魔法ってかなり難易度高そうだなぁ)
なんて呑気にしていると両手足を掴まれた。そして四方向に一気に体を引っ張られる。アデレイドの体を引きちぎろうとしているのだった。
アデレイドは身体強化をして、逆に手足に付いている人魚四人同士を集合させ、頭や体をぶつからせフラフラにする。それを見た人魚達は一層魔法を強化して、攻撃してくる。
アデレイドはバリアで守られているので攻撃されても全然意味がないのだが、だんだんと腹が立ってきた。こんな所でお兄様に会うのを邪魔されて、意味のない時間に付き合わされる筋合いないよね?と、
アデレイドは集中して、魔法を放とうとしていた。怪我をさせたくないが、自分の存在をわからせる為にかすり傷がつく様に100人近い人魚のギリギリを狙ってビームを放った。その際、巨大な岩にもビームを放ち粉々にする。威力を知らしめる為だ。
「ゴボゴボゴボゴボ、ゴボゴボゴボゴボ?」
陸の上ではないので喋ることができなかった。
すると、いかにも長老の様な人魚がアデレイドの前に現れた。
「お主、何しにここにきた!!ワシらの縄張りだと知っておっただろう!それにあのビームの威力!!ワシらを皆殺しにする為に来たのか?もしくは昔の様に人魚狩りをしに来たのか!!!」
最後の方は怒りで語気が荒くなっていた。
………………………………
喋れないのでどうしようもなかった。
「お主、無視とはいい度胸しておるなぁ!!黙ってると言うことは肯定という意味にとらえるぞ?」
首をブンブンと横に振る。そして、声が聞こえないかもしれないが喋ってみる事にした。
「ゴボゴホゴ、ボゴボゴボゴ、ゴゴゴコボ」
「わからん、これを食べろ」
小さい飴を渡される。甘くて美味しかった。
「美味しいーーー甘いものって癒されるね、あれ?声が出る様になった!!」
人魚達が固唾を呑んでアデレイドをみていた。
「あの、私は、魔国に攫われたお兄様を助けに行きたくてここを通ったんです。皆殺しとか、人魚狩り?なんかは全然興味ありません。ユートゥティスにもダメって言われたけど、早く助けないとお兄様が殺されるかもしれないので急いでるんです!!邪魔しないでください!!」
その時、目の前にユートゥティスが息を切らして現れた。アデレイドを庇う様に両手を広げて……
「族長!!この子は魔国に行きたいだけなんです。だからお願いします見逃してあげてください」
「ユートゥティス、どうやってここに……それより、魔国に兄君が捉えられているのか?」
「そうです!!生きている筈です!絶対に取り戻すんです」
海の中だが、涙が溢れ出してくる。言葉にすると辛くなる。
「そうか、魔国と対峙するのはワシらと同じだが、二百年前、人間はワシら人魚を狩ってきた歴史がある。それを人間に償ってもらわないとワシらの気が収まらん」
「族長さんの言ってることもわかります。私だって、身近な人間が酷い目にあったら許せません。でも、今の人間はそんな事しないのも事実です、だから変わった人間をこれからは見てくれませんか?」
「変わったのか……人間は…………」
「すぐには無理でも、ちょっとずつでいいので、ただ、悪い人間はもちろん居ます。でも、今の人間は人魚狩りなんてしません!!」
長い沈黙の後、
「今回のこの者は特例により見逃す事にした!次回もそうするかは難しいが、その都度考える様にする!!」
人魚の中には納得してないものも居たが、若い人魚たちは一様に頷いていた。
「ユートゥティス!!庇ってくれてありがとう!!大好き!!」
嬉しくてユートゥティスに抱きつく。ユートゥティスは恥ずかしくて、アデレイドを引き離そうとしている。
「アドラ!!ちょっ、は、離れろ」
「はーーい」
「すぐ離れるんかい!!ってアドラ船転覆してるけど魔法でなんとかできそうか?」
すっかり船のことを忘れていた。泳いでもいけそうだが、ごはん食べたり、寝たりするのに不便そうだ………
「どうしよう…………」
しょんぼりしているアデレイドを見て、ユートゥティスが水の魔法を放つ。すると、波が揺れて船がくるんと回転し、元通りになる。
「うわぁーー元に戻ったーありがとうユートゥティス!!本当にユートゥティスは良い人魚だね」
「他の人魚もいい奴ばっかりなんだけどな、今回の事は許してくれ」
「うん、全然大丈夫!!だって結果的に縄張りを通らせてもらえたし、何よりユートゥティスに出会えたから。また、ここに来たら今度は海の中を一緒に散歩したいな、その時は案内してくれる?」
ユートゥティスは腕組みをして自信満々に言った。
「もちろんいいぜ!」
ユートゥティス達と別れた後、アデレイドはまた魔国に向けて船を出した。
仕事の関係上、次から連載が遅くなります。すみません。週一ペースくらいで、載せられたらいいなと思うので読んでください。よろしくお願いします。




