誘拐
意識が戻ると、口には猿轡をされて喋れない様になっていた。もちろん手足も縛られている。
(怖い、どーしよー、お母様、、どこ?ここ、、)
あれから何時間経ったのだろう……泣きそうになるのを堪える。カビ臭い匂いが充満しており、辺りを見渡すと狭い地下室か、物置の様だった。
よく目を凝らしてみると私以外にも子供達が捕まっている。猿轡のせいでコミニュケーションを取ることはできない。
(どーしよぉ、この子達も捕まってるんだよね、皆んなで逃げ出したいけど何か方法はないの??)
パニックに陥っていると扉がバァンと乱暴に開いた。
「ガキ共!!お前達は今日から俺らのもんだ!!元にはもどれねぇからな!!大人しくしてれば何もしねぇ、俺らは優しいからなぁ、、ただし騒いだり泣いたりしたらぶっ殺す!!覚えとけ!!」
恫喝され全身が震え出す。
(殺されちゃうの!?それともどこかに売られちゃうの?お父様、お母様、お兄様、会えなくなっちゃうの……)
恐怖に支配され思考がうまく回らない。他の子供達も恐怖で怯え、泣き出している子もいた。
「お前泣くなって言ったよな!!」
ガァン!!泣いていた子が蹴り飛ばされた。その後、動かなくなった……
「お前らもこーなりたくなかったら泣くんじゃねーぞ」
と言い残しまた激しく扉を閉めて出て行った。震える私は這いずりながらもその子の元に向かった。
(まだ生きてます様に、お願い神様!!お願い!!)
涙が溢れてくる。私も怖い、、、まだ治癒魔法しかした事がないが、私がもし、聖女様と同じくらいの治癒能力を持っているならば、なんとかなるかもしれない…………
這いずりながらも必死に辿り着いた。
その子は痙攣を起こしており、危ない状態だった。息も微かにしている様子だった。
(どうか、この子を助けて、今感じてる全身の痛みも苦しみも全て治ります様に、、お願い回復して、どうか治ります様に)
淡い光が小さな部屋に満ちる。そしてその子の痙攣は治り息も正常に戻っていった。
(良かったぁ、、治せて本当に良かったぁ、、後はここからどーやって出ていくかだよね、私一人なら瞬間移動で出れるけど、皆んなと一緒に出ていくには、敵は何人居て、部屋もどういう作りになっているのかもわからない……私に攻撃魔法があれば戦えたのに……)
今、命の危機を救った事により、冷静さを取り戻したアデレイドは、ひとつ大事な事を思い出した。
(連絡用の石で先生に連絡できる!!!!!なぜ忘れちゃってたの!?)
お兄様からもらった収納のペンダントの中に先生との連絡石を入れておいたのだ。収納ペンダントは物を思い浮かべれば出てくるので、(連絡石出てきて!!)と念じてみる。
(あれ?この連絡石どーやって使うんだっけ?先生あの時何か言ってた気がする……思い出せない……)
またピンチに逆戻りしたが、色々試してみるしかない。とりあえず目の前の石に頬っぺたをくっつけてみた……反応なし……猿轡の部分で叩いてみた……反応なし……猿轡越しに「ふぇんふぇー(せんせぇー)」と小さく話しかけてみる……反応……
「どーしたの?アデレイド嬢パンでも食べながら相談かい?僕はそんなに暇じゃないんだよぉ〜」
(つ、繋がったーーーー)
「ふぇんふぇー、ふぁふへへぇぇ!!(せんせぇーたすけてぇぇ)」
恐怖と焦りもあるが、先生と繋がった安心感で堪えていた涙が出てくる。
「アデレイド嬢、、何かされたかい?そこはどこ?って答えられそうになさそうだね、僕がそっちに行くから待ってて」
(こっちに来てくれるって、どーやって?どれくらいかかるの?あいつらが戻ってきたら私一人でどーしたらいいの!?)
焦る私とは裏腹に、後ろから懐かしい声がした。
「ゲホッゲホッ、ここはどこだい?酷い所だね。それにその格好、趣味が悪い人達に攫われたねぇ、、」
ニッコリといつもの優しい笑みを浮かべた先生が立っていた。
「君をこんな目に遭わせたら奴らをど〜しよ〜かなぁ」
闇のオーラを放った先生が言う。いつもの優しい雰囲気ではない。それだけ怒ってくれている。
先生は皆んなの猿轡と手足のロープを、一瞬にして魔法で解いてくれた。怪我している子には治癒魔法をかけていく。
「まずは君たちの安全確保が大事だから集まってくれるかい?」
皆んな先生の言う通りに集まってくる。私もその中の一人だ。すると、私達の周りが氷の膜で覆われていく。
「この中にいれば外からの魔法が効かないし、誰も入ってこれないから安全だよ、しばらくこの中で休んでいてくれるかな?」
「先生、ありがとうございます」
「弟子を守るのは当たり前だよ。すぐ終わらせてくるから待ってて」
と扉の向こう側へ消えていく。
10分程たっただろうか、先生がやってきて氷の膜を解いていく。
「悪い奴ら全員憲兵に引き渡してきたからもう大丈夫だよ。君たち自分のお家に帰れるかな?まだ何人か憲兵の人達が居るから分からない子達は頼ると良いよ」
と、優しく話しかけてくれる
「先生ーーーー」
私は先生にしがみついた。怖かった、先生が居なかったら売られてた?それとも想像もつかない程の酷い目に遭わされていた?
不安と緊張からの解放で、私はそのまま意識を手放したのだった。




