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沙希の父親は誰だ?

博和は亜見と共に城の自室へ戻った。

博和「一体、沙希の父親は誰だ?」

亜見「下士の役人の娘かもしれませんよ。」

博和「下士か…はて。どうするかなぁ。下士役人でも町奉行とかも含めたらかなりの人数になるぞ。そこから見つけるには、どうしたらいいのだろうか…さすがに全ての役人を集めてお前の娘の名前はなんだ!とは聞けないし。時間がかかりすぎるしな…。」

亜見「あっ!いい事思いつきました。城で働いている役人で未婚の娘が居る役人を集めるんです。」

博和「なるほど!そうか。それで未婚の娘がいる役人に娘を連れ来いと命じればいいのか。」

亜見「そうです。そこに沙希がいれば父親が誰だか判明します。」

博和「ふむ。ではすぐに命をだせ。”上士も下士も関係なく、城で働いている役人で年齢が十八以上の未婚の娘がいる者は明日の辰の刻に娘と登城するように。”とな。よろしく頼むぞ亜見。」

亜見「御意。お任せください。」


亜見は早速、城中に触れを出した。

”城内で勤務する者

 年齢が十八以上の未婚の娘がいる者は明日の辰の刻に娘と登城するように。

 なお、上士・下士関係ない。未婚の娘がいることを隠したり、未婚と偽装したり場合は厳罰に処する

 実の娘しか認めない。親戚の娘などは対象外である。”


この命を見た役人達は騒いでいた。

”未婚の娘?””十八以上だってよ…うちはまだ子供だから無理だ。”

"未婚の娘で十八以上ってあまりいないのでは?”などなど役人たちが話をしていた。

そんなとき、広太郎も触れを目にした。

(なんだ?”年齢が十八以上の未婚の娘がいる者は明日の辰の刻に娘と登城するように”って

うちの娘も対象では?一体殿は何を考えていらっしゃるのやら…とにかく、明日沙希を連れて登城すればいいのだな)

この時、広太郎は今後起こることを知らなかった。


その一方、羽芝光信の耳にも入っていた。

光信は、これはちよを正室にできる好機だと意気込んでおり、さっそく家臣に文を渡した。

”明日の辰の刻にちよも登城することになった。急いで着物を新調するように。これは

ちよが正室になる好機かもしれぬ。抜かりなく準備しろ”という文を受け取った光信の妻のよのは

ちよを連れて急いで着物屋に向かった。

ちよは「絶対に殿の妻になってやる。誰にも負けない。」と意気込んでいた。


仕事を終えて、自宅に戻った広太郎は、早速沙希を呼んだ。

広太郎「ただいま。」

沙希「父上。お帰りなさい。」

広太郎「沙希。夕餉の時に話がある。早めに夕餉を準備してくれ。」

沙希「わかりました。早めに準備します。」といい、沙希は夕餉の準備をした。


四半刻後

沙希「父上 夕餉の用意ができました。」

広太郎「ありがとう。ところで隆太郎はどうした?」

沙希「兄上は、友人と飲んでくると連絡がありました。」

広太郎「そうか…わかった。では食べよう。いただきます。」

沙希「いただきます。あっ。父上、先ほど話があるとのことですが、一体何のお話でしょうか?」

広太郎「殿の命があってな。明日沙希も一緒に辰の刻登城することになったから、準備するように」

沙希「明日、私もですか?一体なぜ?」

広太郎「それがな”年齢が十八以上の未婚の娘がいる者は明日の辰の刻に娘と登城するように。

 なお、上士・下士関係ない。未婚の娘がいることを隠したり、未婚と偽装したり場合は厳罰に処する

 実の娘しか認めない。親戚の娘などは対象外である。”と場内に触れがあったんだよ。」

沙希「なるほど。登城するのはいいのですが、なぜ未婚の娘なんでしょうかね?」

広太郎「それはわからない。殿に何か考えがあるから触れを出したんだろう。」

沙希「そうですね。ですが、登城するのはいいのですが、着物はどうしますか?」

広太郎「どうって…何着かあるだろう?」

沙希「ありますが…登城できる着物はないのですが…」

広太郎「うーん。どうするかな…食べ終わったら着物を選ぼう。」

沙希「はい。」


沙希と広太郎は食事が終わり、着物を選んでいた。

広太郎「沙希 着物はこれだけか?」

沙希「はい。これだけです。」

広太郎「そうか…すまないな。もっと買ってやればよかった。」

沙希「いえいえ。5着しかなくても生きていけますから。それに2着は母上のです。母上から

何かあったら着なさいと貰い受けました。」

広太郎「りつのか…。」

沙希「はい。この2着のどちらかを着ていけばいいと思うのですが、どうでしょうか?」

広太郎「確かに。なら沙希が好きな方を選んで明日着るように。」

沙希「わかりました。明日準備します。」


広太郎は沙希と着物を選び終わった後、妻のりつのもとへ向かった。

妻のりつは数年前から病で床に臥せっている。

医者からは生きられてもあと数ヶ月といわれている。

りつは幼い頃から心の臓が悪かった。医者からは十五までは生きられない可能性が高いと

言われていたが、医者の治療の甲斐があって運動できるまで良くなっていた。

その後、りつは普垣広太郎と出会い、息子の隆太郎を出産したが、

幼い頃、心の臓が悪かったりつにとっての出産は危険だった。医者から子を産むと死ぬ可能性があると

言われていたが、りつは子を産むことを選択したのだ。

隆太郎を生んだ2年後にりつは娘を産んだ。その娘が沙希である。

しかし、三年前 買い物中に激しい胸の痛みが襲われた。そう、心の臓の病が再発したのである。

昨年までは、歩いたり自分で食事をしたりすることが出来ていたが、今年に入ってから起き上がることも

できなくなってきた。

広太郎「りつ 調子はどうだ?」

りつ「…あなた。調子は朝と変わりません。」

広太郎「そうか。それならよかった。りつ。実は今日、城で触れがあった。”年齢が十八以上の未婚の娘がいる者は明日の辰の刻に娘と登城するように。

 なお、上士・下士関係ない。未婚の娘がいることを隠したり、未婚と偽装したり場合は厳罰に処する

 実の娘しか認めない。親戚の娘などは対象外である。”と。だから明日辰の刻に沙希と登城することになる。」

りつ「…そう。わかりました。ですが、あなた…」

広太郎「なんだ?」

りつ「…沙希が城に着ていける着物はあるのかしら?」

広太郎「あ~。それが、お前の着物が2着あって、それのどちらかを着るように言っておいたから

大丈夫だ。心配するな。」

りつ「…そうですか…お願いがあります。私の鏡面の引き出しを開けてもらえますか?」

広太郎は鏡面の前に座った。

広太郎「鏡面の引き出しってここか?」

りつ「…そこに、風呂敷に包んでる物が入っています。それを沙希へ渡して、明日使うように言ってください。」

広太郎「これは!!」

りつ「…あなた 広太郎さんから初めていただいた簪です。それを沙希に渡してください。」

広太郎「あ~。わかった…」

りつは微笑み、目を閉じた。

りつは広太郎から初めて簪をもらった事を思い出していた。


翌朝 沙希は目覚めた。

今日は天気が良く気持ちのよい朝だった。

沙希は朝餉の準備をし、父 広太郎を起こしに部屋へ向かった。

沙希「父上  おはようございます。朝です。朝餉の用意ができましたので、起きてください。」

広太郎「あ~。わかった。」

沙希「母上 おはようございます。今日の気分はいかがでしょうか?」

りつ「…おはよう。沙希 今日も変わりないわ。それより、昨日の夜聞いたんだけ

今日城へ行くんだって?着物は決まったの?」

沙希「母上。そうなんです。父上と登城することになりまして。着物は母上がくださった桃色の

着物にすることにしました。」

りつ「そう…それはよかった。気を付けて登城するのよ。」

沙希「はい。気を付けます。ですが、大丈夫ですよ。父上も一緒ですし。」

りつ「そうね。でもね、その父上が一緒っていうのが少し不安なのよ。」

沙希「確かに」と母と笑いあった。


朝餉を終え、いよいよ沙希は父と共に登城する。

広太郎「沙希。準備はできたか?」

沙希「はい。準備できました。お待たせして申し訳ございません。」

広太郎「あっ!そうだ。これ。母上から渡された簪だ。着けろ」

沙希「はい。わかりました。」と父から渡された簪を着けた。

(この簪綺麗。母上がこんな簪を持っていたなんて。知らなかった…)

その簪は鼈甲の簪だった。その簪は父である広太郎がりつに贈った品物だった。

沙希は、あまりにも簪が綺麗で今の格好には似合わないと思っていた。


城へ着くと、豪華絢爛な着物に身を包んだ娘が数人いた。

そこの中には、ちよもいた。

ちよは沙希を見た途端、周りにいた娘たちと話していた。

”なんていう格好なの?さすが、下士役人の娘ね。””確かに。あんな格好で殿の前に行くなんて恥はないのかしら?””恥がないからあんな格好で来たんだでしょ”など言われたが、沙希は気にしていなかった。

そこに、巣置がきた。

巣置「師匠 沙希ちゃん」

広太郎「おぅ!永和。久しいのぉ。だが、私はお前の師匠ではないよ。永和」

沙希「永和様 ご無沙汰しております。」

巣置「いえいえ。広太郎様は私の師匠です!それは今も昔も変わりません。」

広太郎「師匠らしいことは全くしてないが。まあよい。ところで何用か?」

巣置「殿の命で、未婚の娘が集まっていると聞きまして。隆太郎から城へ行ったと聞いたもので」

広太郎「そうだったのか。」

巣置「えぇ。私が大広間まで案内しますので、ついてきてください。」

広太郎「ありがとう。助かるよ。」

広太郎と沙希は巣置の案内で、城を歩いていた。

歩いていると、大広間についた。


父親たちは大広間に案内をされ、娘たちは隣の部屋で待機することになっていた。

前方は上士 後方は下士であった。

沙希は一番後ろに座った。

ざっと人数を見たところ十五人集まっていた。


父親たちは大広間にいた。自身の娘を殿に売り込むのに最適な状況だったため

広太郎以外は殿との謁見を心待ちにしていた。

(なんのために呼ばれたのかわからぬが、早く終わらないかな)と思っていたら、殿が大広間に入ってきた。

亜見から「殿のおなり~」と声がかかると、一同が頭を下げた。

博和「皆の者 面を上げよ。今回は急に呼び出してしまって申し訳ない。これから亜見から説明を行う。しかと聞くように。」

ではと亜見が説明をした。

1.父親の役職と名前

2.娘の名前

3.娘の年齢

4.娘がどんな子か紹介する

こちらの4つを殿に話した後、娘を呼び込むように。という亜見からの指示だった。


一番最初は想像通り 羽芝の娘のちよであった。

博和はちよのことは知っており、興味がなかった。というより会いたくもなかった。

羽芝がちよを紹介しちよを呼び込んだ。

そこに居たのは着飾ったちよだった。

亜見はやれやれという顔をしていた。殿はさっさと終わってくれと内心思っていた。

そして、ちよと羽芝は殿との謁見が終了し別室で待機していた。


博和は、沙希という娘は今日来ているのか疑問だった。

ついに十五人目の普垣の番になった。

広太郎の順番になり、広太郎は亜見の指示通り話始めた。


”私は普垣 広太郎と申します。役職は書庫番です。

娘の名前は普垣 沙希と申します。年齢はお恥ずかしいながら、三十歳です。

娘は私に顔がそっくりでして…私がいうのもなんですが、優しい子です。”と広太郎は紹介した。

博和「普垣 今娘の名前を沙希を申したか?」

広太郎「はい。沙希でございます。」

博和「沙希か…それで顔がお主に似ていると?」

広太郎「はい。とにかくお会いしていただければ、私にそっくりというのがわかるかと思いますよ。

娘を呼び込んでよいでしょうか?」

博和「あ~。頼む。」

(沙希かぁ。それより普垣にそっくりって…名前だけ一緒なのだろうか…)と思っていると

そこに、永和が挙手をした。永和は本当のことを伝えようとした。

亜見が永和のもとへ行った。

永和「亜見様 大変申し訳ございません。殿にお伝えください。沙希殿は広太郎殿には似ておりません。

むしろ、母上に似ておりとても美人です。」

亜見「そうなのか?」

永和「はい。沙希殿の事はよく知っております。」

亜見「わかった。お伝えする」

亜見は永和の話を殿に伝えた。

そして、殿は広太郎へ沙希を呼び込むように伝えた。


広太郎が「沙希 入れ」と隣の部屋へ呼びかけた。

沙希は父の声を聴き、立ち上がり隣の部屋へ向かった。

座り襖を開け、父の横に正座をし頭を下げた。

広太郎「殿 こちらが我が娘の普垣沙希にございます。」

沙希「普垣沙希にございます。」

博和「沙希殿 面を上げよ」

沙希は頭を上げた。頭を上げた瞬間…

博和・亜見・沙希「あっ!」と声を上げた。

広太郎「えっ?沙希。あっ!ってお前…殿と会った事あるのか?」

沙希「えぇ。まあ。父上 後ほど説明しますが、あの…状況が全く分からないのですが…」と沙希は状況が掴めていなかった。


その一方で、亜見はこっそり殿の耳元で囁いた。

(別室で控えている者たちは、家に帰すように伝えますので、二人は残しますね)


大広間には殿と広太郎と沙希が残っていた。

この時、博和は探していた沙希を見つけたのであった。


沙希の父はそう、書庫番で城一の博識と言われている「普垣広太郎」だったのである。














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