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変わってゆく心

 夏の短い休みが明け、アデレイドは変わってしまった。周りを寄せ付けない氷の薔薇の様に冷たくなってしまった。


「アデレイド、兄上の事は残念だったが、そう悲しい顔をしないでおくれ?」


 空気の読めない王子がアデレイドの急所を撃ち抜く。アデレイドは氷の微笑みを浮かべ、


「お気遣いなく」


 そう答えて周囲をさらに凍らせていく。アデレイドの兄が失踪した事件は詳しくは伝えられていないが、もう帰らぬ人と言う噂が貴族全員に周知されていた。


 いつもの魔法の授業、別室でいつもの倍以上の魔法を使い鍛錬するアデレイド、すると後ろから頭をコンッと突かれた。振り返ると先生が立っていた。


 アデレイドは練習に集中したくて気が立っていた。先生をキッと睨みつけてしまう。レイシスは何も気にして無いという風に話し始める。


「レオナルド君はちょっとやそっとじゃ死なないよ?僕は生きてると思ってるけど?信じてないの?レオナルド君を」


 怒りが込み上げてくる。いくら先生でもいい加減な事は言わないで欲しい、私だって生きていてほしいと思っている。ただ、お兄様一人で動けない状態で生きている可能性は……………………私はまた先生を睨み上げる。


「はいはい、全然怖くないよ、出鱈目で言ってるわけじゃないよ?魔人に連れ去られたんだろ?しかも殺さずに…………なら生きてるとしか考えられないけど?ただ、何かに利用されてるのかも知れないけどね、十中八九生きてるよ安心しな?」


 先生の言葉で凍った心が少しづつ溶けてくる。お兄様は生きていると意固地になって魔法を続けてきたが、実際はあの光景を目の当たりにして、半分以上信じられなかったのだ…………無理矢理信じ込んでいたものが、生きていると確信に変わると、涙が自然と溢れ出してきた。先生の前で泣くのはこれで何回目だろうか、先生がハンカチを差し出し、それで涙を拭う。


「さっ、涙も拭けたし、君の余計な力も抜けたから、今度からこの授業は魔物退治の授業に当てようか?君には実践が足りないからね」


 先生はウィンクしながら、なんの気無しに言ってくる。私の事を考えてくれて私の重荷まで軽くしてくれる。


 魔法の授業後から氷の薔薇が、いつもの天使に変わっていた。しかし心の中はお兄様の事でいっぱいだ。


(絶対に魔人からお兄様を取り返してみせる。どうかそれまでお兄様に酷い事が起きませんように………)




 ※ ※ ※

(あれは魔人…………こんな所に現れるなんて、魔国にしか居ないはず…………とりあえず始末しないと……こんな所にアデルが来たら真っ先に殺されるかも知れない。)


 すると、見たことのあるバリアがお父様の前に出現する。


(クソッ、来てしまったのかアデル、なんとか守らないと…………


 と、油断したその時、蔦のようなものでぐるぐる巻にされる。蔦を破り外に出た時にはもぅ魔国にきていた。


 周りを見渡すと、黒を基調としたゴシック調の家具が置いてある。空気はどことなく淀んでいる。


 ふと視線を感じ後ろを振り向くと僕を攫った魔人が立っていた。


「◯◯◯◯◯◯◯◯」


 魔人が喋る。僕はそれに従い後ろをついて行く。


 薄暗い廊下が続いていた。その暗く長い廊下は自分の闇を増幅させていくような気さえした。


 途中デカい人物画が飾られていた。この人物は…………………


 魔人が大きな扉の前で立ち止まり、中に入る様に指示してくる。扉が開くと中には強そうな魔人が、何百人と僕を待ち受けていた。


 はぁ…………僕はどうしようかと重いため息を吐いた。

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