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先輩からのお願い

 お兄様が連れて行かれてから3ヶ月が過ぎた。私は魔物との戦いにも慣れ、今すぐにでも魔人からお兄様を取り返しに行きたい気持ちをなんとか抑えていた。


 私の属性の噂や差別もお兄様が攫われたことにより同情の声が多くなり、かき消されていた。


 廊下を歩いていると急に肩を叩かれる。振り向くとアーロン先輩が困った顔をしながら立っていた。


「アデレイド嬢、少し話大丈夫かな?」


 私は頷いて、先輩について行く。先輩はいつもの人気の無い端の部室まで歩いて行く。


 中に入ると話す事前提だったのか、いつもは雑多なテーブルが少し片付けられており、お菓子と紅茶が用意されていた。椅子に座ると先輩が話し始めた。


「単刀直入に言うけど、何か一つでもいい、、魔石で何か作ってくれないか?」


 頭の中にハテナが浮かぶ。私はこの部活に入って数回しか来ていなかった。お兄様の事があってからは特に一度も部活に顔を出していない。


「今の君に言うのは酷なのは分かってるんだが、もうすぐ、学園祭なんだ、一人一つ何か魔石を使った物を作って展示するのがこの部の決まりなんだ」


 そう言うと、困った顔を向け「できるかい?」と伺うように聞かれる。


 私はすごく悩んだ、本当はお兄様救出の為にもっと強くなる為の努力に当てたい、だが、私が全然部活に参加しなくて迷惑をかけたのも事実…………


 他人に迷惑をかけながらする努力は、お兄様もきっと良しとしないだろう…………


「先輩!私頑張ります!!」


「そ、そう?ありがとうでも、無理はしないでね?」


 先輩に無理はしないと約束をし、放課後は魔石部に来ていた。


 他の先輩たちは遊び道具の様なものや、生活雑貨などを作っていた。私はある物を作ろうと、画策していた。今回作るのは、分身マリオネットだ。


 私の写真の技術を使い、更には光で形をそっくり作る技術を応用して、その二つを掛け合わせたものが、分身マリオネットだ。簡単に言えば動かないコピー人形を作ると言うことだ。


 しかし、通い詰めて試作品を作ろうとしてもなかなか上手くいかない、魔力量を調節したり、魔法を付与する順番を変えてみたり、時間経過を待ってみたり、色々したが上手くいかなかった。


「アデレイド嬢、どこでつまづいているの?良かったら先輩に頼ってみない?」


 不意にアーロン先輩から声が掛かる。


「あのー……例えばなんですけど、魔石に付与する際、魔法 × 魔法 の場合は反発しあって作動しないとかありますか?」


 恐る恐る聞いてみる。すると一瞬キョトンとした顔をしたが、その後ニッコリ笑顔になり饒舌に話し始めた。


「分かるよー、最初はやりがちなやつだね、一個一個重ねがけしていくと反発しあって付与できないんだよ!実は同時に付与すると魔石に付与できる様になるんだよね、盲点だよね!!」


 目から鱗だった。先輩にお礼を言って、同時に魔法を展開して魔石に魔法を付与してみる。すると激しい光を放ち魔力をどんどんと吸い取っていく。光が落ち着いた後、部室内は異様な空気に包まれていた。


「アデレイド嬢…………君光属性だけだよね?今のは…………」

「……………………すげー光……なんの魔法だ?」

「僕こんなの初めて…………」

「これって、何かの手品?じゃないよね?」


 学園祭なので、他2名の先輩達も来ていた。大きい魔石に付与したが、まさかあんなに激しく魔力を持って行かれるとは思わなかった。


「あっ、あの、お、お気遣いなく…………」


 苦笑いしてみたが、先輩達は許してくれなかった。


「光属性の魔法だけ使えるんですが、魔力量は多いので、術式付与するのに眩しい光が出ちゃっただけなんです……」


 苦しい言い訳を怪しんでいたが、ギリギリ信じてもらえた。…………危なかった……


 後は、この魔石を加工して展示用にするだけだ。加工の仕方はギルバート先輩が教えてくれた。ギルバート先輩は意外と手先が器用で教え方も上手だった。


 結局魔石はネックレスの形にし、展示は当日発表にした。そうしないと、先輩達にどうやって作ったのか詰められそうだったからである。


 当日、皆んなが驚く姿が楽しみでニヤニヤしてしまうアデレイドであった。

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