海の生き物と仲良くなろう
アデレイドは順調に航海を続けていた。サーチで魔物を避けながら進んでいく。そして、迷わないように魔国への道標を光の線で引いていた。
(ここまでは順調ね、ただ、1ヶ月以上かかるかもしれないなぁ……)
アデレイドは広大な海の上で距離感覚が分からなくなっていた。
…………グゥ…………
お腹が空いていたので、ハムサンドを食べようと収納バッグから取り出した。
(うぅーーん、このチーズのまろやかさとコクがハムの塩気とマッチして最高の一品になってるよぉ〜しかも出来立てホヤホヤのチーズびよ〜んが最っっ高にうまい!!)
一人食リポをしながら食べていると、サーチに何か引っかかった。その小さい物体が船に少しづつ近づいてきている。そして、
ドンッ
船に何かがぶつかった。そして何回も何回もぶつかってくる。バリアを張っているが、流石に船は揺れるし、揺れでご飯が食べづらくて、アデレイドは少しイライラした。そして、とうとう反撃する事にした。その物体に掠る程度にビームを放った。
ぶつかるのを辞めたそれは、今度は船に上がり込んできた。
ザバーーン
「おい!人間ここは僕たちの縄張りの近くだぞ!出てけ!!」
人魚の男の子だった。アデレイドより2〜3歳年上のような感じだ。初めての人魚にビックリして、片手に持っていたハムチーズサンドを落としそうになる。そして、ずっと黙っている私に業を煮やした人魚の男の子が、
「おい!!何黙ってんだよ!なんとか言え」
男の子に言われてハッとしたアデレイドは
「ねぇ、人魚って魔物?じゃぁ……ないよね?」
失礼かも知れなかったが、恐る恐る聞いてみた。
「なっ!!魔物な訳ないだろ!!黙ってたかと思ったら、お前ふざけんなよ?ホントに船沈めるぞ」
青磁色の髪にシアンの瞳でちょっと生意気そうな吊り目の男の子の人魚だった。
「ごめんなさい、ちょっとだけ好奇心が勝ってしまって、って、もう少しで貴方達の縄張りなの?どうしても通りたいんだけど……」
「ダメだ!!」
「お願い!!」
いつもの上目遣いのお願いポーズをとってみる。
「そんなポーズしたってダメだ!!」
変装しているアデレイドでは効果はイマイチだったみたいだ。
「じゃぁ聞くけど、縄張りを通らずに魔国まで行くのに回り道したらどれくらいかかるの?」
「んーー半年だろうな!俺らの縄張り広いし、別ルートまで行ってもらわないといけないしな…………っておい!!おまえ魔国に行くのか?なんであんなとこ行くんだ??奴隷とか生贄とかそう言うのなのか!!??匿ってやろうか?」
なんだか勘違いされて今度は逆に心配される。もしかして、魔国のヤバい情報とか知ってるかもしれない、そう思い男の子に聞いてみる。
「魔国のこと何か知ってたら教えて欲しいです。魔国の事全然知らなくて…………」
弱々しそうに聞いてみる。きっとこの人魚は情に弱いとふんだ、悪いアデレイドの作戦だ。
「あぁ…………魔国の魔人はホントに最悪だ、魔人至上主義で、一番あいつらが強いと思ってるんだ。よく俺らの縄張りにも魔物を引き連れて戦いにやってくるクソヤロー共だ。あいつらのせいで仲間が何人やられたか…………」
悔しい顔を浮かべドンッと自分の尾ヒレを叩いている。
「ただ、なぜか最近はおとなしいんだ…………嵐の前の静けさじゃないといいんだが、でもお前みたいな生け贄を欲してるってことは、あいつらは何も変わっちゃいねぇーって事だよな」
「あっ、そういえば、私は生け贄じゃないですよ?因みに奴隷でもないですし」
勘違いさせたままも悪いと思い、悪びれもなく生け贄じゃない事を公表する。
「おいぃぃぃぃっっ!!!おまえよぉ!本っっっっっ当に船沈めるぞコラッ」
「すみません、つい、勘違いしてたのでそのまま話進めちゃいました」
テヘッっとおどけてみる
「おまえよぉ……今まで見た人間の中で一番肝据わってるよ、普通俺達見たらみんな怖がって引き返してくもんだぞ?それがこんな、会話までして…………」
「でも私、重要な用件で魔国に行くんです。しかも急いでるんです。だから何があってもここを通りますね」
「それは辞めとけ、一気に人魚に襲われておまえ死ぬぞ?死なせたくないから縄張り入る前に俺は引き返すように止めに来てるんだ、お願いだから他から行ってくれ」
「無理です」
「お願いだ」
「無理なんです」
「おまえさぁ、俺はおまえを心配してんだぞ?」
「おまえじゃなくて、アドラです!!」
「お、おぅ…………アドラな、俺はユートゥティスだ…………」
遅めの自己紹介をした。そこからは押し問答で全然ユートゥティスが話を聞いてくれない。そんなに人魚は好戦的なんだろうか、
「もーいいです。ユートゥティスが全然話聞いてくれないから、私は突っ走りますからね」
そう言うと、アデレイドは船のエンジンをつけ進み出した。
「おいっっ!!やめろ!!アドラ!!本当に死にたいのかよ!!」
不敵にアデレイドは笑うと
「私、強いんですよ!!心配しないでください、むしろ仲間の人魚さん達の心配をしてください」
もう何を言っても聞きそうにない小さな女の子を、ただ見守る事しかできない事に歯痒さを覚えるユートゥティスは、海の中に潜っていった。アドラをなんとか見逃してあげられないか抗議するために……




