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男の子を救う

「アデレイド嬢、君にお願いしたいことがあるんだけど、聞いてくれる?」


 先生が急に畏まって話をはじめた。私は先生の授業で色んなことを学んできて、お願いなんてされた事が今まで一度もなかった。なので、


「いいですよ!先生のお願いならばなんだって聞きます!!先生のこと信じてるので!!」


「フフッ、君は内容も聞かないでそんなこと言っちゃダメだよ、他の人に騙されちゃうからね?本当に…………」


 いつものようにほっぺをツンッとされる。顔も近くて余計にドキドキしてしまう。


(先生、鼻の形とか口の形とかめっちゃ整ってるんだよな………絶対に顔イケメンなんだよなぁ……)


「君に男の子の病気を治してほしいんだ。

 公爵家の男の子なんだけど、君の正体は分からないように変装して、さらにローブを被って徹底的に君の正体を隠して来て欲しいんだ」


「正体バレたら私の身が危ないって事ですよね?」


「その通り、よく分かったね偉いよ、もし治せなくても気落ちしなくて大丈夫だからね?一か八かの最後の望みで、君の光魔法にかけてみるんだ」


(先生のお願いなだけに絶対に重篤な患者さんに決まってる………責任重大だけど、引き受けたからには全力で頑張ろう!!魔力量も今の私は結構多いのだ)


「私の今持てる全ての力で頑張ります!!」


「ありがとう、助かるよ」


 どことなく悲しげな雰囲気で先生が微笑んだ。


 とうとうお願いされた日がやってきた。私は変身の指輪で村人風のワンピースに焦茶の髪と瞳で、そばかすのおさげの女の子になっていた。


「準備は良いね、じゃぁこのローブを君にあげるからこれを着て準備ができたら、いつも通り僕と手を繋いでくれる?」


 私は、ちょっと大きめのローブを頭から被り終えたら、いつも通りに先生と手を繋ぐ。暗転した後、荘厳なお屋敷の門の前に立っていた。

 門番の男はビックリすることなく門を開けてくれる。先生の訪問には慣れているようだった。


「レイシスよくきてくれたね、今日はハワードの様態を見にきてくれたようだが、その小さなお客人は誰かな?」


 ローブを目深に被っているので顔が見えないがとっても優しそうな声だ。


「この子は僕の大切な子だよ。ハワードにとっても良き日になるように連れてきたんだ」


「あの子にとって良き日になる…………そうだな……そうなると良いんだが…………」


「あなた、レイシスも今まで色々やってくれたのだからそんな風に言わないで…………」


 悲しい雰囲気が当たりを包む。きっとハワードって人が病に侵されているに違いない…………何とかしてあげなくちゃ!!と気合が入る。


「とにかく!ハワードの所に行っても良いかな?今日はいつもとは違う薬を持ってきたんだ。きっと良くなるから」


 涙声が聞こえる。


「レイシス…………いつもありがとう……すまない…………」

「レイシス…………あなた本当に私達によくしてくれてありがとう」


「さっ!湿っぽいのは無しだよ!それと今日はお願いがあって、僕が施術してる間はどんなことが起こっても部屋には入らないで欲しいんだ。いいかな?」


「別に構わないが……いつもとそんなに違うことをするのかい?あの子に害はないのかい?」


「害はないよ絶対にね、ただお願いなだけさ約束してくれる?」


「あぁ、、分かった」

「私も、分かりましたわ」


 ハワードの部屋の前にたどり着く、そして中に入るとカーテンは閉め切られていて、魔石の灯がちらほらとある部屋だった。

 私は息を呑む。病人特有の匂いと、薬の匂いが混ざっている匂いがした。


「さてと、ここではアドラと言おうかな?アドラ、この子はハワードって言うんだけど、僕が見た所、後、数週間の命なんだ。今は薬で眠ってるんだけど、君の能力で病気を治せるかお願いしても良いかな?」


「はい!先生任せてください!!」


 私は今日どれくらいの魔力を使うかもわからないので、たくさんポーションも持ってきていた。なので魔力切れなんて怖くないのだ。

 

ハワードの顔を見ると私と同じ歳か、それより下に見えた。息は荒く、頬がこけて生気がなく青白かった。髪もパサついて見える。

 何となくだが、手を握った方が治すのに良い気がして手を握る。腕は細く、少し震えている。そして、骨張っていて子供らしくない手だった。


「この子の病が治りますように。元気で健康な元の体に戻りますように」


 願いが届くように口にも出して祈りを捧げる。そして、健康体なこの子をイメージして祈りをさらに捧げる。するとピカっと眩しい光が輝いて魔力が一気に持っていかれた。私はすかさずポーションを飲み、さらに祈りを捧げた。それを数回繰り返し、やっと光が収まった。


 治すことに夢中で気づかなかったが、何やら扉の向こうが騒がしかった。


 ドンドンドンドンドンッドンドンドンドンドンッ


「何が起こってるんだレイシス!!開けてくれお願いだこの光は一体何なんだ教えてくれ!!レイシス!!」


「レイシス開けて?お願いよ、ハワードに何をしているの??レイシスレイシス!!」


(確かに光ってたら怪しいよねぇ……)


「先生、今治癒は終わったと思うので先生がハワード君を見てみてください」


 すると、先生が優しく頭をなでて


「ありがとう、お疲れ様、ハワードを見てみるからそこでちょっと待っててくれる?」


 すると先生は魔法で部屋のカーテンを全て開け、窓も一回開け放ち部屋の空気を入れ替えたのである。明るくなった部屋はどことなく澄んでいる気さえした。そして、ハワード君の顔を見ると、血色が格段に良くなっている。すると先生がハワード君の肩をトントンッとして起こす。


「あれ?叔父さん……僕……ケホッケホッ……」


 先生が水を差し出す。


「ゆっくりとお水を飲みなさい。所で、どおかな体調は?僕のサーチによると病気は良くなってると思うんだけど」


「確かに!!呼吸も苦しくないし、手足の痺れもない!!頭痛も身体中の痛みも何もかも無くなってる!!レイシスが治してくれたの?ありがとうレイシス!!」


(そんなに痛みと苦しみを抱えて生きてきたの?凄く辛かったっよね………やっと治ってよかったね………)


 一人しみじみしていると、先生が私をハワード君の前に移動させる。頭の中をハテナにさせていると。


「ハワード皆んなには絶対に内緒だけど、君だけはどうか知ってて欲しい、この子の治癒魔法で君は助かったんだよ。表向きは僕の魔法と施術って事にするけど、どうかこの事は忘れないでほしい!いい?約束できるかい?」


「うん!!僕約束できるよ。君……名前は?」


「…………名前は…………」


「それは内緒にしておこうか」


「えーーーー、僕も知りたいよ、、でも僕の病を治してくれてありがとう心から感謝します」


 多分頭を下げられたんだろうが、ローブで何も見えないのだ…………しょうがない…………


 そんなやりとりがあった後、やっとハワードの両親を扉の中に入れた。


「あっあぁぁぁ……レイシスこれは夢か……ありがとうありがとうレイシス…………」

「ふぅぅぐっ…………レイシス本当にありがとうね…………ハワード元気になってよかったわ抱きしめさせてハワード愛してるわ」


 二人とも泣いている。見なくてもわかる。


「今日は三人の時間を大事にして、僕達は帰らせてもらうよ、またね」


 「レイシ…………


 先生に抱っこされてその場から瞬間移動で私の部屋に戻る。


「今日はお願い聞いてくれてありがと、いつかこの恩は返すよ君のピンチの時にね。君の魔法もやっぱり凄いことが分かったし、やっぱり君は興味深いね」


 またもや、いつものほっぺツンッされる。


「じゃぁまたね」


 先生は一瞬にして居なくなった。なんだか目まぐるしい一日だったが、私の魔法で人を救ったんだと思うと、この光魔法しかない私でもこの世の中に生まれてきた意味があるのかもと思える一日だった。

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